妊娠中にノンアルを飲んでいいのか、先に答えを書きます
結論から言います。アルコール分0.00%と明記された飲料について、メーカー各社は公式に「アルコールによる影響はない」と回答しています。たとえばアサヒビールはノンアルコール商品のFAQで、妊娠中や授乳期に飲用しても大丈夫かという問いに対し、アルコール分0.00%の炭酸飲料なので問題ないと答えています(アサヒビール ノンアルコール商品についてのFAQ)。ですから判断の分かれ目は「ノンアルかどうか」ではなく、缶に印刷されたアルコール分の数字が0.00%になっているかどうかです。ここだけは自分の目で確かめる必要があります。
なぜそんな回りくどい言い方になるかというと、いま売り場では0.00%の商品と0.5%の商品が同じ棚に並んでいるからなんですよね。私は平日はノンアルビール、週末だけ少量のワインという飲み方を3年続けていますが、この3年で0.5%前後の微アルコール商品はかなり増えました。見た目も缶のデザインもよく似ていて、パッと見では区別がつきません。
0.00% ノンアル酒税法上は清涼飲料0.5% 微アルコール酒類ではないがアルコールは入る5% 一般的なビール酒類酒税法では「アルコール分1度以上の飲料」が酒類。0.5%も1度未満なので酒類ではない出典: 国税庁「酒類の定義」
図: アルコール分の違い。法律上の区分と、体に入るアルコールの有無は別の話です。
ノンアルコールという言葉は0.00%を意味しません
ここが最大の落とし穴です。酒税法で酒類とされるのは、アルコール分1度以上の飲料です(国税庁 Q1 酒類の定義)。裏を返すと、アルコール分が1度未満であれば酒税法上の酒類には当たらず、清涼飲料として売れることになります。0.00%も0.5%も、この「1度未満」という同じ枠に入ります。
つまり法律の分類は、妊娠中に飲めるかどうかを判断する物差しにはならないのです。酒類でないことと、アルコールが入っていないことは、まったく別の話だからです。
だから見るべきは商品名ではなく数字です
商品名に「ノンアルコール」と書いてあっても、それは法律上の酒類ではないという意味にとどまります。判断の材料になるのは、缶や瓶の栄養成分表示のそばに小さく書かれた「アルコール分0.00%」という一行だけです。ここに0.5%と書いてあれば、それはアルコールが入った飲み物です。
要点: 法律上の区分ではなく、缶に書かれたアルコール分の数字で判断します。0.00%と0.5%は法律上は同じ枠でも中身が違います。
関連記事: ビールに近いノンアルビールを選ぶなら、製法から見極めると間違いない
公的な資料が妊娠中の飲酒をどう説明しているかを確認します
数字の判断基準がはっきりしたところで、そもそもなぜここまで慎重になるのかを、公的な情報で確かめておきます。ここを理解しておくと、売り場で迷ったときに自分で判断できるようになります。
胎児性アルコール・スペクトラム障害という言葉
厚生労働省が運営するe-ヘルスネットは、妊娠中の母親の飲酒が胎児や乳児に低体重、顔面を中心とする形態異常、脳障害などを引き起こす可能性があるとし、これらを胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)と呼んでいます(e-ヘルスネット 胎児性アルコール・スペクトラム障害)。同ページは、この障害には治療法がなく、唯一の対策は予防であると記載しています。
出生数1,000名あたりの発生数は1.06から113.22と、調査によって大きく異なると同ページは説明しています(e-ヘルスネット 胎児性アルコール・スペクトラム障害)。この幅の根拠として挙げられているのが、世界各国の調査を集めた2本の系統的レビューです(Lancet Glob Health 2017 PMID: 28089487、Alcohol Clin Exp Res 2016 PMID: 26727519)。幅が大きいのは調査手法の違いに加え、対象集団の飲酒状況の影響が大きいためと説明されています。
どこまでなら大丈夫という線引きは分かっていません
同じページには、飲酒量に比例してリスクも増える一方で、ここまでなら大丈夫という飲酒量のしきい値は分かっていない、と書かれています(e-ヘルスネット 胎児性アルコール・スペクトラム障害)。短期間でも大量の飲酒はリスクが高く、妊娠初期はよりリスクが高いとしたうえで、基本的には妊娠全期間を通して何らかの影響が出る可能性があるとしています。
「少しなら平気」という線が引けないからこそ、公的な情報は一貫して妊娠中の完全な断酒をすすめています。e-ヘルスネットの「女性の飲酒と健康」のページも、女性の飲酒が男性と異なる影響を持つことを解説しています(e-ヘルスネット 女性の飲酒と健康)。
日本の妊娠中飲酒率は下がり続けています
