結論から言うと、禁酒で自律神経が「整う」と断言できる根拠は、私が確認した範囲にはありません。ただ、飲酒した夜は睡眠前半の心拍数が上がり、副交感神経の指標が下がることは、4098人を対象にした観察研究で報告されています。つまり、お酒を休むと夜の体の負担が減る可能性は高いと言えます。この記事では、その研究の内容と、自分で測れる指標をお伝えします。
禁酒で自律神経は整いますか。
「自律神経が整う」という言い方は、あいまいで測れません。そこで、測れる形に言い換えて考えます。ここで見るのは、睡眠中の心拍数と、副交感神経の働きを反映するとされる指標です。
自律神経とは
自律神経は、心拍や呼吸、消化など、自分の意思とは関係なく働く体の仕組みです。活動時に優位になる交感神経と、休むときに優位になる副交感神経があり、夜は副交感神経が働いて体が回復するとされています。
要点: 「整う」ではなく、心拍数や副交感神経の指標という測れる形で考えます。
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飲酒した夜の心拍は、どう変わるのか
フィンランドの研究グループが、勤労者4098人、のべ12,411日の記録を解析しました。就寝30分後から始まる3時間を、飲酒した日としていない日で比べています。論文はJMIR Mental Healthに掲載されています(出典(JMIR Mental Health 2018;5(1):e23)、DOIは10.2196/mental.9519)。
飲酒量は体重1kgあたりの純アルコール量で、低用量(0.25g以下)、中用量(0.25gを超え0.75gまで)、高用量(0.75g超)に分けられています。結果は次のとおりです。
- 心拍数: 低用量で+1.4拍/分、中用量で+4.0拍/分、高用量で+8.7拍/分
- 副交感神経の指標(RMSSD): 低用量で−2.0ms、中用量で−5.7ms、高用量で−12.9ms
- 回復率: 低用量で9.3ポイント、中用量で24.0ポイント、高用量で39.2ポイントの低下
量が増えるほど、心拍数は上がり、副交感神経の指標は下がっていました。
低用量 +1.4拍/分中用量 +4.0拍/分高用量 +8.7拍/分
図: 飲酒した夜は睡眠前半の心拍数が上がる(出典: JMIR Mental Health 2018;5(1):e23)
この研究の限界
観察研究で、飲酒量は自己申告です。論文には、飲酒や睡眠の正確な時刻の情報が得られていないという限界も書かれています。ですので、「お酒が原因でこうなる」と言い切るものではありません。
要点: 4098人の観察研究で、飲酒量が多いほど睡眠前半の心拍数が高く、副交感神経の指標が低い傾向でした。
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寝酒と睡眠の質
厚生労働省のe-ヘルスネットには、アルコールは一時的には寝付きをよくしますが、深いノンレム睡眠を減らす、中途覚醒を増やすなど、睡眠の質を低下させると書かれています(出典(e-ヘルスネット 快眠と生活習慣))。睡眠薬代わりの飲酒も勧められないとされています。
要点: 寝酒は寝つきを良くしても、睡眠の質は下げるとされています。
自分で測れる3つの指標
ここからは、私が5年続けているノートの話です。禁酒の効果を「感じ」で終わらせないために、次の3つを毎日記録することをおすすめします。
- 安静時心拍: 朝起きた直後に測った数値を記録します。スマートウォッチがあれば、睡眠中の平均心拍も見られます。
- 中途覚醒: 夜中に何回目が覚めたかを、朝にメモします。
- 朝の気分: 5段階など、簡単な点数で構いません。
比べるときは、飲んだ日と飲まなかった日を並べるのではなく、1週間以上の平均で見ると、日々のぶれに惑わされません。
運動との組み合わせ
軽い散歩やストレッチを加えたい方もいると思います。ただ、運動と禁酒の相乗効果を示す根拠は、今回確認できた資料の中にはありません。運動を足す場合は、禁酒の効果と混ざらないよう、始める日をノートに書いておくと分けて考えられます。
要点: 安静時心拍、中途覚醒、朝の気分の3つを記録すると、変化を数字で追えます。
よくある質問
何日禁酒すれば自律神経が変わりますか。
日数を断言できる根拠は、確認した資料にはありませんでした。まず1〜2週間、記録を続けてみてください。
少量なら問題ありませんか。
先ほどの研究では、低用量でも心拍数とLF/HF比に影響が見られたと報告されています。ただし、観察研究である点にご注意ください。
スマートウォッチがなくても記録できますか。
できます。朝の脈拍を手首で数えるだけでも、安静時心拍の目安になります。
体調が心配なときはどうすればよいですか。
動悸やめまいなどが続く場合は、自己判断せず医療機関に相談してください。
5年やってみて気づいたのは、体の変化はノートに書くと、ゆっくりでも確かに見えてくるということです。今夜は、明日の朝に測る脈拍を書くページを、一枚用意してみませんか。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。

