結論から書きます。なり方は、期限を決めて記録を始めるだけです
ソバキュリアンになるのに、まわりへの宣言も、強い決意も必要ありません。まず期限を区切ること、次にその期間の記録を残すこと、この2つだけで成立します。ソバキュリアンは「一生飲まない」と決めた人のことではなく、飲むかどうかを毎回自分で選び直す人のことだからです。だから最初にやるのは飲まないことではなく、選び直すための材料を集めることになります。今夜できるのは、ノートかスマホのメモを1ページ開くところまでです。
私は断酒担当のアオです。40代の女性で、30代後半に自分の飲み方を見直して、無理のないペースで5年になりました。振り返ってみると、最初の1か月で私を支えてくれたのは意志ではなく、毎晩3行だけ書いていたノートでした。この記事では、私がそのときに知っていたら楽だったことを、手順の形にして置いていきます。
要点: なり方の中身は、期限を区切ることと記録を残すことの2つに集約されます。
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ソバキュリアンとは何か、ここだけ最短で確認します
禁酒や断酒との違いは、目的地があるかどうかです
言葉の整理から入ります。禁酒や断酒は「飲まない」というゴールを先に決める考え方です。対してソバキュリアン、英語では sober curious は、飲むか飲まないかをその都度、意識的に選ぶ姿勢を指します。curious は好奇心の curious なので、直訳すれば「シラフに興味がある」です。ゴールではなく態度の名前だなって思うんです。
ここが実践面ではかなり大きい違いになります。ゴール型は、一度飲んだ時点で失敗になります。態度型は、飲んだ日も「今日は選んで飲んだ」と記録して終わりです。失敗という概念がそもそも存在しません。だから続きやすいのです。
言葉の出どころは2018年の1冊の本です
sober curious という言い方が広く知られるようになったのは、ライターの Ruby Warrington が2018年に同名の書籍を出したことがきっかけとされています。本人はアルコール依存ではないけれど、人づきあいを楽にするためや感情をやり過ごすために飲んでいる自分に気づいた、というところから始まった言葉です。
私はこの出発点が好きです。誰かに問題を指摘されたからではなく、自分で違和感に気づいたところから始まっている。日本語で言えば「別に困ってはいないけれど、このままでいいのかな」という感覚に、ちゃんと名前がついたということです。
日本語では「ソバキュリ」と短く呼ばれます
日本ではソバーキュリアス、ソバキュリアン、ソバキュリといった複数の呼び方が並んで使われています。どれも同じものを指していて、優劣はありません。この記事ではソバキュリアンで統一します。
要点: ソバキュリアンは状態ではなく態度の名前で、飲んだ日も失敗にはなりません。
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始める前に知っておくと折れにくい、3つの事実
1か月の休止は、半年後まで効いているという報告があります
始める前にひとつ安心してほしいことがあります。期間を区切ってお酒を休むことの効果は、終わった瞬間に消えるわけではありません。イギリスの Dry January という1月の禁酒チャレンジの参加者857人を対象に、開始時・1か月後・6か月後の3回を追跡した研究(de Visser RO ほか, 2016, PMID 26690637)では、参加そのものが6か月後の飲酒量の減少と、誘われたときに断れる自信の向上に結びついていたと報告されています。
やりきれなくても、反動はほとんど起きていません
私がこの研究でいちばん大事だと思っているのはここです。同じ研究(de Visser RO ほか, 2016)は、完走できたかどうかにかかわらず6か月後に変化が見られたこと、そして自発的に休んだあとに飲酒量が増えたと報告した人はごくわずかだったことを示しています。つまり、やってみて途中でやめても、その前より悪くなる可能性は低いということです。
始める前に「失敗したら反動で余計に飲んでしまうのではないか」と心配する人は多いと思います。私もそうでした。少なくともこの研究の範囲では、その心配は当たっていませんでした。
ただし、はっきりした恩恵は完走した人に偏ります
正直な部分も書いておきます。1,192人の参加者と1,549人の一般の飲酒者を比べた前向きコホート研究(de Visser RO, Piper R, 2020, PMID 32391879)では、健康感やウェルビーイング、飲酒のコントロール感の改善は完走した人に見られ、参加していない一般の飲酒者には見られなかったと報告されています。同じ研究は、参加者がもともと一般の飲酒者より飲む量が多く、自分の飲酒量を気にしている層だったことも示しています。
だから「とりあえず気楽に」だけでは足りません。完走を助ける仕掛けが要ります。それが次に書く3ステップと12のチェック項目です。
