断酒1か月目、血圧計を買い直した日のこと

健診でDがついたとき、渡された用紙には「血圧」「肝機能」「中性脂肪」と三つの項目に赤字が並んでいました。正直、肝臓の数値のほうが気になっていたんです。でも帰り道に立ち寄ったドラッグストアで血圧計を手に取って、家で計ってみたら——収縮期が148mmHg。「高いな」とは思いつつ、そのときはまだピンとこなかった。

断酒を始めてから約3週間後、ふと思い出してもう一度計ったら132mmHg。「あれ、下がってる」。そこから自分は毎朝計り続けるようになりました。3か月後には122mmHg前後で安定して、半年後には118〜120mmHgという数字が当たり前になっていた。これは単なる偶然じゃないんじゃないかと思って、研究を調べ始めたのが今回の記事の出発点です。

「飲むほど血圧が上がる」は、どのくらい確かな話なのか

用量反応関係:飲む量と血圧は比例する

アルコールと血圧の関係は、医学界では長らく研究されてきたテーマです。2024年にHypertension誌に掲載されたメタ分析では、1日あたりのアルコール消費量と収縮期血圧・拡張期血圧の間に明確な用量反応関係(dose-response relationship)があることが改めて示されました。つまり「飲む量が増えるほど血圧は上がる」という関係が、大規模データでも支持されているわけです。

特に注目されているのは、少量の飲酒でも長期的には血圧への影響が蓄積するという点。「少しなら大丈夫」という感覚は、体の中で起きていることとは少しズレているかもしれないと気づきました。Hypertension(AHA Journals)

アルコールが血圧を上げるメカニズム

なぜお酒が血圧を上げるのか。現在有力とされているのは、主に次の三つの経路です。

  • 交感神経系の活性化:アルコールは交感神経を刺激し、心拍数と血管抵抗を上げる。
  • レニン-アンジオテンシン系への影響:血圧を調整するホルモン系が乱れ、血管が収縮しやすくなる。
  • 睡眠の質の低下:深い睡眠が減ることで夜間の血圧下降(ディッピング)が妨げられる。

自分が10年間、毎晩ビールを500ml×2缶飲んでいたとき、「飲むとぐっすり眠れる」と思っていました。でも実際は浅い睡眠が続いていたわけで、血圧が十分に下がりきらない夜を繰り返していたんだと、今は客観的に理解できます。

断酒後、血圧はどのくらい・どのくらいで下がるのか

2〜4週間で変化が始まる

2020年にコクランレビューとして更新された系統的レビューでは、飲酒量を大幅に減らした場合、収縮期血圧で平均3〜4mmHg、拡張期血圧で平均2mmHg程度の低下が2〜4週間以内に観察されることが報告されています。元々血圧が高かった人ほど変化の幅が大きい傾向がある点も示されました。Cochrane Library

自分の場合は最初の3週間で16mmHg下がったので、この平均より変化が大きかったことになります。もともとの数値が高かったこと、毎日飲んでいたこと、この二点が重なっていたからかもしれないと思っています。

長期的にはどう推移するか

断酒・節酒を1年以上継続したグループを追跡した観察研究では、血圧の改善効果は短期的なものにとどまらず、長期的にも維持される傾向があることが示されています。ただし、塩分摂取・体重・運動習慣など他の要因との複合的な関係もあるため、「お酒だけ」の影響を切り分けることは難しい、というのが研究者の一般的な見解です。

自分も断酒と同時期に間食を減らし、週3回の散歩を始めていたので、血圧改善がお酒をやめた効果だけとは言い切れません。でも逆に言えば、お酒を整えることが、他の生活習慣を整えるきっかけになることも多い——これは体感として非常に強く感じていることです。

数字の変化が「選択」を支えてくれた

断酒を続けていると、最初のうちは「飲まないこと」に意識が向きがちです。でも血圧計の数字が毎朝少しずつ変わっていくのを記録するようになってから、自分の中で何かが切り替わったんです。「飲まない我慢」ではなく、「整えている実感」に変わっていった。

研究データは「平均値」を示してくれますが、実際に自分の体で起きていることを毎日計測することで、その数字が自分ごとになる。家庭用血圧計(上腕式が精度の面で推奨されています)を朝と夜に計る習慣は、今でも続けていて、3年経った今も生活の中心にあります。

血圧が正常範囲に入ってからは、かかりつけ医にも「数値が安定してきましたね」と言ってもらえるようになりました。健診の結果用紙に赤字がなくなった日は、静かにうれしかったです。

整えるための第一歩として「計ること」から始める

まず知ることが、選択の土台になる

研究が示していること、そして自分の体験が示していること——両方を並べると、見えてくるメッセージはシンプルです。飲む量とお酒との付き合い方を整えることは、血圧という「見える数字」に確実に影響を与える。そしてその変化は、思ったより早く、思ったより静かに始まります。

もし今、健診の結果が気になっているなら、まず家で血圧を計ることから始めてみるのはどうでしょう。変化を数字で見ることができれば、どんな選択をするかのヒントが自然と見えてくると思います。

参考にした主な資料

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療的助言・診断・治療の推奨を行うものではありません。血圧や健康状態に関してご不安がある方は、医療機関へのご相談をおすすめします。