結論から言うと、市販のノンアルコールビールと同じものを家庭で作ることは現実的ではありません。ただし「ビールの代わりに食卓に置ける、ビールっぽい一杯」なら、麦茶と炭酸水を使った作り方で近づけることができます。そして、酵母で発酵させてアルコールを作る方向に進むと、酒税法の問題が出てきます。この記事では、作れる範囲と作ってはいけない範囲を先にはっきりさせて、そのうえで私が試している手順をお伝えします。

ノンアルコールビールは家で作れるのか、先に答えを整理します

「ノンアルコールビールの作り方」で検索する方が知りたいことは、たぶん二つに分かれます。一つは、普通のビールを造ってからアルコールを抜く、あの工程を家庭で再現できるのかということ。もう一つは、もっと気軽に、手元の材料でビールのような飲み物を作れないかということです。

前者の答えは「家庭では難しい」です。理由は次の章で詳しく書きますが、アルコールを抜く工程には専用の設備が要りますし、そもそもビールを一度造る段階で酒税法の話が絡みます。後者の答えは「味を近づけることならできる」です。苦味、香ばしさ、炭酸の刺激、泡という四つの要素を、身近な材料で分担させていきます。

この記事で扱う「ノンアルコールビール」の範囲

市販品の多くは、ビールテイスト飲料と呼ばれる種類です。ビールの味に似せた飲み物という意味で、中身はビールそのものとは限りません。この記事で言う「作る」は、麦茶や炭酸水など、すでにアルコールを含まない材料を混ぜて、ビールに近い飲み心地を目指すことを指します。

私の立ち位置

私は第一子の出産をきっかけにお酒を飲まない暮らしに移って、今は2年ほどになります。完全にやめると決めたわけではなく、その夜に「選ばない」という感覚でここまで来ました。だから、これから書くのは「ビールを我慢する工夫」ではなく、「ビールっぽい一杯を自分で組み立てる遊び」としての作り方です。

要点: 本物の再現は難しく、味に近づける遊びなら家庭でできます。

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なぜ本物のノンアルコールビールは家庭で作れないのか

市販のビールテイスト飲料の作り方は、大きく二つに分かれるといわれています。ビールを一度造ってからアルコールを取り除く方法と、最初からアルコールを作らずに、麦芽やホップなどの原料で風味を組み立てる方法です。どちらも、家庭のキッチンでそのまま真似できる工程ではありません。

発酵させると、アルコールができてしまう

ビールの味の核になる香りや深みは、酵母の発酵から生まれる部分が大きいです。ところが、酵母が糖を食べればアルコールができます。つまり、本物に近づけようと発酵に手を出すほど、アルコールを含む飲み物になる可能性が高くなります。家庭で「できるだけ少ないアルコールで止めよう」と調整するのは、温度や時間の管理が難しく、結果の予測もつきません。

国税庁が示している線引き

ここで押さえておきたいのが、酒税法上の「酒類」の定義です。国税庁のQ&Aでは、酒税法上の酒類はアルコール分1度以上の飲料とされています。また、酒類を製造するには税務署長の免許が必要だと説明されています。出典は国税庁のこちらのページです。国税庁 お酒についてのQ&A(ビールキットを使った自家製ビール)

同じ国税庁のQ&Aには、製造したものがアルコール分1度以上になる場合は酒類製造免許が必要だと書かれています。さらに、ビールの製造免許は年間の製造見込数量が60キロリットルに達しない場合は取得できないとも示されています。個人が家庭で免許を取ってビールを造るという道は、事実上ないということです。

できあがりのアルコール分

酒税法上の扱い

家庭での製造

1度未満

酒類には当たらない

混ぜるだけの飲み物なら問題になりにくい

1度以上

酒類に当たる

製造免許が必要で、免許なしの製造は禁止

図: アルコール分と酒税法上の扱い(出典: 国税庁 お酒についてのQ&A)

無免許で造ったときの重さ

同じ国税庁のページには、免許を受けずに酒類を製造した場合の罰則として、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があること、製造した酒類や原料、器具が没収されることも書かれています。ビールキットのように「アルコール分が1度未満になる方法」が説明書に書かれた商品は、その注意書きに沿って使うことが前提です。説明書の範囲を外れて、より本格的にしようと発酵を進めるのは避けてください。

要点: 発酵に踏み込むとアルコール分1度以上になりうるため、家庭での本物の再現は避けます。

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家庭で近づけられる範囲はどこまでか

では、混ぜるだけで作れる範囲では、何をどこまで再現できるのでしょうか。私はビールの魅力を、苦味・香ばしさ・炭酸・泡・喉ごしの五つに分けて考えています。このうち、家庭で比較的近づけやすいのは香ばしさと炭酸と苦味の一部です。

