休肝日とは、肝臓を休めるために週に1日以上お酒を飲まない日を設けることです。厚生労働省のe-ヘルスネットは、これを推奨目的で作られた「造語」だとはっきり説明しています。つまり医学用語ではありません。だから「意味がない」という批判も出ます。ただ結論を先に言うと、意味が薄いのは「1日空ければ肝臓が治る」という理解のほうで、週の総量を減らす手段としては国のガイドラインもはっきり推奨しています。

私は50代で、健康診断のγ-GTPが基準値の2倍を超えて医師から減酒を指導されました。完全にやめる踏ん切りはつかず、週3日の休肝日と1日2杯までという運用で1年ほど続けています。以前は「とりあえず週1日休めばいい」と思っていましたが、一次資料を読み直してみると、日数そのものより先に決めるべきことがありました。この記事ではその順番を整理します。

休肝日とは何か——国が「造語」と説明している言葉

定義は「週に1日以上、飲まない日を設ける」

厚生労働省のe-ヘルスネットは、休肝日を「肝臓を休めるために週に1日以上飲酒しない日を設けることを推奨する目的で作られた造語」と定義しています(e-ヘルスネット「休肝日」)。

ここで押さえておきたいのは二点です。ひとつは「週に1日以上」という下限が定義そのものに書かれていること。もうひとつは、これが病名や検査値のような医学用語ではなく、行動を促すために作られた言葉だと国の側が明言していることです。

言葉の出自がこうである以上、「休肝日に医学的根拠はあるのか」という問いの立て方は少しずれています。正しくは「飲まない日を作ることに意味はあるのか」であり、それなら答えは資料に書かれています。

なぜ「造語」だと分かっていることが大事なのか

造語だと分かっていると、数字の出どころを追えるようになります。

「週2日」「連続2日」といった具体的な日数は、e-ヘルスネットの定義文には書かれていません。定義は「週に1日以上」です。では巷でよく見る「週2日」はどこから来たのか。ここを曖昧にしたまま「専門家は週2日と言っている」と書く記事が多いのですが、根拠の階層が違うものを混ぜると、読者は自分の状況に当てはめられなくなります。

私自身、最初は「週2日が正解」と思い込んで、達成できない週があると失敗した気になっていました。下限と推奨と目標を分けて考えるようになってから、続けやすくなりました。

海外に「休肝日」という言葉はない

日本語圏に特有の表現である点も、この言葉の性格をよく表しています。海外のガイドラインは日数ではなく、週あたりの総量で基準を示すものが多く、厚生労働省の資料も各国の基準を純アルコール量(g/日、g/週)で並べています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(PDF))。

つまり世界的には「量」で語られているものを、日本では「日数」で語ってきた。この翻訳のずれが、後述する「意味がない」論争の温床になっています。

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「休肝日は意味がない」はなぜ言われるのか

批判の中身は「1日では肝臓は元に戻らない」

「休肝日は意味がない」という主張を分解すると、多くは次の形をしています。毎日大量に飲んでいる人が週に1日だけ空けても、肝臓へのダメージの蓄積は止まらない。だから1日の休肝日にこだわるのは的外れだ、という指摘です。

肝臓の話に限れば、この指摘自体はもっともです。飲む量が変わらないまま1日だけ空けても、週の総量はほとんど減りません。週7日×3合を週6日×3.5合に置き換えたら、休肝日はあっても総量は同じです。私も最初はこれをやっていました。休肝日の翌日に「昨日飲まなかったから」と多めに飲む。これでは何も変わりません。

国のガイドラインが重視しているのは「週の総量」

では国はどう書いているか。「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、健康に配慮した飲酒の仕方として5つを挙げ、その5番目に「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避ける)」を置いています。そして続く説明でこう書いています。「毎日飲酒を続けた場合、アルコール依存症の発症につながる可能性があります。一週間の純アルコール摂取量を減らすために、定期的に飲酒をしないようにするなど配慮が必要です」(同ガイドライン)。

読み方の要点は、飲まない日の目的が「肝臓の修復」ではなく「一週間の純アルコール摂取量を減らすこと」と「依存の予防」だと書かれている点です。肝臓を休めるという語感から入ると誤解しますが、一次資料が置いている目的はそこではありません。

この一文を読んでから、私は自分の運用を「週3日休む」ではなく「週の合計を決める」に書き換えました。同じ週3日でも、意味がまったく違ってきます。

依存の予防という、もう一つの目的

見落とされがちなのがこちらです。ガイドラインは毎日飲み続けることそのものをリスクとして扱っています。量が適正でも、毎日の習慣になっていること自体が依存の入り口になり得る、という立場です。

この観点からは、飲まない日には「量を減らす」以外の役割があります。飲まなくても平気な日があると確認できること。飲酒が自動的な習慣ではなく選択であり続けること。私の場合、ここが一番効きました。以前は帰宅したらまず冷蔵庫を開けるのが反射になっていましたが、休肝日を固定してみると、その反射が意外とあっさり外れました。

