結論:スマートドリンキングとは「飲む・飲まない」を自分で選べる飲み方のこと
結論から言うと、スマートドリンキング(略してスマドリ)とは、お酒を飲みたい時も、飲めない時も、あえて飲まない時も、体質や気分やシーンに合わせて、お酒かノンアルコールドリンクを自分で選べる飲み方のことです。アサヒビールが提唱している考え方で、公式の説明では「飲む人も、飲まない人も、ひとりひとりが、自分の体質や気分、シーンに合わせて、適切なお酒やノンアルコールドリンクをスマートに選択できる飲み方」と定義されています(アサヒビール お客様相談室「スマドリって何ですか?」)。
ポイントは、お酒を減らすことや我慢することが目的ではない、というところです。飲む人を否定せず、飲まない人を特別扱いもしない。同じテーブルで、それぞれが自分の一杯を選んでいい。私は平日はノンアルビール、週末だけ少量のワインという暮らしを3年続けていますが、この「選んでいい」という感覚こそが、続いている理由だと思っています。
要点: スマドリは節制の話ではなく、選択肢の話です。
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ある金曜の夜、同じテーブルで違うグラスが並んだ日
定義だけ読んでもピンとこない、という方のために、私が「これがスマドリなのかも」と思った夜の話から始めます。
乾杯の直前に、みんなが少し迷った
数年前の金曜日、仕事仲間5人で集まった夜のことです。席に着いて、メニューを開いて、ドリンクの注文になった瞬間、空気がほんの少し固くなりました。ひとりは運転があるから飲めない。ひとりは最近あまりお酒に強くなくなった。私は当時、ノンアルに切り替えたばかりで、何を頼むか決めかねていました。
昔の私なら「とりあえず生で」と言って、その場を流していたと思います。でもその日は、ひとりが「私、ノンアルにするね」と先に言ってくれたんですよね。そこから、「じゃあ私も」「僕は軽めのを一杯だけ」と、拍子抜けするくらい自然に注文が分かれました。
乾杯の音は、グラスの中身が違っても同じだった
運ばれてきたのは、生ビール、ノンアルビール、ジンジャーのモクテル、低アルコールのレモンサワー。中身はばらばらなのに、乾杯の音は同じでした。むしろ「誰が何を飲んでいるか」を気にしなくていい分、話題が料理と近況にまっすぐ向かって、あの夜はいつもより会話が長く続いた気がします。
飲まない人が気を遣わずにいられて、飲む人も遠慮せずにいられる。この状態を言葉にしたものが、スマートドリンキングなのだと後から知りました。
要点: 全員が同じものを飲まなくても、同じ時間を楽しめます。
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スマドリはなぜ生まれたのか:提唱の背景を数字で追う
ここからは、少しだけ真面目に背景を整理します。
「飲む人」と「飲まない人」がほぼ同じ規模で共存している
アサヒビールの公式ページによると、日本には飲酒者が約4,000万人、非飲酒者が約5,000万人おり、飲む人と飲まない人が共存する時代に合わせて構想されたと説明されています。合計の約9,000万人に対して、新しい商品や体験を提供していくことを目標に掲げています(アサヒビール「スマドリ」公式ページ)。
つまり「お酒を飲まない人」は、少数派の特殊なケースではなく、飲む人と並ぶ規模の大きな層だということです。飲食店でも家飲みでも、飲まない人の選択肢が貧弱なままだと、それだけで大勢の人が置き去りになります。
2020年ごろから提唱され、2022年に専門会社も設立された
広告業界の専門メディアは、アサヒビールがこの考え方を2020年から推進してきたと伝えています(アドタイ「アサヒビール『スマドリ』」)。また、公式ページには、アサヒビールと電通デジタルの合弁でスマドリ株式会社が2022年に設立された旨が記載されています。企業が商品の外側に「飲み方の文化」を作ろうとしている、というのがこの取り組みの面白いところです。
数字で見る企業側の目標
同じ公式ページには、アルコール分3.5%以下の低アルコール商品とノンアルコール商品を合わせた販売容量の構成比を、2025年までに20%にするという目標が示されています。さらに、パッケージへの純アルコール量(g)の表記は2023年末に完了したとされています。
お酒の売り手が「飲まない選択」を後押しする側に回っている、というのは、ひと昔前では想像しにくい光景でした。
要点: 背景にあるのは、飲む人と飲まない人がほぼ同規模で暮らしているという現実です。
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スマドリの土台になる「純アルコール量」の数え方
