「なんとなく不機嫌」の正体が、飲酒量だったとは
昨年の春、健診の結果を見て言葉を失いました。γ-GTPが基準値の2倍を超えており、担当医から「このまま続けると脂肪肝が進みます」と、はっきり告げられたのです。自覚症状はほとんどなかった。それなのに数字は正直で、私の毎晩のビール缶の本数を静かに記録していました。
医師の指示のもと、週3日の飲まない日と、飲む日は1日2杯までというルールで運用をはじめました。最初の目的は肝臓の数値改善でしたが、3か月ほど続けたころ、別の変化に気づきました。以前は「なんとなくイライラしている」「朝から気が重くて億劫」という状態が週に何度もあったのに、それがずいぶん減っていたのです。
「お酒を飲んだ翌日は少し気分が落ちやすい」という話は聞いたことがありました。でも自分ごととして体感するまでは、どこか他人事でした。今回はその変化を、私自身のチェックリストとして整理してみます。
なぜ飲酒量が気分に影響するのか――私が理解した仕組み
医師や書籍から学んだことを、私なりに嚙み砕くとこうなります。アルコールは一時的に気分をほぐしてくれますが、代謝の過程でアセトアルデヒドという物質が生じ、これが自律神経や睡眠の質に影響を与えます。睡眠が浅くなれば、翌朝の気分の基準点が下がる。それが積み重なると、「なんとなく不機嫌」「何もしたくない」という状態の背景になりえます。
私の場合、飲んでいる最中は「リラックスしている」つもりでしたが、翌朝の気分の重さを足し算すると、トータルでは損をしていた。その事実に、節酒をはじめてはじめて気づきました。数字で見えていなかったものが、飲む日数と飲む量を絞ることで、ようやく輪郭を持ちはじめたのです。
今日から使える「メンタル安定」チェックリスト6
以下は、私が節酒1年のあいだに実際に試し、効果を体感した習慣です。医療的な処方ではなく、あくまで生活の中での気づきを整理したものです。「全部やる」必要はなく、まず1〜2項目から確かめてみてください。
① 翌朝の気分を10点満点で記録する
起床直後に「今の気分は10点中何点か」をメモ帳にひと言書くだけです。前夜に飲んだかどうかも一緒に記録します。私はこれを2週間続けたところ、飲んだ翌朝の平均点が飲まない翌朝より明らかに低いことが数字として見えました。「感覚」を「記録」に変えると、言い訳できなくなります。それが行動の出発点になりました。
② 飲む日の上限を「視覚化」してグラスに先に水を注ぐ
以前は「2杯まで」と決めても、なし崩しになることがありました。そこで試したのが、飲む前にグラス1杯の水を先に飲むという手順です。水を飲む時間が、「さて、今夜は何杯にするか」と自分に問いかける間になります。衝動的に注ぎ足すペースが落ち、結果として2杯の上限を守りやすくなりました。
③ 飲まない日の夜に「小さな楽しみ」を1つ置く
飲まない日を「我慢の夜」にしてしまうと、精神的なコストが上がります。私は温かいほうじ茶とチョコレート1かけを夜のルーティンにしました。「今夜はこれがある」という小さな期待感があるだけで、飲まない日の夜が苦にならなくなりました。メンタルの安定には、「何かを減らす」よりも「何かに置き換える」発想の方が続きやすいと感じています。
④ 「飲んだ翌日の行動」をあらかじめ決めておく
飲んだ翌朝は気分の基準点が下がりやすい。だからこそ、翌朝の最初の行動を前の晩に決めておきます。私の場合は「カーテンを開けて5分、外の空気を吸う」だけです。たったそれだけですが、行動の最初のハードルを下げておくことで、「なんもしたくない」から抜け出すきっかけになります。
⑤ 週に一度、気分の波を振り返る「5分の棚卸し」をする
私は日曜の夜に、その週の気分の波を5分だけ振り返るようにしています。「よかった日」「重かった日」を思い出しながら、飲んだ日との相関を確認する作業です。これが続くと、自分のパターンが見えてきます。「木曜に多めに飲むと週末の気分が落ちやすい」といった傾向は、記録して初めてわかりました。パターンが見えれば、対処できます。
⑥ 飲む日と飲まない日の「朝の会話量」を比べてみる
これは少し変わった観察ですが、試してみると面白い発見がありました。飲んだ翌朝、家族への言葉数が少なくなっていることに気づいたのです。自分では「普通にしているつもり」でも、振る舞いに出ていた。逆に飲まない翌朝は、朝食の場で自然と言葉が出やすい。気分の安定は、対話の質にも表れるということを、50代になって初めて実感しました。
節酒1年、γ-GTPの数字と気分の変化
節酒をはじめて6か月後の健診で、γ-GTPは基準値の範囲内に戻りました。それ自体は医師から「このまま続けましょう」と言われた結果であり、私個人の体験です。数値の変化と並行して、「朝から気が重い日」の頻度が体感として減ったことは確かです。
以前は「仕事のストレスのせいだ」と片付けていた気分の波が、実は飲酒量と強く連動していたのかもしれない。そう思うと、節酒は肝臓のためだけではなかったと感じています。完全にお酒をやめたわけではありません。飲む日には好きなビールを2杯、きちんと楽しんでいます。ただ、量と頻度を自分でコントロールできている感覚が、それ自体でひとつの落ち着きをもたらしてくれています。
まとめ――数字より先に、気分が教えてくれた
健診の数値が改善することはもちろん大切です。でも節酒1年で私が最も驚いたのは、γ-GTPの改善より先に「毎朝の気分の基準点」が変わっていったことでした。数値は後からついてきた。気分は、もっと早く正直に教えてくれていたのだと思います。
チェックリストの6項目は、いずれも特別な道具も費用も必要ありません。記録し、観察し、少し置き換える。それだけです。もし「なんとなく気分が重い日が多いな」と感じているなら、飲む量と頻度を少し見直すことが、ひとつの手がかりになるかもしれません。
※本記事は一般情報であり、医療的助言・診断・治療の推奨ではありません。体調や飲酒に関する具体的なご相談は、医師または医療機関にお問い合わせください。

