禁酒で顔が変わったという話が日本で特に多く語られるのには、体質的な理由があります。飲酒で顔が赤くなる「フラッシング反応」を起こす人は日本では41%程度いるとされていて、その体質の人は飲んでいるあいだ顔に変化が出やすい。だからやめたときの差も分かりやすく出ます。逆に言えば、体質によっては禁酒しても顔の見た目はあまり変わりません。

私は平日だけノンアルにする生活を3年続けています。完全にやめているわけではなく、週末に少しワインを飲む程度。それでも「顔が変わった」と言われることが何度かありました。この記事では、何が変わって何が変わらないのかを、体質の話から整理していきます。

「日本人は顔が変わりやすい」には理由がある

フラッシング反応とは何か

お酒を飲むと顔が赤くなる、動悸がする、吐き気がする。この状態を「フラッシング反応」と呼びます。厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、アルコールを分解する体内の分解酵素のはたらきが強い・弱いが個人によって大きく異なり、弱い場合にこうした反応が起こると説明しています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(PDF))。

分解酵素のはたらきの強弱は遺伝子によるものとされています。つまり後天的に鍛えられるものではなく、生まれ持ったものです。

日本では41%程度

同じガイドラインには、こう書かれています。東アジアではこの分解酵素が弱くフラッシング反応を起こす人が一定数存在し、日本では41%程度いると言われている、と(同ガイドライン)。

この数字が、「禁酒 顔が変わる 日本人」という検索が成立している理由そのものだと思っています。10人いれば4人は、飲むと顔に出る体質。その人たちが飲むのをやめれば、顔の見え方が変わるのは当然のことです。

海外の禁酒体験談で「顔が変わった」という話があまり前面に出てこないのは、この割合が違うからだと考えると腑に落ちます。日本語で検索したときだけ「顔」の話が大量に出てくるのは、日本語圏の美容意識が高いからというより、そもそも顔に出る人の割合が多いからという説明のほうが自然だと思います。

ちなみにガイドラインは、この分解酵素のはたらきの強弱について「遺伝子によるものと言われています」と明記しています。飲み続けて強くなるものではありません。この前提を押さえておくと、次の話が理解しやすくなります。

体質は「変わった」のではなく「戻った」

ここで押さえておきたいのは、禁酒で起きているのは体質が変わることではないという点です。分解酵素のはたらきは変わりません。変わっているのは、飲んでいるあいだ顔に出ていた反応が出なくなる、という状態のほうです。

だから「禁酒で顔つきが変わる」という言い方より、「飲酒で起きていた変化が無くなる」と考えたほうが、実際に起きていることに近いと思います。

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私の場合、最初に変わったのは赤みでした

3年前、平日だけやめると決めた

私がノンアルに切り替えたのは、健康を気にしてというより、平日の夜にクラフトノンアルを試すのが単純に楽しくなったからでした。もともと飲むと顔が赤くなるタイプで、飲み会の翌朝に鏡を見るのが少し憂うつ、という程度の自覚はありました。

平日5日をノンアルにして、週末だけ少量のワイン。これを続けてみたら、という始まりです。

最初の1〜2週間は「むくみ」

変化として先に分かったのはむくみでした。朝の顔の張り方が違う、というくらいの話ですが、化粧のノリで気づきます。これは飲まなくなったことによる水分の話なので、比較的すぐ出ます。

ただし、これは顔が変わったというより一時的な状態の差です。週末に飲めば翌朝には戻ります。今でもそうです。

1か月を過ぎたころ、赤みが落ち着いた

自分で「変わったかも」と思ったのは1か月を過ぎたあたりでした。頬の赤みが目立たなくなったんですよね。飲んだ直後の赤さではなく、常態としての赤みが薄くなった感じです。

人に言われるようになったのは、もっと後です。3か月目くらいに「なんか顔すっきりした?」と聞かれました。自分では劇的な変化という感覚はなかったので、少し意外でした。

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顔に出る変化を3つに分けて考える

「顔が変わる」とひとくくりにされがちですが、中身は3つに分けられます。速さも仕組みも違うので、混ぜないほうがいいです。先にまとめておきます。

  • むくみ — 数日〜1週間。水分の状態の話。飲めば戻る。体質に関係なく起きる
  • 赤み — 1か月前後。フラッシング反応が出る体質の人に関わる。出ない体質の人には起きない
  • 肌の調子 — 個人差が大きい。要因が多く、禁酒だけの効果として切り出しにくい

