「時間はある」のに何も起きていなかった

正直に言うと、自分はずっと「飲まないから夜の時間は多いはずだ」と思っていた。ビール半缶で顔が真っ赤になる体質だから、20代に入ってからも飲み会はソフトドリンクかノンアルビール一択。お酒を飲まないぶん、場を切り上げるのも早い。21時台には帰宅している日が多い。

それでも、22歳から23歳にかけての1年間、副業らしい副業は何ひとつ育っていなかった。時間はあるはずなのに、気づけば0時。スマホのスクリーンタイムは2〜3時間を超えていた。「飲まない=時間が余る」の方程式は、自分の場合まったく成立していなかった。

変わったのは、ある平日の水曜日の夜に「自分は一体この2時間で何をしたのか」と問い直した瞬間からだった。

時間の「総量」ではなく「配置」が問題だった

ダラダラの正体を分解してみた

自分がやったのはシンプルなことで、1週間の平日夜の行動を、15分単位でメモ帳に書き出してみることだった。アプリとか特別なツールは使わず、ただのテキストメモ。帰宅してから就寝するまでの行動を「食事」「SNS」「動画」「ゲーム」「作業」の5種類に分けて色分けした。

結果は見るも無残で、平日5日のうち「作業」に色がついたのはたった1日だけ。しかもその日も30分で終わっていた。残り4日は「動画」か「SNS」がほぼ全部を占めていた。ぶっちゃけ、飲まない夜の時間はあったのに、その時間を完全に消費コンテンツに溶かしていた。

「余白」と「稼働可能時間」は別物

このメモをながめて気づいたのは、「余白がある」と「副業に使える時間がある」はイコールではないということだった。余白というのは、意識が解放された状態で何となく過ごせる時間のこと。稼働可能時間というのは、集中して何かを生み出せる時間のこと。この2つは同じ時刻に存在していても、別の概念だと思う。

自分の場合、帰宅直後の19〜20時台は疲れていてもスマホは触れる。でも思考を使う作業には向いていない。一方、21〜22時台は夕食後で少し回復していて、なぜかロジカルな作業がしやすい。この「自分の稼働ゾーン」を発見することが、副業時間を捻出する第一歩だったと今は思う。

「スタジオ化」という発想が自分を変えた

時間ではなく空間に名前をつけた

稼働ゾーンを発見した次にやったことは、その時間帯を「副業スタジオ」と呼ぶことにしたことだ。マジでそれだけ。21時〜22時30分のこの90分を、自分の中で「スタジオの営業時間」と位置づけた。スタジオという言葉を使ったのは、そこに入ったら何かを生み出す場所、というイメージが自分に合っていたから。

名前をつけることで、その時間に「入る」感覚が生まれた。入ったら作業する。出たら休む。この切り替えが思いのほか機能した。それまでは夜の時間が全部フラットに続いていて、「いつ作業してもいいし、しなくてもいい」という曖昧な状態だった。名前をつけたら境界線ができた。

ノンアルビールが「入室の儀式」になった

ここで自分の習慣として機能しているのが、スタジオに入る前にノンアルクラフトビールを1本開けることだ。最近のお気に入りはホップの香りが強めのIPAスタイルのやつで、これをグラスに注いでデスクに座るのが「作業開始のシグナル」になっている。お酒が飲めない体質の自分にとって、こういう「儀式の道具」としてノンアルビールがちょうどいい。飲んでも頭が曇らないし、翌朝に影響もない。これ、かなり大事なポイントだと思う。

飲酒する人なら、飲んだ夜は副業どころじゃない、という話をよく聞く。自分には最初からその選択肢がないので、毎晩スタジオを開けられる状態が標準装備になっている。飲めない体質は「制約」じゃなくて、副業に向いた「仕様」だと捉え直した瞬間に、なんか前向きな気持ちになった。

90日後に起きた「小さいけどリアルな変化」

スタジオを習慣化してから90日で、自分に何が起きたかを記録しておく。まず、副業の作業時間の合計が月あたり約30時間になった。週5日のうち4日スタジオを稼働させて、1回あたり90分。単純計算だけど、それだけの時間が生まれた。

最初の1ヶ月はスキルアップに全振りして、Webライティングの講座をひとつ完走した。2ヶ月目から実際の案件に応募しはじめて、3ヶ月目に初めて原稿料が振り込まれた。金額は大したことがないけれど、「自分の夜の時間が換金された」という体験は、思っていた以上に自己認識を変えた。

もうひとつの変化は、平日の仕事への向き合い方だった。夜にスタジオを稼働させていると、昼間の本業の時間も密度を上げたくなる。副業が本業の質を引き上げるという、ちょっと意外な連鎖が起きた。これは自分でも予想していなかった副産物だった。

飲まない自分が持っている「初期優位性」の話

副業や時間捻出の話をするとき、「飲み会を減らせ」とか「飲まない日を増やせ」という文脈になることが多い。でも自分は最初からその選択肢がない。ということは、その「減らす」という努力のコストをまるごと別のことに使えるということだ。

お酒を飲む人が平日夜に副業時間を作ろうとすると、まず「今日は飲まない」という意思決定コストがかかる。自分にはそれがゼロ。毎晩スタジオを開けるかどうかだけを決めればいい。この構造上の差は、長期で積み上がるとかなり効いてくると思っている。

ALDH2が低活性な自分は、20代になってから「飲めないことへの引け目」をたまに感じることがあった。でも今は、この体質が副業と相性抜群だと思っている。飲まない選択を強いられているわけじゃなく、最初からノンアル一択で動いている。それが結果的に、夜の時間をフルに使える状態を作っていた。

副業の話をするとき、「何をするか」よりも「いつ、どんな状態でやるか」の方が先に決まる必要があると自分は考えている。飲まない夜は、その「いつ、どんな状態で」を最初からクリアしている。それがどれだけ有利なことかは、スタジオを90日続けてみて、やっとわかった気がする。

※本記事は一般情報であり、医療的助言・診断・治療の推奨ではありません。健康に関わる事項は、必要に応じて医師や専門家にご相談ください。