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週何日にすべきか。数字の階層を分ける

下限・推奨・目標を混ぜない

日数の話が混乱するのは、性質の違う数字が同じ平面で語られるからです。ここで挙げる数値はいずれも健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(PDF)e-ヘルスネットの定義に記載されているものです。整理するとこうなります。

  • 下限: 週に1日以上(e-ヘルスネットの定義そのもの)
  • 総量の基準: 生活習慣病のリスクを高める量は、1日あたりの平均純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上(ガイドライン)
  • 国の目標: 健康日本21(第三次)では、この量を飲酒している人の割合について、男女合わせた全体の目標値を10%に設定(ガイドライン)

なお、ガイドラインはこの量について「これらの量の飲酒をしている者の減少を目標としたものです。なお、これらの量は個々人の許容量を示したものではありません」と注釈を付けています。全員がこの量まで飲んでよいという意味ではない、という但し書きです。

このうち日数を直接決めているのは下限だけです。残りは量の話です。だから「週何日が正解か」という問いには、一次資料の側から一意の答えは出てきません。出てくるのは「週の総量をいくつにするか」であり、日数はそれを満たすための手段になります。

連続させるかどうかは目的次第

「連続2日のほうがよい」という説明もよく見かけます。これは肝臓の修復時間という観点からの主張で、完全に否定される話ではありません。ただし前述のとおり、ガイドラインが飲まない日に与えている目的は総量と依存の予防です。その目的に照らすなら、連続かどうかより週の合計が下がっているかのほうが先に来ます。

私は当初「連続2日」を目指して、週末にまとめて休んでいました。ところが金曜と土曜に反動で増えてしまい、週合計はむしろ上がっていた時期があります。今は月・水・木に分散させています。連続していませんが、合計は確実に減りました。

自分の週合計から逆算する

順番としては、日数から決めるのではなく、次の順で決めるほうが破綻しません。

  1. 週の純アルコール合計の上限を決める
  2. 1日に飲む量の上限を決める
  3. 1と2から、必要な「飲まない日」の数が自動的に出る

私の場合は、週の上限を決めて1日2杯までと決めたら、結果として週3日空けないと収まりませんでした。日数は目標ではなく、計算の答えとして出てきたものです。

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純アルコール量で自分の週合計を出す

計算式は1つだけ

厚生労働省のガイドラインは、お酒に含まれる純アルコール量の算出式を次のように示しています。

摂取量(ml) × アルコール濃度(度数/100) × 0.8(アルコールの比重)

例として挙げられているのはビール500ml(5%)で、500 × 0.05 × 0.8 = 20g となります(同ガイドライン)。

覚えるべきはこの式だけです。銘柄ごとの早見表を暗記する必要はありません。缶の度数表示と容量が分かれば、その場で出せます。

数字にしてみると、週合計は思ったより大きい

私がやって効いたのは、1週間ぶんを実際に足してみることでした。式に当てはめて1日ぶんを出し、7日並べて合計する。それだけです。

やってみると分かるのですが、1日あたりでは基準の範囲に見えても、週で足すと相当な量になります。「今日は軽め」の日が思ったより少ないことにも気づきます。ここで初めて、飲まない日を作る意味が量として見えてきます。逆に言えば、この計算をせずに日数だけ守っても、効果は運任せになります。

計算を面倒に感じる方へ、実務的なコツがあります。銘柄ごとに毎回計算する必要はありません。自分が普段飲むものを2〜3種類だけ式に通して、1杯あたりのgを覚えてしまえば済みます。あとは杯数を掛けるだけです。私は缶ビール1本と、家で飲む焼酎の水割り1杯ぶんだけ数字を覚えていて、週の合計はその足し算で出しています。記録アプリを使う手もありますが、続かなければ意味がないので、まずは紙でも構いません。

もうひとつ、度数の見落としに注意してください。同じ「1杯」でもアルコール度数が倍違えば純アルコール量も倍になります。ストロング系の缶と通常のビールを同じ1杯として数えていると、週合計が実態と大きくずれます。式に度数が入っているのは、まさにここを吸収するためです。

疾病別に「リスクが上がる量」は違う

もう一点、重要な前提があります。ガイドラインは日本人を対象とした研究に基づいて、疾病別に発症リスクが上がる飲酒量を一覧で示しています。そこでは疾患ごとに数値が大きく異なり、高血圧や男性の食道がんのように「少しでも飲酒をするとリスクが上がると考えられる」とされているものもあります(同ガイドライン表1)。

つまり「この量までなら全部安全」という単一の線は引けません。自分が何を気にしているのか(健診の肝機能なのか、血圧なのか、家族歴のある疾患なのか)によって、目標にすべき量は変わります。かかりつけ医がいる場合は、飲酒についての相談をすることも有用だとガイドライン自身が述べています。

