断酒の離脱症状がいつまで続くかは、量と期間で変わります
結論から言うと、断酒の離脱症状がいつまで続くかに一つの答えはありません。医学文献のStatPearls: Alcohol Withdrawal Syndromeに示されている目安は、軽い症状なら最後の一杯から6〜24時間で始まる、重い状態は48〜72時間あたりが山になる、というものです。ただしこの時間割は、それまでどれだけの量をどれだけの期間飲んでいたかで大きくずれます。そしてここがいちばん大事なところなのですが、重い離脱症状は自宅で耐えるものではなく、医療機関で管理されるべきものとされています。
私はお酒を「選んで飲まない」スタイルに移って2年ですが、もともと飲む量が多くなかったので、この手の症状は経験していません。読者の方から「何日で終わりますか」という質問をいただくたびに、自分の体験で答えられない領域だと感じて、公的資料と文献を読み直しました。この記事はその整理です。
要点: 時間の目安はありますが、重い症状は耐える対象ではなく相談する対象です。
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そもそも離脱症状とは何を指すのか
体が「お酒がある状態」を前提に調整してしまった結果です
厚生労働省のe-ヘルスネット「アルコールと依存」では、長く飲酒を続けると身体依存が形成され、酒を止めたり減らしたりしたときに出る症状を離脱症状と呼ぶ、と説明されています。同じページでは代表的な症状として、不眠・発汗・手のふるえ・血圧の上昇・不安・いらいら感が挙げられ、重症の場合は幻覚が見えたり、けいれん発作を起こすこともあるとされています。
つまり「気合いが足りない」とか「意志の問題」といった話とは別の層にあるものです。体の側が、お酒がある状態を前提にバランスを取ってしまっているので、それが急に無くなると調整が追いつかない。そう理解すると、なぜ自己判断で一気にやめるのが勧められないのかも腑に落ちます。
二日酔いとは別物です
よく混同されますが、二日酔いは飲んだ後の数時間から半日ほどの反応で、離脱症状は飲まない状態が続くことで出てくるものです。出方も時間の幅も違います。この記事で扱うのは後者だけです。
要点: 離脱症状は体の調整の問題で、気持ちの持ちようとは別の層にあります。
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時間の経過に、一応の目安はあります
3つの段階に分けて示されています
医学文献では、最後の飲酒からの時間で段階が整理されています。アメリカ国立生物工学情報センターが公開するStatPearls の Alcohol Withdrawal Syndromeでは、軽い離脱は最後の一杯から6〜24時間で現れ、ふるえ・不安・吐き気・不眠などを伴うとされています。けいれん発作は6〜48時間の範囲で起こりうるとされ、振戦せん妄と呼ばれる重い状態は48〜72時間で始まり、長ければ2週間ほど続きうると記載されています。
最後の一杯からの時間(目安)6〜24時間:軽い症状6〜48時間:けいれん発作48〜72時間:重い状態の山※量・期間・体質で大きくずれます
図: 文献に示された離脱症状の時間経過の目安(StatPearls の記載をもとに作成)
海外の文献なので、そのまま当てはめないでください
より詳しい機序については、Alcohol withdrawal syndrome: mechanisms, manifestations, and managementという総説が公開されています。いずれも海外の文献なので、日本の医療現場での判断がそのまま同じになるとは限りません。あくまで時間の幅を知るための材料として見てください。
要点: 6〜24時間で始まり、48〜72時間に山が来るという幅が文献の目安です。
医療機関に相談したほうがよい7つのサイン
一つでも当てはまるなら、待たずに連絡してください
自分で様子を見る範囲を超えていると考えられるものを、7つに整理しました。一つでも当てはまるなら、我慢して時間が過ぎるのを待つより、相談してください。
- 手のふるえが自分で止められない、字が書けないほど強い
- 汗が止まらず、心臓が速く打っている感覚が続く
- 実際にはないものが見えたり聞こえたりする
- 今どこにいるのか、今日が何日なのかが曖昧になる
- けいれん発作を起こした、または過去に起こしたことがある
- 眠れない日が続き、不安やいらいらが日常生活を止めている
- 過去にお酒をやめようとしたとき、同じような症状が出たことがある
