結論:アルコール中毒には2つの意味があり、救急が必要なのは急性アルコール中毒のほうです

結論から言うと、「アルコール中毒」と検索される言葉には、2つの意味が混ざっています。ひとつは、短時間に大量に飲んで意識がもうろうとする「急性アルコール中毒」、もうひとつは、俗に「アル中」と呼ばれる「アルコール依存症」です。前者は救急対応が必要になることがある状態で、後者は継続的な治療と回復支援が必要な病気です。

東京消防庁によると、管内の急性アルコール中毒の救急搬送人員は令和6年に14,190人でした(東京消防庁「急性アルコール中毒」)。この記事では、おもに急性アルコール中毒を扱います。依存症については、別の記事でまとめた治療の全体像に誘導します。

先に、大事なことをひとつだけ書きます。呼びかけても反応しない、いびきが大きく痛みの刺激に反応しない、呼吸がおかしい、体が冷たい。こうした様子があれば、迷わず119番に連絡してください。ここから先の文章は、その判断をするための材料です。

自分は40代で、10年以上ほぼ毎日ビール500ml缶を2本空けていた経験があります。健診でD判定が出て断酒し、いまは3年続いています。急性アルコール中毒で運ばれたことはなく、救急の現場の経験もありません。だからこそ、この記事は自分の体験ではなく、公的な資料を読み込んだ内容を中心に書きます。

要点: 言葉は2つの意味に分かれます。急性は救急の話、依存症は治療の話です。反応がなければ迷わず119番です。

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2つの「アルコール中毒」を切り分ける

急性アルコール中毒とは

e-ヘルスネットは、急性アルコール中毒を「アルコール飲料の摂取により生体が精神的・身体的影響を受け、主として一過性に意識障害を生じるもの」と説明しています。明確な診断基準はなく、通常は酩酊と呼ばれる状態の延長にあります(e-ヘルスネット「急性アルコール中毒」)。

俗称の「アル中」とは何が違うのか

「アル中」と呼ばれることのあるアルコール依存症は、飲酒のコントロールができなくなる状態を指す病気です(e-ヘルスネット「アルコールと依存」)。1回の飲み方で起きる急性の状態とは別物で、継続的な治療が必要になります。治療の全体像は、別の記事(アルコール依存症の治療の5段階)で整理しています。

両者は重なることもある

依存症の人が急性アルコール中毒になることもありますし、依存症ではない人が一気飲みなどで急性アルコール中毒になることもあります。どちらかに当てはまるから、もう一方は関係ない、というわけではありません。

要点: 急性アルコール中毒は1回の飲み方の問題、アルコール依存症は飲酒のコントロールの問題。別の言葉として整理します。

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数字で見る急性アルコール中毒:搬送人員の推移

東京消防庁管内の5年間

東京消防庁のページには、管内の急性アルコール中毒の搬送人員が示されています。令和2年は11,291人、令和3年は8,951人、令和4年は11,554人、令和5年は13,906人、令和6年は14,190人です。新型コロナウイルスの感染拡大で一時減少し、社会活動の再開とともに増加している、と説明されています(東京消防庁「急性アルコール中毒」)。

令和2年 11,291人令和3年 8,951人令和4年 11,554人令和5年 13,906人令和6年 14,190人東京消防庁管内の救急搬送人員

図: 急性アルコール中毒の搬送人員の推移(東京消防庁の公開ページより作図)

男女差と重症度

令和6年は男性8,277人、女性5,913人でした。重症度は、重症以上が27人、中等症が3,717人、軽症が10,446人です(東京消防庁「急性アルコール中毒」)。軽症が多いとはいえ、全体の数が多いので、中等症以上の人も少なくありません。

年代と時期の傾向

同じページでは、男女とも20歳代が抜きんでて多く、経験の浅さから自分の適量が分からないことなどが理由と考えられるとされています。月別では、気温が高く発汗作用が働く時期と、冬の忘年会シーズンに搬送が多くなっています。

要点: 搬送人員は令和6年に14,190人。20歳代が多く、夏と忘年会の時期に増える傾向が示されています。

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症状の段階と、危険なサイン

血中アルコール濃度と状態

e-ヘルスネットは、血中アルコール濃度と状態の目安を示しています。0.02〜0.1%がほろ酔い、0.3%超が泥酔期、0.4%超が昏睡期で、生命に危険を生じうる状態です(e-ヘルスネット「急性アルコール中毒」)。泥酔以上では、意識レベルの低下、嘔吐、血圧低下、呼吸数の低下などが起こります。

