結論から言うと、節酒をはじめるなら、飲む回数を減らす前に「一杯の量」と「度数」を見直すのがいちばん取りかかりやすい方法です。提供サイズを小さくすると飲む量が減るという報告もあります(PubMed 29756262)。同じ一杯でも、純アルコール量は「量×度数×0.8」で決まり、グラスの大きさと缶の度数を替えるだけで、1日の合計が大きく変わります。この記事では、私が健診をきっかけに経験したある金曜の夜の話から、計算のしかたと、続けやすい見直しの手順までをお伝えします。

私は50代の男性で、数年前の健診でγ-GTPが基準値の2倍を超え、医師から減酒を勧められました。以前は晩酌が当たり前でしたが、いまは飲まない日を週に3日つくり、飲む日も1日2杯までと決めて運用しています。節酒は1年目です。完全にやめるのではなく、量と頻度を整える立場から書きます。厚生労働省は、1日あたりの平均純アルコール摂取量が男性で40g以上の飲酒を、生活習慣病のリスクを高める量としています(e-ヘルスネット 男性向けパンフレット)。

金曜の夜、居酒屋で起きた小さな出来事

その夜は、同僚との月に一度の飲み会でした。席に着くなり、以前の私なら迷わず「中ジョッキで」と頼んでいたところです。ところが、健診の結果を思い出して、ふと手が止まりました。

「小さいほうでお願いします」と言ってみた

店員さんに「小ジョッキはありますか」と聞くと、あっさり「ありますよ」と返ってきました。拍子抜けしました。頼むまでは勇気がいりましたが、頼んでしまえば、誰も気にしません。隣の同僚が「今日は控えめだね」と言っただけで、話はすぐ仕事の話に戻りました。

二杯目は、度数の低い一杯に

二杯目は、ジョッキではなくアルコール度数の低い缶のサワーを頼み、氷の入ったグラスに注ぎました。同じ「二杯」でも、中身はまったく違います。帰り道、以前のように喉が渇かず、翌朝も体が重くありませんでした。数字でどう違うのかが気になって、帰宅してから計算してみたのが、この記事のきっかけです。

要点: 量と度数を替えるのは、注文のひと言で済む小さな行動で、周囲にも気づかれにくい方法です。

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純アルコール量は「量×度数×0.8」で決まる

厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、純アルコール量(g)は、摂取量(mL)×アルコール濃度(度数÷100)×0.8(アルコールの比重)で求めるとされています。例として、ビール500mL(5%)は500×0.05×0.8で20gと示されています(厚生労働省 ガイドライン)。

私の金曜の夜を、数字にしてみる

同じ式で、私があの夜に飲んだ量と、以前の習慣を比べてみました。

飲み物

量

度数

純アルコール量(式で算出)

中ジョッキ(以前の一杯目)

500mL

5%

20g

小ジョッキ(今回の一杯目)

350mL

5%

14g

強めの缶(以前の二杯目)

350mL

9%

25.2g

度数の低い缶(今回の二杯目)

350mL

3%

8.4g

図: 一杯ごとの純アルコール量の比較(出典: 厚生労働省ガイドラインの計算式による筆者算出)

以前は2杯で約45g、いまは約22gです。杯数は同じ2杯でも、半分になっていました。

基準の目安とあわせて眺める

同じガイドラインには、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として、1日あたりの純アルコール量が男性で40g以上、女性で20g以上という目安が示されています。これは個人の許容量を示したものではないという注記もあります(厚生労働省 ガイドライン)。以前の私は、強めの缶を挟んだ夜には、この40gを軽々と超えていたことになります。

要点: 計算式さえ知っていれば、飲んだ量を自分で数字にできます。杯数ではなく純アルコール量で見るのがコツです。

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見直しは、量・度数・飲み方の3方向から

見直しの方向は、大きく3つあります。どれか一つでも効果があるので、できそうなものから選んでください。

量を替える:グラスの大きさ

  • 中ジョッキを小ジョッキ、またはグラスビールに替える。
  • 焼酎や日本酒は、お店のサイズ表示を見て小さい量を頼む。
  • 自宅では、いつもの大きなグラスを小さなグラスに替える。

度数を替える:缶と割り方

  • 缶は、度数の低いものを選ぶ。ラベルの度数は必ず確認する。
  • 水や炭酸水で割って、度数を下げる。ガイドラインにも、水などで薄めて度数を下げる方法が挙げられています。
  • アルコールの入っていない飲み物をはさむ。

飲み方を替える:食事と間隔

ガイドラインでは、飲酒前や飲酒中に食事をとると血中アルコール濃度が上がりにくくなること、飲酒の合間に水や炭酸水を飲むこと、あらかじめ量を決めて飲むことが勧められています(厚生労働省 ガイドライン)。私は、席に着いたらまず水を頼み、食べ物と一緒にゆっくり飲み進めるようにしています。

要点: 量・度数・飲み方のうち、一番やりやすいものから一つだけ変えてみます。

続けるために、私がやっていること

見直しは、続かなければ意味がありません。1年やってみて、続いている方法を書きます。

先に上限を決めておく

家でも店でも、飲む前に「今日は2杯まで」と決めます。決めておくと、迷う場面が減ります。外食の予定がある日は、前の日を飲まない日にして、1週間の合計で考えるようにしています。

記録は、手帳に一行だけ

飲んだ日は、手帳に「何を何杯」とだけ書きます。細かい計算は、月に一度、時間があるときにまとめてやります。数字で変化が見えると、次の健診が楽しみになりました。

要点: 上限は先に決める。記録は一行で十分です。

注意しておきたいこと

高血圧や、男性の食道がんなどは、少量の飲酒でもリスクが上がるとされています。ガイドラインにも、疾病によってはさらに少ない量でリスクが上がると書かれています(厚生労働省 ガイドライン)。また、一回の飲酒で純アルコール60g以上の「一時多量飲酒」は避けるべきとされています。私の経験は、あくまで一例です。持病や服薬のある方、健診で指摘を受けた方は、医師や薬剤師に相談しながら進めてください。

要点: 数字はあくまで目安です。体調や持病に不安があれば、専門家に相談します。

よくある質問

小さなグラスに替えるだけで、本当に意味はありますか?

純アルコール量は量に比例するので、同じ度数なら量が減った分だけ減ります。500mLから350mLに替えると、5%のビールで20gから14gです。

度数の低い缶は、何杯飲んでも同じですか?

いいえ。度数が低くても、杯数が増えれば合計は増えます。3%の350mL缶は1本で8.4gですが、3本で25.2gです。杯数と度数の両方を見てください。

週に何日くらい飲まない日をつくればいいですか?

ガイドラインには、一週間のうち飲酒をしない日を設けることで、1週間の純アルコール摂取量を減らせると書かれています。具体的な日数は、体調や健診結果に応じて医師に相談するのが確実です。

外食のとき、周りに気を使いませんか?

最初は私も気にしましたが、小ジョッキや水割りを頼んでも、気にする人はほとんどいませんでした。まずは一杯目だけ試してみてください。

次の飲み会では、一杯目のひと言を変えてみませんか。「小さいほうで」と頼んだ夜から、私の数字は少しずつ動きはじめました。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。