一度に大量に飲むことは別枠のリスク

週合計とは別に、1回の飲酒機会での量にも基準があります。ガイドラインは避けるべき飲酒の筆頭に「一時多量飲酒(特に短時間の多量飲酒)」を挙げ、1回の飲酒機会で純アルコール摂取量60g以上を目安として示しています(同ガイドライン)。

休肝日を作ったぶん、飲む日にまとめて飲む——これが最も避けたい形だということです。私が最初にやってしまった失敗が、まさにこれでした。

休肝日を続けるための7つのチェック項目

ここまでを実行に落とします。7項目あります。上から順に、効き目の大きい順に並べました。

1. 週の純アルコール合計の上限を先に決める

日数ではなく量から決めます。式に当てはめて、今の週合計を出すところから始めてください。現状が分からないまま目標を立てても、達成したかどうかを判定できません。

2. 飲まない日を曜日で固定する

「余裕があったら休む」では続きません。私は月・水・木に固定しています。曜日で決めると判断が要らなくなり、続ける負荷が大きく下がります。

3. 休肝日の翌日に増やさない上限を決めておく

休肝日の意味を消す最大の要因がこれです。飲む日の上限を先に決めておかないと、空けた日のぶんが翌日に移動するだけになります。

4. 飲む日は、あらかじめ量を決めてから飲み始める

ガイドラインも健康に配慮した飲酒の仕方として「あらかじめ量を決めて飲酒をする」を挙げています。飲み始めてから考えると、判断力が落ちた状態で判断することになります。

5. 飲む前か飲んでいる最中に食事をとる

同じくガイドラインが挙げている項目です。血中のアルコール濃度を上がりにくくする効果があるとされています。空腹のまま飲み始めない、というだけのことですが、実行すると体感が変わります。

6. 飲酒の合間に水か炭酸水をはさむ

これもガイドラインの推奨項目で、飲む速度を落とし、結果として量を減らす効果があります。私は1杯ごとに炭酸水を1杯はさむ形にしています。杯数が自然に減りました。

7. 週に1回、合計を見返す

記録しても見返さなければ意味がありません。週末に合計を出して、上限に収まったかだけを確認します。収まらなかった週は、翌週の飲まない日を1日増やして調整します。日数を固定値ではなく調整弁として扱うと、運用が楽になります。

1年やってみて分かったこと

数字の話ばかり書いてきましたが、実感として一番大きかったのは、飲まない日が「我慢の日」ではなくなったことです。

最初の1か月は、休肝日の夜が長く感じられて仕方ありませんでした。何をしていいか分からず、結局早く寝ていました。2か月目あたりから、その時間に別のことが入り始めます。私の場合は、翌朝の予定を前倒しでこなすようになりました。

以前は「飲まない日を作る」のが目的でしたが、今は「週の合計を決めた範囲に収める」のが目的で、飲まない日はその手段です。目的と手段を入れ替えただけで、達成できたかどうかが明確になり、失敗した週も次の週で取り返せるようになりました。

数値のほうも、指導を受けた当初より落ち着いています。ただしこれは私個人の経過で、どなたにも同じことが起きるとは限りません。健診の数値に不安がある方は、記事の内容を目安にするのではなく、必ず医療機関で相談してください。

よくある質問

休肝日は週に何日必要ですか

一次資料で日数を定めているのは、e-ヘルスネットの定義にある「週に1日以上」だけです。それ以上の日数は、週の純アルコール合計をどこに置くかによって変わります。まず合計の上限を決め、1日に飲む量の上限を決めると、必要な日数は計算で出てきます。

連続した休肝日のほうがよいのですか

肝臓の修復時間という観点から連続を勧める説明はあります。一方で、ガイドラインが飲まない日に与えている目的は週の総量を減らすことと依存の予防です。連続かどうかより、週の合計が実際に下がっているかを先に確認してください。連続にこだわって反動で飲む量が増えるなら、分散のほうが目的に合います。

休肝日を作れば飲む日は好きなだけ飲んでよいですか

いいえ。ガイドラインは1回の飲酒機会で純アルコール摂取量60g以上を一時多量飲酒として避けるべき飲酒に挙げています。休肝日のぶんをまとめて飲む形は、週合計が減らないうえに、1回あたりの量が増える点でも推奨されません。

「休肝日は意味がない」という説明は間違いですか

意味が薄いのは「1日空ければ肝臓が回復する」という理解のほうです。飲まない日を作ること自体は、週の純アルコール摂取量を減らす方法として、また毎日飲み続ける習慣を避ける方法として、ガイドラインに明記されています。批判されているのは目的の取り違えであって、飲まない日を作る行為ではありません。

ノンアルコール飲料を休肝日に飲んでもよいですか

アルコール分0.00%の製品であれば、アルコールの摂取という点では飲まない日として成立します。ただし断酒を目標にしている場合は事情が異なり、専門の医療機関が慎重な立場を取っています。目的が節酒なのか断酒なのかで扱いが変わる点に注意してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療的な助言ではありません。健康診断の数値や体調に不安がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。