スマドリを実践するうえで、いちばん役に立つ道具が「純アルコール量」という物差しです。ここは厚生労働省の資料で裏を取ります。
計算式はたった1つ
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、純アルコール量の求め方が「摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)」と示されています。例として、ビール500ml(5%)は 500×0.05×0.8=20g と説明されています(厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」)。
この式を使うと、同じ500mlでも度数が変わればグラム数がぐっと変わることが見えてきます。下の図は、この式で私が計算した500mlあたりの純アルコール量です。
5% ビール系 = 20g3.5% 低アルコール = 14g1% = 4g0.5% = 2g0.00% = 0g
図: 500mlあたりの純アルコール量(厚労省ガイドラインの式で算出)
5%のビール500mlが20gという数字は、ガイドラインに載っている値です。3.5%・1%・0.5%は同じ式に当てはめて私が計算した数字で、たとえば3.5%なら 500×0.035×0.8=14g になります。
「選ぶ」ための基準が、数字で見えてくる
同じガイドラインには、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として、1日あたりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上という目安が示されています。こうして数字を知っておくと、「今夜はどこまでにしよう」という判断が感覚ではなく、自分の基準として持てるようになります。
もうひとつ、私がハッとしたのが、アルコールを分解する酵素が弱く、飲むと顔が赤くなるフラッシング反応を起こす人が日本では41%程度いると言われている、という記述です。体質は本当に人それぞれで、同じ量でも同じように飲める前提は成り立たない。だからこそ「体質に合わせて選ぶ」というスマドリの考え方は、理にかなっているのだと感じました。
要点: 純アルコール量は、自分の一杯を自分で決めるための共通の物差しです。
今夜からできる、スマドリの選び方5ステップ
考え方がわかっても、実際の場面で何をすればいいかが曖昧だと続きません。私が3年やってみて、実際に使っている手順を5つにまとめます。
ステップ1〜3:飲む前に決めておく
- 今夜の予定を思い浮かべます。運転の有無、翌朝の予定、体調を先に確認します。
- 最初の一杯を「ノンアル」か「低アルコール」から選びます。最初の一杯が軽いと、その後の選択も落ち着いたものになりやすいんですよね。
- 缶やメニューの度数と量を見て、純アルコール量を頭の中でざっくり計算します。式は先ほどの1つだけなので、慣れると数秒でできます。
ステップ4〜5:飲みながら調整する
- 2杯目以降は、お酒とノンアルを交互に挟んでも構いません。お酒と同じ量の水やノンアルを挟むだけでも、ペースはずいぶん落ち着きます。
- 一週間の中に、飲まない日を意図的に作ります。同じガイドラインには「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける」という趣旨の記載があります。
私の場合は、平日の夜はノンアルビールが定番で、週末だけ少量のワインを楽しんでいます。ノンアルビールは種類が本当に増えたので、その日の気分で選べるのが楽しいところです。
要点: 決め手は、飲む前に「今夜はどう選ぶか」を一度だけ考えることです。
平日ノンアル派3年目の私が、スマドリで変わったこと
ここからは私自身の話です。あくまで一個人の体験なので、誰にでも当てはまるものではないことは先にお伝えしておきます。
「飲まない」を説明しなくてよくなった
いちばん大きな変化は、飲み会で「なんで飲まないの?」という質問に身構えなくなったことです。以前は、体調が悪いとか運転があるとか、もっともらしい理由を用意していました。今は「今日はノンアルの気分です」で済みます。理由を用意しなくていいだけで、席に着くまでの気持ちがずいぶん軽くなりました。
飲まない夜のごはんが、主役になった
ノンアルが定番になってから、料理との組み合わせを考えるのが楽しくなりました。柑橘の香りが立つノンアルビールには、揚げ物や餃子がよく合います。ハーブを効かせたモクテルには、白身魚のカルパッチョを合わせたくなります。お酒の代わりに飲む、という発想から、料理を引き立てる一杯を選ぶ、という発想に変わったんですよね。
