「飲まない日を作っているのに、数値が変わらない」という経験

休肝日に効果がない——そう感じている人は、私の周囲にも少なくない。そして、一年前の私自身がまさにその一人だった。

健康診断でγ-GTPが基準値の2倍を超えた。担当医から「お酒の量を減らしてください」と言われ、私がまず手をつけたのは「飲まない日を作ること」だった。週に2日、月曜と木曜を飲まない日と決めた。それだけで、何となく「肝臓をケアしている」という安心感があった。

ところが3か月後の再検査でも、γ-GTPはほぼ横ばいだった。「ちゃんと飲まない日を設けているのに、なぜ改善しないのか」——その疑問が、私の節酒の考え方を根本から変えるきっかけになった。

私が見落としていたこと

答えはシンプルだった。飲まない日を作った分、飲む日にいつもより多く飲んでいたのだ。「今日は飲んでいいから」という感覚が知らず知らず働き、飲む5日間のうちでビールを3缶から4缶に、週末は日本酒を2合から3合に増やしていた。週の合計アルコール量を計算してみると、以前とほとんど変わっていなかった——それどころか、わずかに増えていた。

肝臓専門医の解説にも明記されているが、肝障害の診断基準に使われる指標はあくまで「1日当たりの平均的な飲酒量」であり、飲む日の頻度ではない。飲まない日を設けても、飲む日の量が増えて週合計が同じであれば、肝臓への負荷はほぼ変わらない。休肝日の効果がないのではなく、週合計を減らさなければ効果が出ない、というのが正確な答えだ。

「頻度」ではなく「総量」が主役だと理解したとき

この気づきを得てから、私は記録の仕方を変えた。以前は「今日飲んだかどうか」だけをノートに丸か×で書いていた。それを、飲んだ量——ビールなら何mL、日本酒なら何合——を毎回書き留めるようにした。週末にその数字を合計してみると、自分でも驚くほど総量がはっきり見えた。

週合計を意識すると何が変わるか

週合計を「見える化」したことで、飲む日の選び方そのものが変わった。以前は「今日は飲まない日」「今日は飲む日」という二択で考えていたが、次第に「今週はあと何g使えるか」という発想に変わっていった。週の前半に多く使えば後半は控える。接待や外食で多めになりそうな日の前後は少なくしておく。飲まない日は義務ではなく、週全体のバランスを保つための「調整弁」として機能するようになった。

担当医には純アルコール換算で週100g以内を当面の目標として設定してもらった。ビール中瓶1本に含まれる純アルコールはおよそ20g。週5本以内というイメージだ。以前は感覚だけで飲んでいたが、この「週の予算」という枠を持ったことで、選択がずいぶん落ち着いた。

数値が動き始めたのは、この変え方をしてから

週合計を意識した運用に切り替えて約2か月後、γ-GTPは明確に下がり始めた。半年後の健診では基準値内に戻り、担当医から「このまま続けてください」と言葉をもらった。

飲まない日の数は、以前の週2日から週3日に増えた。ただ、それが目的ではない。週の総量を抑えた結果として、飲まない日が増えたに過ぎない。順序が逆だったのだ。「飲まない日を先に決める」から「週合計を先に決め、飲まない日は後からついてくる」へ。

飲む日の一杯が「軽くなった」感覚

もう一つ、予想外の変化があった。週合計の枠を意識すると、飲む日の一杯一杯が以前より丁寧になった。「今週はあと少ししか余裕がない」という意識があると、惰性で飲み続けることが減る。ビール1缶を、何となく2本目に手を伸ばすのではなく、本当においしいと思いながら飲み切れるようになった。量を減らすことと、飲む満足感を高めることが、思っていたよりずっと両立できると感じている。

条件付きの正解を整理する

「飲まない日を作っても意味がない」という問いへの答えは、「条件次第」だ。次の2点がそろっているとき、飲まない日は確かに意味を持つ。

  • 飲む日の量が増えず、週合計のアルコール量が減っている
  • 飲まない日は「帳消し」の免罪符にしていない

逆に言えば、飲まない日を設けても週合計が変わらない、あるいは増えているなら、肝臓の視点ではほぼ変化がない。これは私の体験だけでなく、医学的な考え方とも一致している。肝臓が処理するのは「何日飲んだか」ではなく「どれだけの量のアルコールを処理したか」なのだから。

記録を持つことの意味

数値が改善した今も、私は週合計の記録を続けている。記録があると、何か変化があったときに振り返れる。先月γ-GTPがわずかに上がったとき、過去4週間の合計を見返すと、接待が重なった週に総量が跳ね上がっていた。記録がなければ「なぜ上がったのか」がわからないまま不安だけが残っただろう。

飲まない日を作ることは、入口として間違っていない。ただ、それだけで完結させてしまうと、本質的な変化には届かないことがある。肝臓に関わる数値を動かしたいなら、週合計という「もう一枚のレンズ」を持つことが、私には決定的に重要だった。

節酒を始めたばかりの方に伝えたいのは、飲まない日の数を増やすことよりも、飲む日のグラスの中身を計ることを先にやってみてほしい、ということだ。週の総量が見えた瞬間、次の一手が自然と決まってくる。私はそれを、γ-GTPの数値が変わり始めた夜に、はっきりと実感した。

※本記事は一般情報の提供を目的としており、医療的助言・診断・治療の推奨を行うものではありません。飲酒と健康に関する具体的なご相談は、担当の医師にお問い合わせください。