「よく眠れた気がする」は、なぜ毎朝くつがえされるのか

以前の私は、週半ばの水曜日が特に好きじゃなかった。火曜の夜にグラス一杯のワインを飲んで寝て、水曜の朝になぜかどっと疲れている、あのサイクルのせいだ。

飲んだ直後はすとんと眠れる。布団に入ってから数分で落ちていく、あの感覚は確かにある。だから「お酒は眠れる」という感触を3年前の私は手放せずにいた。でも翌朝、目覚まし前に目が覚めて、妙にぼんやりする頭を抱えてコーヒーを淹れる。それを繰り返すうちに、「あれ、これって本当に"よく眠れた"じゃないのかもしれない」と思い始めた。

お酒をやめると睡眠が改善する、という話はよく聞く。でもその「なぜ」を知らないと、寝酒の習慣をなかなか手放せない。今日は私が自分で調べ、体で実感してきた3つの仕組みを、できるだけフラットに書いてみたいと思う。

入眠が早くなる理由と、その裏側

アルコールには中枢神経を抑制する作用があり、飲んだ直後は確かに入眠が速くなることが知られている。これは事実だ。ところがその後の睡眠構造が変わってしまうのが問題で、特に後半の睡眠——明け方に向かう時間帯——のレム睡眠が減少することが指摘されている。

レム睡眠は記憶の定着や感情の処理に深く関わる睡眠段階で、いわゆる「脳が翌日の準備をする時間」と表現されることが多い。ここが削られると、睡眠時間の上では足りているはずなのに、頭がすっきりしない、気持ちが少し重い、という翌朝になる。私が水曜の朝に感じていた「なんとなくの重さ」は、おそらくこれだったんだなと今は思っている。

アセトアルデヒドが、眠りの質を揺さぶる

アルコールが体内で分解されるとき、まず「アセトアルデヒド」という物質が生成される。二日酔いのつらさの主犯として知られているあれだ。このアセトアルデヒドが血中に残っている間、自律神経が刺激され、心拍数がわずかに上がったり、体温調節がうまくいかなくなったりすることがある。

眠りを深くするためには体温が下がることが重要なのだが、アセトアルデヒドがその体温の下降を邪魔する、というのが研究者の間でも議論されているポイントだ。飲んだ夜に途中で何度か目が覚める、寝汗をかく、という経験がある人は、このアセトアルデヒドの影響が出ている可能性が高い。

夜中にトイレへ行きたくなる、もう一つの理由

眠りが浅くなる要因として、忘れがちなのが利尿作用だ。

アルコールが「水を出す」仕組み

アルコールには、腎臓に作用して尿量を増やす働きがある。具体的には、体内の水分を保持するために分泌される「抗利尿ホルモン(ADH)」の働きをアルコールが抑制することで、通常より多くの水分が尿として排出される。飲み会の翌朝に喉がカラカラになるのは、このメカニズムが原因のひとつだ。

夜中に一度でもトイレに起きると、そこから再び深い睡眠に戻るのに時間がかかる。特に後半の睡眠でレム睡眠が多くなる時間帯に目が覚めてしまうと、翌朝の「スッキリ感」に大きく影響する。私も以前、夜中の2〜3時に目が覚める癖があって、それを「そういう体質」だと思っていた。平日ノンアルに切り替えてからその癖がほぼなくなったとき、正直ちょっと驚いた。

睡眠の「深さ」が変わると、翌朝の体が変わる

レム睡眠が確保されると、翌朝だけでなく日中の状態も変わってくる。私が実感したのは、午後に眠くなる「例のアレ」がかなり薄まったこと。それから、甘いものへの衝動が少し落ち着いたこと。睡眠と食欲は関係していると言われているが、これは体重にも少しずつ影響してくる。節酒を始めた最初の数ヶ月で、特に食事を変えていないのにズボンのウエストが少しゆったりしてきたのは、おそらく睡眠の質の改善と食欲への影響が合わさったものだと思っている。

寝酒の代わりに、私が選んでいるもの

「じゃあ眠れなくなるんじゃないの」という不安、わかる。私も最初はそう思っていた。でも実際に試してみると、「寝酒なしの眠り」のほうが断然深くて、目覚めたときの感触がまるで違う。そこに至るまでのつなぎとして、今も使っているドリンクの選び方を紹介したいと思う。

クラフトノンアルビール+温かい飲み物の二段構え

私の平日の夜のルーティンは、夕食後にクラフトノンアルビールを一缶(この泡とホップの香りが「飲んだ感」を作ってくれる)、そのあとお風呂上がりにカモミールティーかホットルイボスを一杯、という流れだ。ノンアルビールで「今日もおつかれ」という気持ちの区切りをつけて、温かいお茶で体温をゆっくり上げてから布団に入ると、体温が下がるタイミングで自然に眠気が来やすくなる。これは体温調節のメカニズムを使った、シンプルな工夫だ。

カモミールには「アピゲニン」という成分が含まれており、リラックスを促す可能性があるとして研究されている。ただし劇的な効果を期待するというよりは、温かいものを飲むこと自体の副交感神経への働きかけと合わさって、「眠る準備」の儀式として機能している感じが近い。

ノンアルカクテルで「特別感」を出す夜も

週末、少量ワインを飲まない夜(これも最近増えてきた)は、ノンアルスパークリングワインや、ジンジャーとハーブのノンアルカクテルをグラスに注いで飲む。見た目と香りで「ちゃんと飲んでいる感」があるのが、ノンアルカクテルの好きなところ。気分は十分に満たされるし、翌朝の目覚めが気持ちよくて、なんだか得した気分になる。

お酒をやめる、あるいは減らすことで睡眠が改善する、というのは今や多くの専門家が指摘していることだけれど、私が伝えたいのは「眠れなくなるんじゃないか」という心配は、代わりの習慣を一つ作るだけでほぼ解決するということだ。レム睡眠を守り、利尿によるトイレ起きをなくし、アセトアルデヒドの影響を受けない夜——それがどれほど翌朝を変えるか、一度試してみてほしいと思う。

私は今、水曜の朝が好きになった。

お酒をやめると睡眠が改善するのは、①レム睡眠が確保されること、②利尿によるトイレ起きが減ること、③アセトアルデヒドによる自律神経への刺激がなくなること、という3つの機序が主な理由とされています。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。睡眠の悩みが続く場合は、医療機関にご相談ください。