明るい数字もあります。e-ヘルスネットによると、日本の妊娠中の女性の飲酒率は18.1%(2000年)、8.7%(2010年)、4.3%(2013年)と減少傾向にあります(e-ヘルスネット 胎児性アルコール・スペクトラム障害)。同ページは0%を目標とした取り組みが今後も必要だとしています。
この10年ほどでノンアル飲料の選択肢が一気に広がったことと、この数字の動きは無関係ではないと私は思っています。飲まないという選択をしたときに、手に取れるものが水とお茶しかなかった時代とは状況がまるで違うからです。
要点: 安全な量の線引きは分かっていないため、公的情報は妊娠中の完全な断酒をすすめています。だからこそ0.00%かどうかの確認が意味を持ちます。
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売り場で自分で判断する5つの手順
ここからは実務です。私が友人と売り場に立ったときに実際にやっている順番を、そのまま書きます。5つあります。
缶を手に取ってからの手順
- 正面のデザインではなく、缶の側面か裏面に回って表示を探します。アルコール分の記載はほぼ必ず裏か側面にあります。
- 「アルコール分0.00%」の表記を探します。小数点以下が2桁になっているかまで見ます。
- 「0.5%」「アルコール分0.5%未満」「微アルコール」「ローアルコール」の語が1つでもあれば、その商品は候補から外します。
- 原材料名を読みます。アルコールとは別に、後述するカフェインやハーブ抽出物などが気になる場合はここで確認します。
- 判断に迷う商品は買わずに、メーカーの公式サイトのFAQで商品名を調べます。各社とも商品ごとのアルコール分を公開しています。
微アルコールは別ジャンルとして扱います
0.5%前後の微アルコール飲料は、ここ数年でジャンルとして確立しました。ビールらしい香りと苦みを残せるという点で、よくできた商品だと思います。ただし妊娠中を想定した商品ではありません。手順3ではっきり外しておくのが、迷わないコツです。
飲食店では銘柄を確認します
外食のときは缶が見られません。メニューに「ノンアルコールビール」とだけ書かれている場合、実際の銘柄まではわかりません。店員さんに銘柄を聞いて、それが0.00%の商品かどうかを確認するのが確実です。聞きにくい雰囲気なら、ウーロン茶や炭酸水に切り替えるという判断でかまわないと思います。
要点: 缶の裏で0.00%を確認し、微アルコールの語があれば候補から外す。飲食店では銘柄を聞く。この3つで大半の場面は判断できます。
関連記事: ノンアルコールビール0.00%は運転してOK?0.5%表記との違いを法律から整理する
メーカーは公式FAQでどう答えているか
ここは各社の回答をそのまま読むのが早いです。同じ質問への答え方に、はっきりと差があります。
アサヒビールの回答
アサヒビールは、ノンアルコール商品のFAQで、妊娠中や授乳期に飲用しても大丈夫かという設問を立てています。回答は、アルコール分0.00%の炭酸飲料なので問題ない、というものです(アサヒビール ノンアルコール商品についてのFAQ)。同じページでは運転前やスポーツ時の飲用についても同様に答えています。
なお同社は、20歳未満の飲用について、法律上問題はないものの推奨はしない、本商品は20歳以上の飲用を想定して開発したと記載しています。ノンアル飲料が「アルコールの代替」という位置づけで設計されていることが、この一文からよくわかります。
サントリーの回答
サントリーはもう一歩踏み込んだ書き方をしています。ノンアルコール飲料はアルコール分0.00%のためアルコールによる影響はないとしたうえで、アルコール以外の原材料による体への影響は分かりかねるため、製品に記載されている原材料を確認し、心配な場合は医師に相談してほしいと案内しています(サントリーお客様センター FAQ)。
2社の回答から読み取れること
両社ともアルコールについての結論は同じです。違いは、アルコール以外の原材料にどこまで言及するかという点にあります。サントリーの書き方は、ノンアル飲料が水やお茶ではなく、香料やハーブ抽出物、甘味料などを組み合わせた加工飲料であるという事実を踏まえたものです。
この視点は覚えておいて損がありません。アルコールの心配が消えたあとに残る論点は、原材料と飲む量の話になるからです。
要点: アルコールについては各社とも0.00%なら影響なしと明言。ただしアルコール以外の原材料については、確認と相談をすすめる会社もあります。
アルコール以外で目を向けたい3つのポイント
0.00%だと確認できたあと、私が友人と一緒に見ていた点が3つあります。どれも体調や好みの話なので、正解は人によって変わります。
カフェインが入っている商品があります
