きっかけは、Untappdの年間ログだった

毎年1月、自分はUntappdの年間チェックインサマリーをスクリーンショットしてメモアプリに保存している。本数・スタイル・平均ABV——数値が並ぶと、飲酒習慣がそのまま「データ」として眼に入ってくる。去年の12月末に眺めていたとき、ふと思い立って一本あたりの平均単価を掛けてみた。

出てきた数字を見て、少し固まった。

数字そのものが衝撃だったというより、「これ、ずっと気になっていたアレに使えたな」という感覚が先に来た。「アレ」というのは、3年前から興味を持ちつつ手が出せていなかった写真の趣味——具体的には中判フィルムカメラと現像費のことだ。調べると、ボディと最初の一年分のフィルム・現像代を合わせた概算が、自分がお酒に使っていた金額とほぼ重なっていた。

Apple Watchで睡眠スコアを毎日記録している自分にとって、数値が一致するというのは「許可証」に近い。論理が通れば動ける。翌月から、週末2日の飲酒は維持しながら、飲み方の単価を少し下げ、その差分を「趣味の予算枠」として家計簿アプリに専用カテゴリを作った。

「削る」ではなく「配分を変える」という設計

完全にやめるつもりはなかった

自分は週4日飲まない代わりに、週末は好きなクラフトビールを楽しむ運用をしている。これは禁欲ではなく設計だ。Apple Watchの睡眠データを見ると、飲酒した翌日の深睡眠スコアが下がる傾向が自分の場合はっきりしていて、だからこそ平日は飲まないほうが翌朝のコンディションが数値で見て良い、という判断に行き着いた。

趣味の予算を作るときも同じ発想だった。お酒を完全に排除して捻出する、という思考回路は自分には向いていない。「飲む日の単価を少し見直す」だけで月に一定額が浮く。それをそのまま趣味枠に流す。家計簿アプリで可視化しておくと、ログを取るたびに「今月の趣味予算は現在地から何円使える」が一目でわかる。

予算枠を作った瞬間に趣味への本気度が変わった

面白いことに気づいたのは、専用カテゴリを作ってから数週間後だった。予算がある、という事実だけで行動量が変わった。それまで「いつかやろう」で止まっていたフィルムカメラの下調べを、休肝日の夜に集中してやるようになった。ログを取る習慣がある人間は、「残額」という数値があると動き出しやすい、と改めて思った。

実際に趣味へ投じた3ヶ月の記録

1ヶ月目:道具を選ぶ時間そのものが体験だった

最初の月は買わなかった。予算を使わず、ひたすら情報収集に費やした。中判フィルムの選定、現像所の比較、先人のレビュー。平日の休肝日、画面の前で調べている時間が純粋に楽しかった。お酒を飲んでいる時間と比べると、翌朝のApple Watchのスコアが明らかに違う。これは以前から知っていたことだが、「代わりに何かをしている感」があると、飲まないことへのストレスがほぼゼロになる。

2〜3ヶ月目:初めてフィルムを巻いた日の感触

2ヶ月目に中古のボディを購入し、3ヶ月目に初めて一本撮り切って現像に出した。返ってきたフィルムをスキャンしたときの感覚は、デジタルにはない「待ちの体験」だった。撮ってから結果を見るまでに2週間かかる。その間、撮った瞬間の記憶を頭の中で反芻する。この「遅延」が、デジタルで高速PDCAを回すことに慣れた自分にとって、意外なほど心地のいい体験だった。

Apple Watchで数値を見続けることが日常の自分にとって、結果がすぐ出ない趣味は新鮮だった。ログを取ることと、ログが取れないことの両方が、生活に並走するようになった。

お金の話を正直にすると

3ヶ月で趣味枠に積んだ金額は、自分の場合それほど大きくない。劇的な節約ではなく、「飲む日の単価見直し×本数の微調整」で生まれた差分だ。金額より大きかったのは、使い道が決まっていることで支出全体への意識が変わったことだと思う。

家計簿アプリで「趣味投資」というカテゴリが育っていく様子を見ると、お酒の支出ログを見るときの視点も変わった。「これは飲むべき一本か、趣味枠に回せる金額か」という問いが自然に生まれるようになった。これは制約ではなく、選択の解像度が上がった感覚に近い。

Untappdに記録するクラフトビールの質は、むしろ少し上がった。本数を絞ったぶん、一本一本を選ぶ目が変わった気がする。データ的に言えば、チェックイン数は減り、平均レーティングは上がった。これも自分にとっては「整合性が取れた」状態だ。

気づいたこと——予算が「好奇心の器」になる

今回の体験で一番変わったのは、趣味への姿勢だった。予算という器を作ることで、漠然とした興味が「行動できるプロジェクト」に変わった。ガジェットやアプリで数値を管理する習慣がある人間にとって、趣味もまた「枠を設計すれば動ける」対象だった。

お酒代の一部を趣味に回す、というのは特別な節制でも我慢でもない。自分の場合は「飲酒のログ」と「趣味の予算ログ」が同じ家計簿アプリの中に並んでいる。数値が隣り合うことで、どちらの使い道もより意識的になった。

次は何に使うか、もう決めている。ログを取るたびに、次の体験への期待値が上がっている。それだけで、今の運用は十分に機能していると思う。

※本記事は一般情報であり、医療的助言・診断・治療の推奨ではありません。飲酒習慣に関するご不安は、医療機関にご相談ください。