香ばしさは麦茶が担当します

ビールの黄金色と香ばしい香りは、焙煎した麦の風味に近いところがあります。市販の麦茶(大麦を焙煎したもの)は、この部分を手軽に補ってくれます。ティーバッグで濃いめに出して、しっかり冷やしておくと、ベースとして使いやすくなります。

炭酸の刺激は無糖の炭酸水に任せます

喉ごしの要は炭酸です。糖分を含まない炭酸水を選ぶと、甘さが前に出ず、ビールの後味に近づけやすくなります。強炭酸のタイプを冷蔵庫でよく冷やしておくのがコツです。

苦味は、ホップ系のお茶やレモンの皮で足します

ビールの苦味はホップが生みます。ホップを使ったお茶は市販されていることがあり、そうした商品を使えば苦味の方向に寄せられます。手に入りにくいときは、レモンやグレープフルーツの皮のわずかな苦味でも、味の輪郭は出ます。ここは好みの調整幅が広いところです。

再現しにくいもの

泡の持続と、発酵由来の複雑な香りは、混ぜるだけではほぼ再現できません。グラスを冷やしておく、注ぐ高さを変えるといった工夫で見た目は近づきますが、本物の泡の細かさとは別物です。ここは割り切って、別の楽しみとして受け止めるのがよいと感じています。

要点: 香ばしさ・炭酸・苦味は近づけられ、泡と発酵の香りは割り切ります。

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麦茶と炭酸で作るビール風ドリンクの手順

ここからは、私が試している具体的な作り方です。難しい道具は要りません。飲み物の割合は好みで変えてよいので、まず基本形から始めてみてください。

材料の目安

  • 濃いめに出して冷やした麦茶:コップの半分
  • 無糖の強炭酸水:コップの半分
  • ホップ系のお茶をごく少量、またはレモンの皮を少し
  • よく冷やしたグラス

作り方の手順

  1. グラスを冷凍庫や氷水で冷やしておきます。
  2. 麦茶を、ふだんより濃いめに出します。ティーバッグを長めに浸けると香ばしさが出ます。
  3. 麦茶を冷蔵庫で十分に冷やします。ぬるいと炭酸が抜けて、ビール風になりません。
  4. グラスを少し傾けて、麦茶を先に注ぎます。
  5. 炭酸水を、麦茶の上からゆっくり注ぎます。勢いよく注ぐと泡立ちますが、すぐに消えます。
  6. ホップ系のお茶を使うときは、別に濃く出して冷やしたものを、ほんの少し足します。
  7. 最後に、レモンの皮を軽くひねって香りだけを移します。

失敗しやすいポイント

濃くしすぎると、ただの苦い麦茶になります。炭酸を足しすぎると、味が薄くなります。私は最初、苦味を欲張ってお茶を入れすぎて、後味が重くなってしまいました。足す量は少しずつ、が基本です。

食卓に合わせる

揚げ物や焼き鳥のように、油や塩気のあるおかずと合わせると、炭酸の爽快感がよく働きます。逆にお酒を飲んでいたころの「最初の一杯」の位置に置いてみると、気持ちの切り替えにもなりました。

要点: 麦茶を濃く出して冷やし、炭酸水で割り、苦味は足しすぎません。

作る前に確認したい法律とラベルの話

ここまでの作り方は、混ぜるだけで、発酵を伴いません。それでも、材料の選び方で気をつけたい点がいくつかあります。

材料は「アルコールを含まないもの」を選びます

麦茶、炭酸水、レモンは、通常アルコールを含みません。一方で、「麦芽飲料」と書かれた商品の中には、ビール風の味を作るためのキットや、発酵を前提にしたものもあります。使う前に、裏面の説明で発酵が必要なのかどうかを確認してください。

発酵が前提の商品は別物です

「手造り麦芽飲料用」と書かれた缶入りのキットは、説明書に従ってアルコール分が1度未満になるようにつくる商品だと、国税庁のQ&Aで説明されています。出典は先ほどの国税庁のQ&Aと同じです。国税庁 お酒についてのQ&A こうした商品を使う場合は、説明書の指定から外れないことが前提です。

梅酒は別の扱いです

ちなみに、家庭で梅酒を作ることについては、国税庁が別のQ&Aで考え方を示しています。国税庁 お酒についてのQ&A(自宅での梅酒づくり) ただし、ビールのように酵母の発酵でアルコールを作る場合とは区別して考える必要があります。ここで言いたいのは、「お酒ができるかもしれない」と感じたら、まず国税庁の案内や税務署で確認する、という慎重さです。

