結論。チェイサーは二日酔い対策ではなく、飲む量を減らす道具です
結論から書きます。飲む量を減らしたいなら、水は「飲んだ後の後始末」ではなく「次の一杯の前に置くもの」として使ってください。同じ量の酒を飲むのであれば、間に水を挟んでも体内のアルコールの動きも翌日の症状も変わらなかった、という交差試験の結果があります。つまり水は代謝を助けてくれません。それでも私の飲む量は1年で明確に減りました。理由は薬理ではなく、水が「次の一杯までの時間」を物理的に伸ばしてくれるからです。以下、私が何を誤解していて、どう置き方を変えたのかを順番に書きます。
私が1年前にやっていたこと
50代に入ってから、健康診断でγ-GTPが基準値の2倍を超えました。医師から減酒を勧められ、そこから週3日は飲まない日を置き、飲む日は2杯までという運用を始めたのが1年前です。
そのときいちばん最初に取り入れたのが、酒と水を交互に飲むいわゆるゼブラ飲みでした。日本酒の世界では和らぎ水と呼ばれる古い作法で、私も「これを守っていれば翌朝が軽くなる」と素直に信じていました。
ところが翌朝は、ほとんど変わりませんでした
半年ほど続けて気づいたのは、翌朝の重さが期待したほど変わらないことでした。水は飲んでいる。それなのに頭の鈍さは以前と同じ日がある。記録を見返すと、水をよく飲んだ日ほど、むしろ杯数が伸びていました。
要点: 水を挟んだ安心感が、飲む量の歯止めを緩めていました。
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「水を挟めば軽くなる」は、試験では確かめられませんでした
自分の記録への疑いが確信に変わったのは、大分大学のグループが行った試験を読んだときです。
13人・交差デザインで、差は出ませんでした
この試験は、ALDH2が野生型の健康な日本人男性13人を対象にした無作為化2×2交差デザインで行われています。体重1kgあたり純アルコール1.3gに相当する清酒を1時間かけて飲む条件と、同じ量の清酒に加えて体重1kgあたり15mLの水を同時に飲む条件を比較したものです。結果は、呼気中のエタノールとアセトアルデヒドの動きに差がなく、翌日の認知課題の成績にも、顔面紅潮・頭痛・吐き気・集中力・眠気といった主観症状にも差が見られませんでした(PMID 42375618)。
大事なのは「酒の量を固定している」ことです
ここを読み飛ばすと結論を取り違えます。この試験は、酒の量を両条件で同じに固定しています。つまり検証されたのは「同じ量を飲んだときに、水が代謝や症状を変えるか」であって、「水を置くと飲む量そのものが変わるか」ではありません。
私が1年前に期待していたのは前者でした。そして現実に効いたのは後者だったわけです。水の役割を取り違えていたのは、試験ではなく私のほうでした。
要点: 水は代謝を助ける道具ではなく、行動を変える道具として使います。
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水を「後ろ」から「前」に移した7ステップ
ここからが実際のやり方です。以前は一杯飲み終えてから水に手を伸ばしていました。今は逆で、水が先に来ます。順番を入れ替えただけですが、私の場合はこれが効きました。
- 席に着いたら、酒より先に水を頼む。グラス2つを並べた状態から始めます
- 一杯目を注文する前に、水を半分まで飲む。空腹のまま最初の一杯に入らないためです
- 酒は一杯ずつ頼み、ボトルやピッチャーなど「手元に残る形」では置かない
- 一杯飲み終えたら、次を頼む前に水を1杯分まるごと飲み切る。ここが待ち時間になります
- 水を飲み切ってもまだ飲みたければ、二杯目に進んでよいことにする。我慢の勝負にしない
- 二杯目を飲み終えたら、そこからは水とノンアルだけに切り替える。私の上限は2杯です
- 帰宅後、その日の杯数と水の杯数をノートに1行だけ書く。翌週の判断材料にします
効いたのは4番の「飲み切ってから頼む」でした
この7つのうち、私にとって効きが大きかったのは4番でした。水を1杯飲み切るのに、私はだいたい3分から5分かかります。その3分が挟まるだけで、二杯目を頼むかどうかを考える余地が生まれるのです。以前は考える前に手が挙がっていました。
要点: 水を先に置くと、飲む速さではなく「次を頼むまでの間」が変わります。
1年で、1日あたりの純アルコール量はここまで動きました