要点: 期限を区切った休止は半年後まで効き、反動は起きにくい。ただし恩恵は完走側に寄ります。
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今夜からの3ステップ
- 期間を決めて、紙に書く。 おすすめは30日です。長すぎず、体感の変化が出るには足りる長さだからです。カレンダーアプリに終了日を入れて、通知を設定してください。決めるのは開始日ではなく終了日のほうです。
- 記録の型を3行に固定する。 私が使っていたのは「今日飲んだか/睡眠の体感/気分」の3行だけでした。項目を増やすと3日で止まります。ノートでもメモアプリでも構いませんが、開く場所は1か所に決めてください。
- 飲む代わりに手を動かす行動を1つだけ決める。 私は炭酸水をグラスに注ぐことにしました。飲まないと決めるより、別の動作を先に置くほうが圧倒的に楽です。ここで決めるのは気持ちではなく、手順です。
この3つで今夜は終わりです。買い物に行く必要も、家のお酒を捨てる必要もありません。捨てるという行為はドラマチックですが、あとで「あれを捨てたのに」という気持ちを生むので、私はおすすめしていません。
30日をどう配分して考えるか
1〜7日目 : 記録の型をつくる8〜14日目 : 夜の時間の使い道を探す15〜21日目 : 自己採点をしない週22〜30日目 : 振り返る材料を集める
図: 30日を4区間で考えると、つらい時期に評価を持ち込まずに済みます
この配分は私の運用上の目安で、研究に裏づけられた区切りではありません。それでも意味があるのは、3週目に評価をしないと先に決めておけるからです。私の場合、最初の30日でいちばんぐらついたのは17日目でした。理由は特になく、ただ飽きたという感覚に近いものでした。あそこで自己採点を始めていたら、たぶん続いていません。
要点: 終了日を決め、記録を3行に固定し、代わりの動作を1つ用意する。今夜はここまでで十分です。
最初の1か月を支える12のチェック項目
30日のあいだ、週に一度だけこのリストを見返してください。全部やる必要はなく、当てはまらない項目は飛ばして構いません。
- 終了日をカレンダーに入れて、通知が設定されている
- 記録は3行以内で、書く場所が1か所に決まっている
- 飲む代わりの動作が具体的に1つ決まっている
- 今週の予定に、誘われそうな場面があるかを確認した
- 断るときの一言を、事前に1パターン用意してある
- 家の中で、以前に飲んでいた場所とは違う席に座ってみた
- 夜に飲みたくなる時刻を、記録から把握している
- 飲まなかった日の翌朝の体感を、ひとことでも書き残している
- 眠りが浅い日があっても、それを失敗と数えないと決めている
- 飲んでしまった日も記録を止めず、選んで飲んだと書いている
- 3週間たった時点で自分を評価しない、と先に決めている
- 30日目に何を振り返るかを、開始時点で1つ決めてある
12項目のうち、私が5年やってみて気づいたのは、下の3つほど効くということです。特に「3週間たった時点で自分を評価しない」は先に決めておかないと、ちょうどつらい時期に自己採点が始まってしまいます。
断るときの一言は、事前に用意しておくと本当に楽です
私が使っていたのは「今日は車なので」ではなく、「今月ちょっと試していることがあって」でした。理由を作らず、事実を短く言うだけです。深く聞かれたら「体調の実験みたいなものです」と返していました。この一言を用意していなかった最初の週、私は誘いを断りきれずに2回飲んでいます。準備の有無で結果が変わった、数少ないはっきりした例でした。
車を理由にする言い方をすすめない理由も書いておきます。嘘が混ざると、次に同じ場に呼ばれたときに前回の設定を覚えていなければならなくなるからです。事実だけを短く言えば、覚えておくことが何もありません。5年たった今も、私が使う言い方はほとんど変わっていません。
記録を「書けなかった日」の扱いを先に決めておく
12項目のうち、抜けやすいのが記録の継続です。書けない日は必ず来ます。私が決めていたのは、翌日にまとめて2日ぶん書いてよい、それ以上さかのぼらない、という運用でした。3日空いたら、その3日は空欄のまま次に進みます。空欄を埋めようとした月は、だいたいノートごと止まりました。完璧に埋まった記録より、抜けがあるまま続いている記録のほうが価値があるなって思うんです。
要点: 週に一度リストを見返すだけで十分です。特に断り方の準備と、評価時期を先に決めておくことが効きます。
5年やってみて、変わったことと変わらなかったこと
30日目に私が書いたのは、体調のことではありませんでした
最初の30日を終えた日、ノートに私が書いたのは「夜が長い」の一行でした。体が軽いとか肌がどうとか、そういうことではなかったんです。夜9時から寝るまでの時間が、以前よりはっきり長く感じられた。それが最初のご褒美でした。
