「ビールに近いノンアルビール」が欲しいなら、まず製法を見てほしい
ノンアルビールを探していると、必ずぶつかる壁がある。飲んでみたら「なんか甘い」「炭酸水に麦の香りをつけたみたいな味」「のどごしが全然違う」——そんな経験が積み重なって、「どうせノンアルってビールには遠いよね」という結論に至ってしまうパターン。私自身、授乳を終えた後にノンアルを試しはじめた頃、まったく同じ壁にぶつかった。
でも、その感想は「ノンアルビール全体」への答えじゃなかった。製法によって、ビールへの近さがまるで違う。このことに気づいてから、選び方が変わった。
ノンアルビールには、大きく分けて2つの製法がある。一つは「脱アルコール製法」、もう一つは「発酵させない従来製法」。この違いを知っておくと、「ビールに近いもの」を選ぶときに迷わなくなる。今日はそこを丁寧に整理したい。
2つの製法、何が違うのか
従来製法——ビール"らしさ"を後から足していく
多くのノンアルビールが採用してきたのが、酵母を使わずに発酵させない方法だ。麦汁をベースに、香料や添加物でビールの風味に近づけていく。
この製法にはメリットがある。製造コストが低く抑えられるため、手ごろな価格で販売できる。コンビニやスーパーで100円台から手に取れるノンアルビールの多くは、このカテゴリに入る。
一方で限界もある。発酵によって生まれるはずの複雑なコクや、ホップの苦みが溶け込んだ奥行きは、後から再現しようとすると「足し算の味」になりやすい。飲み慣れるとわかるあの独特の甘さや、のどを通ったあとに残るすっきり感のなさは、発酵工程を経ていないことと無関係ではない。
日常的に飲む一本として十分に美味しいものも多いけれど、「ビールに限りなく近いもの」という基準で選ぶと、この製法のものは少し遠い位置に立つ。
脱アルコール製法——本物のビールをそのまま「脱アル」する
対して「脱アルコール製法」は、プロセスが根本的に違う。まず通常のビールをしっかり醸造する。麦芽とホップを発酵させ、本物のビールを完成させる。そのあとから、アルコールだけを取り除く工程に入る。
アルコールを除去する主な方法は「真空(減圧)蒸留」と「膜分離」の2種類だ。真空蒸留は、気圧を下げることで沸点を低温にし、風味を傷めないようにしながらアルコールを蒸発させる技術。膜分離は、分子レベルの精密なフィルターでアルコールだけを通過させ除去する方法で、熱を加えないぶん香りへのダメージが少ないとされる。
どちらの方法も、発酵で生まれたコク・苦み・香りをできるだけ残すことを目的としている。「一度ビールを作ってからアルコールを抜く」から、麦芽の甘み、ホップの苦みと香り、発酵由来の複雑さが飲み口に乗ってくる。この製法で作られたものが「ビールに近い」と言われる理由は、ここにある。
ただし、技術的にも設備的にもコストがかかるため、価格帯は従来製法より高めになる。一本あたりの単価を考えると「特別な日のノンアル」という感覚で選ぶ人も多い。
私が2つを飲み比べてわかったこと
「ビールに近い」体験は、最初のひと口で変わる
子どもを産んで、夕食の食卓でアルコールを選ばない日が増えた。最初の頃は従来製法のものをずっと飲んでいて、「まあ、こんなもの」と思っていた。でも正直なところ、食事と合わせたとき物足りなさが残った。濃い味の料理に合わせると、甘さが浮いてしまう感じ。グラスに注いでもなんとなく「ノンアルを飲んでいる感」が抜けなかった。
そこで脱アルコール製法のものを試してみたら、最初のひと口で印象が変わった。泡のきめ細かさ、口に入れた瞬間の苦みの立ち上がり、そして飲み込んだあとの余韻——どれも「ビールだ」と思える要素がきちんとある。食事との相性も格段によくなった。唐揚げや餃子、炒め物といった日常の食卓に、ちゃんと寄り添ってくれる。
もちろん、ビールとまったく同じかといえば、それは違う。アルコールが持つ独特のあたたかみや、後からじわっとくる感覚は再現できない。でも「ビールを飲んでいる時間の気持ちよさ」にかなり近い体験ができる。それだけで十分だと感じた。
どちらを選ぶか、場面で使い分けるのが現実的
2つの製法を比べたとき、どちらが「勝ち」かという話ではない。向いている場面が違う、というのが私の結論だ。
- 日常の晩ごはん、気軽に冷蔵庫から出す一本——従来製法の手ごろなノンアルビールで十分。毎日のことだから、コストパフォーマンスも大切。
- 本物のビールが飲みたい気分のとき、食事に向き合いたいとき——脱アルコール製法のものを選ぶと、満足感がぐっと上がる。
- お酒を飲む人と乾杯したいとき——グラスに注いだ見た目と、口に入れた瞬間の本格感は、脱アルコール製法の方が断然「同じ場にいる感」を作りやすい。
商品を選ぶとき、缶の裏面や商品説明に「脱アルコール製法」の文字があるかを確認してみてほしい。それだけで、選択肢がぐっと絞られる。輸入品ではドイツや海外のクラフト系ブランドにこの製法のものが多く、国内でも近年ラインナップが増えてきた。
製法を知ると、ノンアルビールの選び方が変わる
私がノンアルビールを探しはじめた頃、どの商品が美味しいかをひたすら調べていた。でも今思うと、まず「どういう製法で作られているか」を知っておけば、もっと早く好みの一本に辿り着けた。
ビールに近いノンアルビールが欲しいなら、脱アルコール製法かどうかを一番最初に確認する。それが一番シンプルな近道だと、今はそう思っている。
お酒を「選んで飲まない」日が増えても、食卓に置く一杯の満足感は落としたくない。そのための選択肢として、脱アルコール製法のノンアルビールはかなり頼もしい存在になってくれる。
「どうせノンアルって…」と思っていた頃の自分に、この製法の話を教えてあげたかったな、と今でも思う。
※本記事は一般情報であり、医療的助言ではありません。健康上の懸念がある場合は医師や専門家にご相談ください。