飲む日の量が、3分の1になりました
数字で書きます。減酒を始める前、飲む日の私は缶ビール500mlを2本と焼酎のお湯割りを2杯ほど飲んでいました。今は飲む日でも缶ビール500mlを1本までです。
以前の私(飲む日)約60g厚労省が男性の目安とする40g今の私(飲む日)約20g※純アルコール量=量(ml)×度数(%)/100×0.8 で算出
図: 飲む日1日あたりの純アルコール量の変化
公的な目安と並べてみます
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として1日あたりの純アルコール量が男性40g以上、女性20g以上という目安を示しています(厚生労働省)。以前の私はこの線をはっきり超えていました。純アルコール量の出し方は式と早見表をまとめた記事が早いですし、20gが実際どれくらいの量かは飲料別に並べた記事のほうが体感に近いはずです。
同じガイドラインには、飲酒量を減らす工夫として、あらかじめ量を決めて飲むこと、飲酒の合間に水や炭酸水を飲むこと、飲まない日を設けることが挙げられています。水を挟む行為そのものは公的な資料でも勧められているわけです。ただしその理由は「二日酔いを防ぐから」ではなく、「飲むペースと総量に効くから」だと読むのが正確だと私は考えています。
要点: 水の効果は翌朝ではなく、週の合計に出ます。
うまくいかなかった3つの場面
正直に書くと、この方法が通用しない場面もありました。
- 大皿を囲む宴会で、手元にピッチャーが置かれたとき。3番が破られると4番以降が機能しません
- 移動が多い日。水を飲み切る前に席を立つと、待ち時間が消えて杯数だけ伸びました
- 二日目の飲み会。前日に水をよく飲んだ日ほど「昨日は平気だったから」と枠が緩みます
3つとも共通しているのは、水そのものではなく「次を頼むまでの間」が失われている点です。つまり守るべきはコップの数ではなく、間のほうでした。この整理ができてから、宴会の席では最初に「ピッチャーは置かないでください」と伝えるようになりました。少し変わった客だと思われていると思いますが、翌週のγ-GTPの数字のほうが私には大事です。数値の戻り方については半減期から逆算した記事に書きました。
要点: 破られるのは水の習慣ではなく、間を作る仕組みのほうです。
よくある質問
チェイサーは何を飲めばいいですか
水か炭酸水で十分です。厚生労働省のガイドラインも、飲酒の合間に水または炭酸水を飲むことを飲酒量を減らす工夫として挙げています(厚生労働省)。糖分の多い飲料にすると、量を減らしたいのにエネルギーだけ増えてしまうので、私は常温の水を選んでいます。
酒と同じ量の水を飲めばいいのですか
日本酒の和らぎ水では同量以上が目安とされますが、量そのものより「飲み切るまで次を頼まない」という順番のほうが効きます。前述の交差試験では体重1kgあたり15mLの水を加えても症状に差が出ていません(PMID 42375618)。量を守ること自体が目的になると、続きにくくなります。
水を飲めば二日酔いにならないのではないですか
同じ量の酒を飲む前提であれば、そうとは言えません。呼気中のエタノールとアセトアルデヒドの動き、翌日の認知課題、主観症状のいずれにも差が出なかった、というのが前述の試験の結論です。二日酔いを軽くしたいなら、水ではなく酒の量のほうを動かす必要があります。
飲むペースを落とすだけでも意味はありますか
意味はあります。ただし、ゆっくり飲むことだけを目標にすると、時間が長引いて総量が伸びることがあります。私の記録でもそれが起きました。ペースではなく、1日の上限杯数を先に決めておくほうが確実です。
外食や宴会でも同じやり方でできますか
そのままでは難しいので、私は席に着いた時点で1つだけ交渉しています。手元にピッチャーやボトルを置かないことです。これができれば、あとは自分で間を作れます。
今夜、試すなら1つだけ
全部やる必要はありません。今夜試すなら、4番だけで十分です。一杯飲み終えたら、次を頼む前に水を1杯飲み切る。それだけを1週間続けて、杯数をノートに1行だけ書いてみてください。私の場合、変化が数字に出たのは3週目でした。
水は翌朝を軽くしてくれる魔法ではありませんでしたが、飲む量を決めるのは薬理ではなく順番だったのだと、今は思っています。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。