振り返ってみると、この「時間が増えた」という感覚が、その後の5年をいちばん支えてくれました。健康のためという動機は、3か月もすると薄れます。でも夜の時間が増えるという実利は、毎日届くので薄れませんでした。
5年たった今も、飲みたくなる日はあります
正直に書きます。5年たっても、疲れた日に「飲めたら楽だろうな」と思う瞬間は消えていません。消えることを目指していた時期もありましたが、今はそれでいいと思っています。思ったことをノートに書いて、炭酸水を注いで、それで通り過ぎます。
変わったのは、その感覚が来たときに慌てなくなったことです。5年前の私は、飲みたいと思った自分に驚いて、その驚きで消耗していました。今は「来たな」と書いて終わりです。
記録は今も3行のままです
項目を増やしたことは何度もあります。体重、睡眠時間、歩数。どれも半年ももちませんでした。結局いま残っているのは、最初の30日に使っていた3行と同じ形です。続いた理由は内容が良かったからではなく、3行なら疲れた日でも書けたからだなって思うんです。
要点: 続いた理由は健康の実感ではなく、夜の時間が増えたという毎日届く実利でした。
当てはまらない場合と、気をつけてほしいこと
自分で量を決められない状態が続いている場合は別の相談先が要ります
ここまで書いた方法は、日常生活に大きな支障が出ていない人が、自分の飲み方を試しに見直してみるためのものです。飲む量や場面を自分で決められない状態が続いている場合、急に飲酒をやめたときに手のふるえや強い不快感が出る場合は、自己流で進めず医療機関に相談してください。厚生労働省の健康に配慮した飲酒に関するガイドラインも、毎日飲み続けることが依存の発症につながる可能性に触れています。
体質によって、そもそも入り口が違います
同じガイドラインによれば、アルコールの分解酵素のはたらきが弱く、飲酒で顔が赤くなるフラッシング反応を起こす人は日本では41%程度いるとされています。もともと体質的に飲めない人にとっては、ソバキュリアンは「試す」ものではなく最初から日常です。その場合に必要なのは休止の期間ではなく、飲まない前提の場を増やすことのほうだと思います。
30日が長すぎると感じるなら、7日でも構いません
30日という数字に絶対的な根拠があるわけではありません。前に挙げた研究が1か月のチャレンジを扱っていたからそう書いているだけです。7日でも、平日だけでも、始まりとしては十分に成立します。大事なのは長さより、終わりの日が決まっていることです。
要点: 量を自分で決められない状態が続く場合は自己流にせず相談を。期間の長さより終了日の有無が効きます。
よくある質問
ソバキュリアンになるには、まわりに宣言したほうがいいですか
宣言は必須ではありません。私は5年のあいだ、家族以外にはほとんど話していませんでした。宣言すると、周囲が監視役や励まし役に回ってしまい、続けるかどうかが人間関係の話になります。伝えるとしても「今月ちょっと試している」程度の言い方が、いちばん摩擦が少ないと感じています。
途中で飲んでしまったら、最初からやり直しですか
やり直す必要はありません。ソバキュリアンは飲まないことをゴールに置いていないので、飲んだ日は記録に「選んで飲んだ」と書いて、翌日から続けるだけです。期間を区切ったチャレンジを扱った研究でも、完走できなかった人を含めて6か月後に飲酒量の減少が見られたと報告されています(de Visser RO ほか, 2016, PMID 26690637)。
どのくらいで体調の変化を感じられますか
個人差が大きく、一律には言えません。私の場合、最初に感じたのは体調ではなく夜の時間が長くなった感覚で、それが最初の2週間でした。眠りの深さや朝の起きやすさを挙げる人もいますが、期待した変化が来ないことを失敗と受け取らないほうが続きます。あらかじめ、変化が来なくても30日は続けると決めておくのがおすすめです。
記録は何を書けばいいですか
飲んだかどうか、睡眠の体感、その日の気分の3行で十分です。数値を入れる必要もありません。私は5年間ずっとこの形のままですが、項目を増やしたときはいつも半年以内に止まりました。続く記録は、内容が良いものではなく、疲れた日でも書ける短さのものです。
飲み会が多い時期に始めても大丈夫ですか
大丈夫ですが、断るときの一言だけは先に用意してください。私が最初の週に2回飲んでしまったのは、その準備をしていなかったからです。事前に短い言い方を1つ決めておけば、その場で考える必要がなくなります。どうしても場数が多い時期なら、開始を2週間ずらす判断も現実的です。
要点: 宣言も、やり直しも不要です。必要なのは終了日と、断り方の一言だけです。
今夜やることは1つだけです。スマホのメモを開いて、30日後の日付を書いてください。その下に、今日飲んだかどうかを一言。それだけで、もう始まっています。明日の夜に同じページを開けるかどうかが、この先の全部を決めます。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。