すぐに救急車を呼ぶべき兆候

同じページには、すぐに救急車を呼ぶべき兆候が挙げられています。

  • 大いびきをかき、痛みの刺激に反応しない
  • 揺すって呼びかけても反応しない
  • 体が冷たくなっている
  • 倒れて口から泡を吐いている
  • 呼吸状態が不安定

これらのどれかがあれば、迷わず119番に連絡してください。「様子を見よう」「寝かせておけば治る」と判断するのは、とても危険です。

死に至る経路

e-ヘルスネットによれば、血中アルコール濃度の上昇で呼吸・循環中枢が抑制される場合と、吐物による窒息の場合があります。死亡に至らなくても、転倒や事故、もうろう状態でのトラブルなど、二次的な危険も高まります(e-ヘルスネット「急性アルコール中毒」)。

要点: 反応がない、呼吸が不安定、体が冷たい。こうした兆候があれば119番です。

周囲の人ができること、してはいけないこと

救急車を待つあいだにできること

救急車が来るまでのあいだの対応を、チェックリストにまとめます。内容は、e-ヘルスネットと東京消防庁の説明にもとづいています(e-ヘルスネット、東京消防庁)。

  • 絶対に1人にしない
  • 衣服をゆるめて楽にする
  • 毛布などで体を暖かくし、体温低下を防ぐ
  • 吐物による窒息を防ぐため、横向きに寝かせる
  • 吐きそうなときは、抱き起こさず、横向きのまま吐かせる
  • 十分な呼吸があるのに意識がない場合は、回復体位をとる
  • 嘔吐したら、口の中から吐物をかき出す

回復体位の考え方

東京消防庁のページによれば、回復体位は、体を横向きにして頭を反らせ、気道を確保する姿勢です。嘔吐しても自然に流れるよう、口元を床に向けます。長時間続ける場合は、約30分おきに反対向きにするとされています(東京消防庁「急性アルコール中毒」)。意識がなく呼吸が止まっている場合は、心肺蘇生が優先されます。普段から救命講習などで手順を学んでおくと、いざというときに役立ちます。

してはいけないこと

e-ヘルスネットは、意識が低下している場合は無理に吐かせないことが大切だと説明しています。無理に吐かせると、吐物が逆流してのどに詰まる可能性があるためです(e-ヘルスネット「急性アルコール中毒」)。そのほかにも、次のことは避けてください。

  • 一気飲みをさせる、飲酒を無理強いする
  • 酔った人を一人にして帰る
  • 意識がない人を仰向けのまま放置する
  • 水を飲ませたり、寝かせたりして済ませようとする

相談したいときは、東京消防庁の救急相談センター(#7119)の案内がありますが、意識がない、呼吸がおかしいといった緊急時は、相談ではなく119番です。

要点: 一人にしない、横向きにする、無理に吐かせない。迷ったら119番です。

なぜ起きるのか:一気飲みとハイリスクな人

一気飲みの危険

e-ヘルスネットは、一気飲みの慣習が大学生や新社会人の行事に残っていることに触れ、若者が自発的に大量飲酒するとは考えにくく、非自発的に飲まされているケースが多いと考えられるとしています。体調を崩すと分かりながら飲酒を強要し、死亡させた場合は、刑法の傷害致死罪が適用されて3年以上の懲役が科せられることがある、とも書かれています(e-ヘルスネット「急性アルコール中毒」)。

リスクが高い人

同じページは、若年者、女性、高齢者、飲酒後に顔が赤くなる体質の人は、アルコールの分解が遅く、リスクが高いと説明しています。若年者は自分の限界が分からず、耐性も低いとされます。ここには「この量までなら安全」という線はありません。体質や体調、その日のコンディションで、同じ量でも結果が変わります。

飲む側・誘う側にできる予防

予防のために、飲む側と誘う側ができることを挙げます。

  • 一気飲みをしない、させない
  • 飲めない人には、ノンアルの選択肢を自然に用意する
  • 空腹で飲まない
  • 自分のペースで飲み、ほかの人のペースに合わせすぎない
  • 飲み会では、誰かが酔いつぶれたときの対応を、事前に共有しておく
  • 帰りの手段を、飲む前に決めておく