7番目は見落とされやすいところです。前回出たなら次も出る可能性があるので、始める前の段階で相談しておくほうが安全です。
要点: 見える・聞こえる・分からなくなる、が出たら様子見の範囲を超えています。
自己判断で一気にやめることを勧めない理由
この記事で提案したくないのは、「とりあえず今日から一滴もやめてみる」という始め方です。量が多い状態が長く続いていた人ほど、急にゼロにしたときの体の反応が大きくなるからです。前掲のe-ヘルスネットが挙げているように、重症例ではけいれん発作や幻覚が起こりうるとされています。これは家庭で対処できる範囲の話ではありません。
私自身は授乳期をきっかけに自然に量が減っていったので、段差を感じずに移行できました。ただそれは、もともと量が少なかったからできたことです。毎日それなりの量を飲んでいた方が同じやり方を選べるとは限りません。減らし方そのものを一緒に設計してくれる相手を先に見つけるほうが、結果的に早いと思います。断酒・禁酒・節酒の違いから考え直したい方は、4つの違いを整理した記事のほうが入口として向いています。
要点: 量が多かった人ほど、始め方自体を相談してから決めたほうが安全です。
相談先は4つあります
本人でも家族でも使える窓口です
どこに連絡すればいいのかが分からない、という声がいちばん多いので、窓口を並べておきます。
- 精神保健福祉センター:各都道府県・政令市に設置されている公的な相談窓口です。本人でも家族でも相談できます
- 保健所:地域の健康相談の窓口で、専門医療機関への橋渡しをしてくれます
- アルコール依存症の専門外来がある医療機関:精神科・心療内科のうち、アルコール関連の治療を掲げているところです
- かかりつけ医:まずここに相談して、専門の医療機関を紹介してもらう流れでも問題ありません
対応の流れについては、e-ヘルスネット「アルコール依存症への対応」にも解説があります。家族が心配して調べている場合も、この4つは同じように使えます。
要点: 本人でなくても相談できる窓口が公的に用意されています。
私がこの記事を書くまでに確かめたこと
正直に書くと、最初は「何日でつらさが抜けるか」という時間の答えだけを探していました。子どもが生まれてから夜の時間の使い方が変わって、お酒が生活から自然に外れた側の人間なので、山を越える感覚が自分にはないんです。だから体験で書けないぶん、資料を当たるしかありませんでした。
読んでみて印象が変わったのは、時間の目安よりも「重い症状は管理下に置くもの」という前提のほうが繰り返し書かれていたことです。何日で終わるかを知りたい気持ちは分かりますが、その質問の前に「自分はどの程度の量をどれだけ続けてきたか」を書き出すほうが、次の一歩が決まりやすいと思いました。お酒をやめたあとに何が起きるのかを広く知りたい方には、良い変化とつらい変化を両方書いた記事があります。落ち着いた後にどの時期で何が変わるのかは、日数別に変わるもの・変わらないものを分けた記事のほうに書きました。
要点: 何日かを数える前に、これまでの量と期間を書き出すほうが先です。
よくある質問
軽い症状なら何日くらいで落ち着きますか
文献の目安では、軽い離脱は最後の一杯から6〜24時間で始まり、数日のうちに軽くなっていくとされています。ただし量と期間によって幅が出るので、日数を先に決めて我慢する使い方はしないでください。
症状が出たら、飲めば治まりますか
飲めば一時的に症状が引くことがあるのは知られていますが、それが繰り返しの原因になるとe-ヘルスネットでも説明されています。症状を抑える目的で飲む状態になっているなら、そのこと自体を相談の材料にしてください。
家族が断酒しようとしています。本人が受診を嫌がる場合はどうすればいいですか
精神保健福祉センターや保健所は、家族からの相談も受け付けています。本人が動かない段階で、家族が先に相談しておくのは一般的な流れです。
離脱症状が出ないなら、自分で進めても大丈夫ですか
量が少なく、これまでやめた際に症状が出たことがないなら、生活の中で調整していく形も取れます。その場合でも、体調に変化が出たら早めに相談する前提は変えないほうがいいです。
症状が落ち着いた後も、しばらく眠りにくいのはなぜですか
眠りの戻り方には個人差があり、時間がかかることも珍しくありません。日常生活が止まるほどの不眠が続く場合は、そこも相談の対象になります。
もし今、量を減らすことを考えている最中なら、日数を数える前に「これまでの量と期間」をメモに書き出してみてください。相談するときに、その1枚がいちばん役に立ちます。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。