市販品のラベルを読む習慣も役立ちます

作る側から離れて、買う側の話も一つ。市販のビールテイスト飲料は、商品によってアルコール分の表示が違います。0.00%と書かれたものと、1%未満の微アルコールのものでは、中身が別物です。酒類の定義が「アルコール分1度以上」であることは、国税庁のQ&Aの冒頭に書かれています。国税庁 お酒についてのQ&A(酒類の定義) 子どもや妊娠・授乳中の家族がいる家庭では、表示を見て選ぶ習慣が安心につながります。

要点: 発酵を伴わない混ぜる作り方を守り、迷ったら国税庁の案内に当たります。

子育て中の我が家で、ビール風ドリンクを続けている理由

ここは私の実感の話です。子どもが生まれてから、夜の時間が大きく変わりました。授乳期には自然とお酒から離れ、そのまま「選んで飲まない」という今のスタイルに落ち着いています。

「乾杯の形」がほしい夜があります

お酒は飲まなくても、夫が缶を開けるときに、自分の手元にも何かがほしい夜があります。ジュースだと少し違う。炭酸のついた、苦味のある、冷たい一杯がいい。そのときに、麦茶ベースのビール風ドリンクはちょうどよい位置に収まりました。

続けやすさは「手間の少なさ」で決まります

最初は凝って、ホップ系のお茶も毎回用意していました。でも、続かなかったのです。今は、麦茶を作り置きして、炭酸水を冷やしておき、レモンの皮だけ足すという簡単な形に落ち着きました。手間が少ないほど、平日にも気軽に作れます。

市販品との使い分け

市販のビールテイスト飲料には、やはり麦芽やホップを使った本格的な味わいがあります。外食や特別な夜は市販品、家で気軽に飲みたい夜は自作、という使い分けが私には合っていました。どちらが上ということではなく、気分で選べる選択肢が増えたという感覚です。

要点: 自作は気軽な夜用、市販品は特別な夜用と、気分で選び分けます。

こんな人には向きません、注意したい点

最後に、この作り方が合わない場面もまとめておきます。

本格的な味を求める人

ビールの深いコクや、きめ細かい泡を期待すると、がっかりするかもしれません。そのときは、素直に市販のビールテイスト飲料を選んだほうが満足度は高いです。

発酵や醸造の方向に進みたくなった人

手作りの飲み物を楽しむうちに、「もっとビールに近づけたい」と発酵に興味が出る方もいると思います。その場合は、アルコール分が1度以上になる可能性と、免許が必要になる点を、必ず先に確認してください。ここまで書いたとおり、国税庁のQ&Aが判断の拠り所になります。

体調や持病、服薬のある人

飲み物の材料に体調や薬との関係が気になる場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してください。この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断を示すものではありません。

小さな子どもに出すとき

見た目がビールそっくりの飲み物は、子どもが「大人の飲み物」と混同することがあります。家庭では、グラスや置き場所を変えて区別するなど、家族でルールを決めておくと安心です。

要点: 本格派や発酵志向の人は市販品や公式の案内を頼り、体調面は専門家に相談します。

よくある質問

ノンアルコールビールを自宅で本格的に作ることはできますか?

家庭での本格的な製造はおすすめできません。発酵させるとアルコール分が1度以上になる可能性があり、その場合は酒類製造の免許が必要になります。免許なしの製造は禁止されていて、国税庁のQ&Aに罰則も示されています。国税庁 お酒についてのQ&A

麦茶と炭酸水だけで作ったものは、お酒になりますか?

麦茶と炭酸水を混ぜるだけで、発酵を伴わなければ、アルコールを新しく作る工程はありません。酒税法上の酒類は、アルコール分1度以上の飲料と定義されています。国税庁 お酒についてのQ&A(酒類の定義)

ビールキットを使っても問題ありませんか?

説明書に書かれた、アルコール分が1度未満になる方法を守って使うことが前提です。説明書から外れて発酵を進めると、免許の問題が出ることがあります。迷ったら所轄の税務署に確認してください。

市販のノンアルコールビールとの違いは何ですか?

市販品は、麦芽やホップなどの原料を使って風味を組み立てたり、アルコールを取り除いたりして作られています。家庭の麦茶ベースの飲み物は、そこまでの複雑な味わいにはならず、手軽さと気軽さが持ち味です。

作り置きはできますか?

麦茶は冷蔵庫で保存できますが、炭酸水は混ぜると気が抜けるので、飲む直前に合わせるのがおすすめです。ホップ系のお茶などを足した場合も、その日のうちに飲み切るのが安心です。

今夜は、麦茶を濃いめに出して冷やすところから始めてみてください。次の週末には、お気に入りの市販品と並べて飲み比べてみるのも楽しいと思います。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。