この順で出てきます。順番を知らないまま始めると、最初のむくみだけを見て「もう変わらない」と判断してしまいがちです。

1. むくみ

いちばん早く、いちばん分かりやすく出るのがこれです。飲まない日が続くと、朝の顔の張りが変わります。数日から1週間程度で気づく人が多い印象です。

ただし前述のとおり、これは水分の状態の話です。飲めば戻りますし、飲酒以外の要因(塩分、睡眠不足、ホルモンの周期)でも同じように変わります。禁酒の成果として過大評価しないほうが、がっかりしなくて済みます。

2. 赤み

フラッシング反応が出る体質の人に関わるのがこちらです。飲酒のたびに顔が赤くなる状態が繰り返されなくなるので、常態としての赤みが落ち着いていきます。

私の体感では、むくみより時間がかかりました。1か月前後で「そういえば」と気づく程度です。人によっては変化を感じないこともあると思います。もともと赤くならない体質の人には、そもそも起きない変化です。

3. 肌の調子

3つのなかで、いちばん個人差が大きく、いちばん語りにくいのがここです。睡眠の質が変わることや、飲酒時の食事内容が変わることなど、いくつもの要因が混ざります。禁酒だけの効果として切り出すのは難しいと思っています。

美容の観点から断定的に語る情報も多いのですが、私は「肌が変わった」という言い方は自分の実感としてはしていません。むくみと赤みほど、はっきりした差を感じられなかったからです。

肌について言えるとしたら、間接的な経路のほうだと思っています。飲んだ日は寝つきが早い代わりに夜中に目が覚めやすく、翌朝の状態がよくありません。飲まない日が増えれば、その分だけ睡眠のリズムが乱れる日が減る。肌に出ているとすれば、アルコールが直接どうこうというより、この積み重ねのほうではないかと考えています。

ただしこれは私の推測であって、数字で示せるものではありません。示せないことは示せないと書いておきます。

3つを混ぜると、判断を誤る

この3つを分けずに「顔が変わる」と語ると、困ったことが起きます。

むくみは数日で出るので、始めてすぐ「効果があった」と感じます。ところがそこで止まると、1週間後には慣れてしまって差が分からなくなる。赤みの変化はもっと後に来るので、その前に「もう変わらない」と判断して離脱してしまうんですよね。

私がおすすめしたいのは、最初の1週間はむくみだけを見て、赤みは1か月経つまで判断を保留する、という分け方です。見る対象を時期でずらすと、途中で折れにくくなります。

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変化を自分で確かめるための5つのチェック

「変わった気がする」で終わらせないために、私が見ている項目を挙げます。5つです。特別な道具は要りません。

1. 朝の写真を同じ条件で撮る

鏡の記憶は当てになりません。朝いちばん、同じ場所・同じ明るさで正面から撮っておくと、2週間後に比べられます。私は洗面所で撮っています。毎日でなくていいので、週1回だけでも十分です。

2. 化粧のノリで判断する

むくみの変化は、化粧をしたときのほうが分かります。ファンデーションの乗り方が変わる、目のまわりの段差が減る、といった形で出ます。すっぴんの見た目より鋭敏な指標だと思っています。

3. 赤みは「飲んだ直後」ではなく「常態」を見る

飲酒直後の赤さは誰でも出ます。見るべきは、飲んでいない日の頬の色です。ここが薄くなってきたら、常態としての赤みが落ち着いてきたサインになります。

4. 体重を一緒に測っておく

顔の印象が変わると「痩せた?」と言われますが、体重が動いていないなら、それはむくみの話です。両方を記録しておくと、原因を取り違えずに済みます。

5. 飲んだ日を記録する

平日だけやめる形の場合、いつ飲んだかが分からなくなります。カレンダーに印をつけるだけで構いません。「先週は3日飲んでいた」と後から分かると、変化との対応が見えます。

以上の5つを2週間ほど続けると、自分に変化が出るタイプかどうかが判断できます。出ないタイプだと分かったら、顔を目的にするのはやめて別の理由で続けるほうが健全です。

「顔が変わる」と言われるときにありがちな誤解

体重が落ちたから変わった、とは限らない

顔の印象が変わると「痩せた?」と言われがちですが、短期間の禁酒で体重が大きく動くわけではありません。むくみが引いたことによる印象の変化と、体重の変化は別ものです。

私自身、体重はほとんど変わっていません。それでも顔の印象については言われるので、見た目の変化と体重は分けて考えたほうがよさそうです。

戻ることもある

むくみは飲めば戻ります。これは元に戻ったのであって、失敗したわけではありません。

完全にやめる前提で書かれた記事を読むと、一度でも飲んだら台無しという気分になりがちですが、私は平日だけやめる形で3年続けています。戻る前提で運用したほうが、長く続く実感があります。