週末のワインが、ちゃんとごちそうになった
平日を飲まずに過ごしていると、週末の一杯が特別になります。少量でも満足度が高いのは、ダラダラと飲まなくなったからだと感じています。これは私の個人的な感覚ですが、飲む量を減らしたというより、飲む一杯を選ぶようになった、という言い方のほうがしっくりきます。
要点: スマドリの効果は、数字よりも「選んでいる」という納得感に出るのかもしれません。
スマドリが当てはまらない場面と、よくある誤解
良い面ばかり書くと、かえって信用できなくなるので、注意点も整理しておきます。
「低アルコールなら量を気にしなくていい」わけではありません
3.5%以下の低アルコール飲料は飲みやすい反面、缶を重ねれば純アルコール量はすぐに積み上がります。先ほどの式で言えば、3.5%の500mlは14gです。2缶で28gになり、女性のリスク目安として示されている1日20g以上を超えます。度数が低くても、量と本数で判断する癖をつけたいところです。
「ノンアル」の表示にも幅があります
ノンアルコール飲料と一口に言っても、アルコール分0.00%の商品もあれば、1%未満の商品もあります。運転や妊娠中、服薬中、アルコールに弱い体質の方などは、商品ごとの表示や公式の案内を必ず確認してください。私は商品名を特定して「これなら安全」と言い切ることはしませんし、個別の判断は医師や薬剤師に相談するのが確実です。
スマドリは「飲酒を勧める」考え方ではありません
厚生労働省のガイドラインには、飲酒する習慣がない方などに対して無理に飲酒を勧めることは避けるべき、という趣旨の記載があります。スマドリの「選べる」は、飲まない選択が最初から尊重されている、という意味を含んでいます。飲まない人に一杯を強いるのは、スマートではありません。
依存や治療が必要な場合は、専門家へ
お酒のやめ方や減らし方に困っている、体調に不安があるという場合は、この記事の内容ではなく、かかりつけ医や専門の相談窓口に頼ってください。私はノンアルを楽しむ立場の人間で、重い話や治療の話に踏み込む立場ではありません。
要点: 度数の低さも、ノンアルの表示も、確認したうえで選ぶのがスマドリです。
明日から試せる、スマドリの小さな習慣
最後に、ハードルの低い順に3つ、習慣の提案をします。
缶の裏を1回だけ読んでみる
まず、次に買う缶やボトルの度数と容量を見て、純アルコール量を計算してみてください。日本の主要メーカーではパッケージへの純アルコール量表記が進んでいると公式ページで説明されているので、答え合わせもしやすくなっています。
最初の一杯だけノンアルにしてみる
乾杯の一杯をノンアルにするだけで、その夜の流れが変わります。私は最初の一杯をノンアルビールにして、そこから続けるかどうかを決めるスタイルです。結果的にそのままノンアルで通す夜が増えました。
「今夜の一杯」を家族や友人と一緒に選ぶ
飲む人と飲まない人が一緒にいる場面ほど、選び方の相談が盛り上がります。「今日は何にする?」と聞き合うだけで、飲まない人が気を遣う空気が薄れていきます。
要点: 小さく試して、合わなければやめる。その気軽さもスマドリの魅力です。
よくある質問
スマートドリンキングとは、簡単に言うと何ですか?
飲む人も飲まない人も、体質や気分やシーンに合わせて、お酒かノンアルコールドリンクを自分で選べる飲み方のことです。アサヒビールが提唱している考え方で、公式の説明はこちらにあります。
スマドリはお酒をやめる運動ですか?
いいえ、やめることを求める考え方ではありません。飲みたい時は飲む、飲めない時や飲まないと決めた時は飲まない、そのどちらも自分で選べる状態を指しています。
純アルコール量はどうやって計算しますか?
摂取量(ml)×度数÷100×0.8で求められます。ビール500ml(5%)なら20gです。詳しくは厚生労働省のガイドラインをご覧ください。
ノンアルコール飲料なら、いつでもどこでも飲んで大丈夫ですか?
商品によってアルコール分の表示が異なるため、運転、妊娠中、服薬中などの場面では、商品ごとの表示と公式の案内を確認してください。判断に迷う場合は、医師や薬剤師にご相談ください。
スマドリを始めるなら、まず何からすればいいですか?
次に買う缶の裏で、度数と容量を確認して純アルコール量を計算してみるのが、いちばん手軽です。そのうえで、乾杯の一杯だけノンアルにするなど、無理のない一歩から試してみてください。
今夜の一杯、あなたはどれを選びますか。私のおすすめは、まず冷蔵庫のノンアルビールを、いつもより少しいいグラスに注ぐことです。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。

