結論から言うと、飲酒の記録で酒量が動くかどうかは、気合ではなく記録の対象で決まります。自分の経験では、杯数や純アルコール量を手で打ち込む方式は目標を持っている人に効き、睡眠スコアや心拍を自動で残す方式は飲んだ翌日の体感を言葉にできない人に効きました。研究でも、デジタルツールを使った人は使わなかった人より週あたり約23gの純アルコール、英国の単位で約3ユニット少なく飲んでいたと報告されています(PubMed 28944453)。ただし、記録すれば誰でも減るわけではありません。この記事では2つの方式を並べて、どちらが自分に向くかを判断できるようにします。

記録の対象は2種類に分けられる

自分は週4日を飲まない日にして、週末の2日だけ飲む運用を2年続けています。使っているのはApple Watchと飲んだお酒を登録するアプリで、ログを取ると自分の飲み方の癖がはっきり見えます。その中で気づいたのは、記録には量を残すものと結果を残すものの2種類があり、人によって効き方が全然違うことでした。

量を記録する方式とは

飲んだ本数や純アルコール量を、自分で入力する方式です。純アルコール量は、酒の量(mL)に度数を掛け、さらに比重の0.8を掛けると求められます。5%のビール500mLなら500×0.05×0.8で20gです(e-ヘルスネット 飲酒量の単位)。この式を一度覚えると、缶の表示だけで週の合計が出せます。計算の早見は純アルコール量の計算方法をまとめた記事に置いてあります。

結果を記録する方式とは

飲んだ量ではなく、翌朝の睡眠スコアや安静時心拍、起床時刻のずれをウェアラブルに任せて自動で残す方式です。入力の手間がなく、飲んだ夜と飲まなかった夜のグラフが勝手に並びます。数値で測ると、飲んだ翌日の数字は自分の感覚より正直です。

要点: 記録は量を残す方式と結果を残す方式の2種類で、どちらを選ぶかで効き方が変わります。

関連記事: 純アルコール20g、ビール500ml1本の数字から始めた1年間のログ

研究が示す、記録ツールで減る量と減らない場合

デジタルツール全体では週にビール1本分ほど減っている

57件の試験、合計3万4千人あまりを集めたコクランのレビューでは、アプリやウェブを使った人は、何もしなかった人や最小限の介入だけの人に比べて、追跡終了時点で週あたり約23gの純アルコールを少なく飲んでいました。さらに、目標を決めること、問題の解決策を考えること、飲みたくなるきっかけを知ること、飲む代わりの行動を用意することが、減った量と結びついていました(PubMed 28944453)。記録そのものより、記録を見て何をするかが効いていると読めます。

  • デジタル介入で減った量:週 約23g
  • ビール500ml(5%) 1本:20g

図: 研究で示された週あたりの減少量とビール1本分の比較(PubMed 28944453、e-ヘルスネットより筆者作図)

アプリを渡すだけでは差が出なかった試験もある

一方で、英国の5602人を対象にした無作為化試験では、飲酒記録アプリを渡した群と、公的機関の飲酒アドバイスページを案内した群を6か月後に比べたところ、アプリ群のほうが週に0.98ユニット少なかったものの、統計的に意味のある差とは言えませんでした(PubMed 38685934)。ログを取ると、ではなく、ログを使うと、でないと数字は動きません。記録しても変わらない人は、この試験の参加者の多くと同じ状態にいると自分は見ています。

要点: 記録ツールで減る人は目標や代替行動と組み合わせていて、アプリを入れただけでは差が出ないことも研究で示されています。

関連記事: 健康日本21のアルコール目標は第二次から何が変わったのか。男女別13%・6.4%から全体10%への数字の読み方

量を記録する方式が向く人、結果を記録する方式が向く人

量の記録が向く人の条件

  • 週あたりの純アルコール量に、自分なりの上限を決めている人。
  • 飲む日と飲まない日を、カレンダー単位で前もって決めている人。
  • 外で飲む機会が多く、ウェアラブルの数字が外食の影響で乱れやすい人。
  • 家計簿のように、数字が積み上がること自体に達成感を覚える人。

結果の記録が向く人の条件

  • 飲んだ翌日の不調を、気のせいだと片付けてしまいがちな人。
  • 入力が3日続かず、記録アプリを何度も消してきた人。
  • 眠りの浅さや朝の心拍のように、体の変化を数字で見たい人。
  • 量を減らす目標より、まずは飲んだ日の影響を知りたい段階の人。

2つを同時に使う場合の注意

自分は両方を使っていますが、最初から両方を始めるのはおすすめしません。入力の負担と見る数字の量が一気に増えて、どちらも続かなくなります。順番としては、結果の記録を1か月だけ自動で貯め、飲んだ夜のグラフが崩れるのを確認してから、量の記録を足すのが自然でした。

要点: 目標がある人は量の記録、まず影響を知りたい人は結果の記録から始め、両方を同時に始めないことです。

自分の2年分のログで起きたこと

ログを取ると、最初の3か月は量の記録だけでした。週末の2日に何杯飲んだかを打ち込むのは簡単で、1か月目は確かに減りました。ところが2か月目には入力を忘れる日が出て、3か月目には記録と実際の量がずれていました。記録しても変わらない側に自分も落ちていたわけです。

転機はApple Watchの睡眠グラフでした。飲んだ土曜の夜は、入眠は早いのに深い睡眠が前半に偏り、後半に目が覚める回数が増える形がはっきり出ていました。アルコールが寝つきを早める一方で睡眠の後半を乱すことは研究のレビューでも一貫して示されていて、全ての量で入眠までの時間は短くなり、後半の睡眠の中断は増えると整理されています(PubMed 23347102)。自分のグラフが研究の図とそろったとき、量の数字が初めて意味を持ちました。

それ以降は、週末の杯数を打つときに、翌朝の睡眠スコアを横に書き添えるようにしました。量と結果が1行に並ぶと、3杯目を2杯目で止める判断が楽になります。数値で測ると、我慢しているのではなく選んでいる感覚に変わりました。

要点: 量の記録だけでは続かず、結果の記録で飲んだ夜の影響を見てから量の数字が動き始めました。

よくある質問

記録アプリは何を使えばいいですか

純アルコール量を自動計算してくれるものなら何でも構いません。候補は飲酒記録アプリを比べた記事で並べています。大事なのはアプリの選定より、週の上限を先に決めて、その数字と並べて見ることです。メモアプリに杯数を打つだけでも、上限が決まっていれば機能します。

ウェアラブルを持っていなくても結果の記録はできますか

できます。起床時刻、目が覚めた回数、朝の体の重さを5段階で手書きするだけでも、飲んだ夜と飲まなかった夜の差は見えてきます。自動化は続けやすさのための工夫で、必須ではありません。

記録しているのに全然減りません

記録のあとに何をするかが決まっていない可能性があります。研究では、目標を決めることと飲む代わりの行動を用意することが減少と結びついていました。来週の上限と、飲みたくなった夜に代わりにやることを1つだけ決めて、記録の横に書いてみてください。

今夜から始めるなら、まず1か月は結果の記録だけを自動で貯めてみてください。飲んだ夜と飲まなかった夜のグラフが並んだとき、量の数字を足すタイミングが自分で分かります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療的助言・診断・治療の推奨を行うものではありません。健康上のご不安は医療機関にご相談ください。