変化が出ない体質の人もいる

くり返しになりますが、フラッシング反応が出ない体質の人には、赤みの変化は起きません。「禁酒したのに顔が変わらない」というのは、効果が無かったのではなく、もともとそこに変化の余地が無かっただけ、ということがあります。

体質の話を先に置いたのは、この誤解を減らしたかったからです。

体質が強い人ほど、知っておいてほしいこと

顔が赤くならない、いくらでも飲める。そういう体質の人は、見た目の変化という点では禁酒のメリットを感じにくいと思います。ただ、見た目とは別の話として、ガイドラインにひとつ重要な記述があります。

ガイドラインには、こう書かれています。

そのような人が、長年飲酒して、不快にならずに飲酒できるようになった場合でも、アルコールを原因とする口の中のがんや食道がん等のリスクが非常に高くなるといったデータがありますので注意が必要です。

健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(PDF)

「昔は弱かったけど鍛えて飲めるようになった」という話をよく聞きますが、それは体質が変わったわけではないということです。顔に出なくなっただけで、体のなかで起きていることは別。顔の見た目を基準に飲める量を判断しないほうがよさそうです。

重い話はこの記事の担当範囲を超えるので深入りしませんが、体質の話をするなら、ここは外せないと思って書きました。

女性のほうが影響が出やすい、という前提

もうひとつ、ガイドラインに書かれている前提があります。女性は一般的に、男性と比較して体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も男性に比べて少ないこと、エストロゲン等のはたらきにより、アルコールの影響を受けやすいことが知られている、というものです(同ガイドライン)。

同じ量を飲んでも、体に入ったあとの影響が違う。顔の変化という観点でも、女性のほうが差が出やすい可能性があります。実際、顔の変化についての体験談は女性から発信されているものが多い印象です。

このあたりは「気のせいでは」と言われがちなところですが、前提となる体質差は公的な資料に書かれています。自分の感じている変化を疑いすぎなくていい、と私は思っています。

整理すると、顔の変化に効いてくる体質の前提は2つあります。ひとつは分解酵素のはたらきの強弱で、フラッシング反応を起こす人は日本では41%程度とされること。もうひとつは性差で、女性は体内の水分量が少なく分解できるアルコール量も少ないため影響を受けやすいこと。どちらも健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(PDF)に記載されています。

この2つが重なる人、つまり飲むと顔が赤くなる女性は、飲酒時の顔の変化がもっとも出やすい層ということになります。逆に、赤くならない男性は変化を感じにくい。同じ「禁酒」をしても体験談が食い違うのは、多くの場合この前提の違いによるものだと思っています。

平日だけやめる、という選び方

最後に、続け方の話をします。

私は完全にやめていません。平日はノンアル、週末は少量。この形にしたのは、やめること自体を目的にすると続かないと分かったからです。

平日のノンアルは、我慢というより置き換えです。クラフトのノンアルビールは種類が増えていて、探すのが普通に楽しい。飲まない夜のごはんに合わせて選ぶのも、習慣として定着しました。

顔の変化は、その結果として後からついてきたものです。最初から顔を目的にしていたら、むくみが引いた最初の1週間で「もういいか」となっていたかもしれません。

変化を急がないほうが、結果的に長く続きます。3年やってみて、それが一番の実感です。

よくある質問

禁酒すると何日で顔が変わりますか

むくみは数日から1週間程度で気づく人が多く、赤みの落ち着きはそれより時間がかかる傾向があります。ただし個人差が大きく、体質によっては赤みの変化がほとんど起きないこともあります。

日本人は特に顔が変わりやすいのですか

飲酒で顔が赤くなるフラッシング反応を起こす人は日本では41%程度いるとされています。この体質の人は飲酒時に顔に変化が出やすいため、やめたときの差も分かりやすくなります。体質差が背景にあります。

禁酒しても顔が変わりませんでした。効果がないということですか

フラッシング反応が出ない体質の場合、赤みについては変化の余地がもともとありません。顔の見た目に出ないことと、体のなかで起きている変化があるかどうかは別の話です。

むくみが戻ってしまいました

むくみは水分の状態なので、飲めば戻ります。塩分や睡眠不足など飲酒以外の要因でも変わります。一度戻ったことを失敗と考える必要はありません。

完全にやめないと意味がないですか

私は平日だけノンアルにする形を3年続けていて、それでも変化は感じています。完全にやめるか今のままかの二択ではありません。続けられる形を選ぶほうが、結果として長く続きます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療的な助言ではありません。体調や健康診断の数値に不安がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。