要点: 一気飲みと強要が、急性アルコール中毒の大きな要因です。体質によってリスクは変わり、安全な量は示せません。

119番に連絡するときの伝え方と、救急隊が来るまでの準備

電話で伝えること

119番では、落ち着いて、短く伝えるのがコツです。通信指令員の質問に順番に答えれば大丈夫なので、次の情報を頭に置いておくと慌てずにすみます。

  • 今いる場所(住所、建物名、目印)
  • 酔っている人の状態(呼びかけに反応するか、呼吸はあるか、吐いたか)
  • 年齢のおおよそと、性別
  • 何を、どのくらい飲んだか分かる範囲で(一気飲みがあったかどうか)
  • 持病や服用中の薬が分かれば、その情報
  • 電話をかけている人の名前と、連絡のつく番号

分からない項目があっても、無理に埋めようとせず「分かりません」で構いません。質問に答える時間よりも、状態を伝えて救急車を向かわせることのほうが優先です。

救急隊に引き継ぐ準備

救急隊が到着するまでに、次の準備をしておくとスムーズです。

  1. 出入口や道順を確認して、案内できる人を決める
  2. 酔った人の持ち物(保険証や薬の情報が分かるもの)を、すぐ出せるようにしておく
  3. 飲んだ量や時刻を、分かる範囲でメモする
  4. 吐いたものがあれば、状況を伝えられるようにしておく
  5. 一人にしないまま、横向きの姿勢を保つ

「大げさだったかも」と迷っても大丈夫

119番をためらう理由で多いのは、「大げさかもしれない」「周りに迷惑をかけるかもしれない」という気持ちです。反応がない、呼吸がおかしいといった兆候があるなら、通報して問題ありません。結果として軽症だったとしても、それはよかったことであって、通報が間違いだったということにはなりません。判断に迷うほどの状態であれば、迷っている時間のほうが危険だと考えてください。

自分は、救急の現場に立ち会った経験を持つわけではありません。それでも、酔っている本人の「大丈夫」は、あてにならない場面があると考えています。周囲の人が客観的な兆候で判断するほうが、安全だと考えています。

要点: 119番は、短く、分かる範囲で伝えれば十分です。迷ったら通報する方向で考えます。

「アル中」と呼ばれる側の話:依存症へのつなぎ

検索で「アルコール中毒」と入力する人のなかには、自分や家族の飲み方が心配で調べている方もいると思います。その場合に知っておいてほしいのは、「飲酒のコントロールができなくなる状態」は、意志の弱さではなく、医療の対象になる病気として扱われているということです(e-ヘルスネット「アルコールと依存」)。

e-ヘルスネットには、どこからが依存症で、どこまでが普通の酒飲みか、線引きははっきりできないと書かれています。自分のことが心配なら、地域の保健所や精神保健福祉センター、依存症専門医療機関に相談する道があります。家族のみの相談を受け付けている窓口もあります。

自分も毎日2本の習慣が続いていた頃は、飲み方を変えられない理由を、意志の問題として捉えていました。それが病気として扱われると知っていれば、もう少し早く相談できたかもしれない、と今は思っています。

要点: 飲み方が心配なときは、保健所や精神保健福祉センターへ。治療の全体像は、別記事(アルコール依存症の治療)で整理しています。

よくある質問

急性アルコール中毒と、アルコール依存症は同じですか?

別のものです。急性アルコール中毒は短時間の大量飲酒による一過性の意識障害などの状態(e-ヘルスネット)、アルコール依存症は飲酒のコントロールができなくなる病気です(e-ヘルスネット)。

酔いつぶれた人を寝かせておいても大丈夫ですか?

一人にしないことが大前提です。横向きに寝かせて様子を見続け、反応がない、呼吸がおかしい、体が冷たいなどの兆候があれば119番に連絡してください(e-ヘルスネット)。

吐かせたほうがいいですか?

意識が低下している場合は、無理に吐かせないことが大切です。吐物が逆流してのどに詰まるおそれがあります(e-ヘルスネット)。吐きそうなときは、横向きのまま吐かせます。

救急搬送される人は、どのくらいいますか?

東京消防庁管内では、令和6年に14,190人でした(東京消防庁)。男女とも20歳代が最も多いと示されています。

119番にかけるか迷ったときは?

意識がない、呼びかけに反応しない、呼吸がおかしいなどの兆候があれば、迷わず119番です。判断に迷うが緊急ではない場合は、地域の救急相談窓口の利用も考えられます。

次に飲み会へ行く前に、「誰かが酔いつぶれたら、横向きに寝かせて一人にしない。反応がなければ119番」という一文だけ、頭に入れておいてください。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。