ノンアルビール系の商品はカフェイン無添加のものが多いのですが、コーヒーテイストやコーラテイスト、一部のハーブ系ドリンクにはカフェインを含むものがあります。妊娠中のカフェイン摂取量について気にしている場合は、原材料表示とメーカーの成分一覧を確認するのが早いです。サントリーは自社のノンアルコール飲料の栄養成分一覧を公開しています(サントリー ノンアルコール飲料 栄養成分一覧)。
甘味と糖類の量は商品差が大きいです
ノンアルビール系は糖類ゼロをうたう商品が多い一方、カクテルテイストやワインテイストの商品には、しっかり甘いものがあります。アサヒビールは食品表示基準に基づき、100mlあたり5kcal未満をカロリーゼロ、100mlあたり糖類0.5g未満を糖類ゼロとしていると説明しています(アサヒビール ノンアルコール商品についてのFAQ)。表示の定義を知っておくと、ゼロという言葉に振り回されずに済みます。
ハーブやボタニカルの扱い
クラフト系のノンアルには、ジュニパーベリーやホップ、各種スパイスを効かせた商品があります。私はこの手の複雑な味が好きでよく買うのですが、妊娠中の友人に渡すときは原材料欄を一緒に読んで、判断は本人と、必要なら主治医に委ねるようにしていました。私が「大丈夫だよ」と言う立場にはないと思っているからです。
要点: 0.00%を確認したあとは、カフェイン・甘味・ハーブという3点が残ります。どれも原材料表示で確認できます。
私が妊娠中の友人と売り場に立った日のこと
ここからは私自身の話です。情報の裏づけとは別に、実際にどう動いたかを書いておきます。
去年の夏、妊娠中の友人を家に呼んでごはんを食べることになりました。私は平日ノンアルの生活をしていたので、冷蔵庫にはノンアルビールが何本か入っていました。それを出せばいいと軽く考えていたのですが、前の週にたまたま買っていたのが0.5%の微アルコール商品だったのです。缶を出す直前に裏を見て気づきました。
その日は近所のスーパーに買い足しに行きました。売り場で驚いたのは、0.00%と0.5%が同じ棚の同じ段に並んでいたことです。パッケージの雰囲気もよく似ていて、私が一度間違えたのも無理はないと思いました。結局、2人で缶を1本ずつ手に取っては裏返す、という作業を10分くらい続けました。
そのとき友人が言ったのが、「ネットで調べても、大丈夫と書いてある記事とやめたほうがいいと書いてある記事の両方が出てきて、どっちを信じればいいのか分からなかった」という言葉でした。実際、両方とも間違いではないのです。0.00%の話をしているか、0.5%を含めた話をしているかで、答えが変わるだけだからです。
その日から私は、友人にノンアルを渡すときは缶の裏を一緒に見るようにしています。「これは0.00%だよ」と口で言うより、数字を見てもらったほうが早いですし、次からは自分で選べるようになるからです。
要点: 0.00%と0.5%は同じ棚に並んでいます。情報が食い違って見えるのは、どちらの話をしているかが書かれていないためです。
当てはまらないケースと、よくある誤解
最後に、ここまでの話が素直に当てはまらない場面を挙げておきます。
海外製品は表記のルールが違います
輸入のノンアルコールビールやノンアルコールワインには、0.5%以下をノンアルコールと呼ぶ国の商品が含まれます。並行輸入品では日本語表示ラベルの記載を確認する必要があります。国内メーカーの0.00%表記と同じつもりで手に取ると、想定と違うことがあります。
授乳中についても各社は同じ答え方をしています
アサヒビールのFAQは妊娠中と授乳期をまとめて1つの設問にしており、どちらも0.00%の炭酸飲料なので問題ないと回答しています(アサヒビール ノンアルコール商品についてのFAQ)。サントリーも妊産婦と授乳中をまとめて回答しています(サントリーお客様センター FAQ)。ただしアルコール以外の原材料についての注意は妊娠中と同様です。
ノンアルを飲むとお酒が飲みたくなる、という話
これは人によります。ノンアルがあることで満足して過ごせる人もいれば、香りで逆に物足りなくなる人もいます。私自身は前者ですが、友人は後者に近く、途中から炭酸水とレモンに切り替えていました。合わないと感じたら、無理にノンアルを選ばなくていいと思います。選択肢はいくらでもあります。
「妊娠に気づく前に飲んでいた」場合
この点については、個別の状況によって話がまったく変わります。インターネットの記事で判断するのではなく、かかりつけの産婦人科で相談するのが適切です。この記事はその判断を代わりにするものではありません。
要点: 海外製品の表記、体質や好み、個別の経過。この3つは一般論では答えが出ません。表示の確認と専門家への相談を使い分けてください。
よくある質問
ノンアルコールビールなら妊娠中に飲んでいいのですか
商品によります。アルコール分0.00%と表示されている商品について、メーカーは公式に問題ないと回答しています(アサヒビール ノンアルコール商品についてのFAQ)。一方で「ノンアルコールビール」という呼び名の中には0.5%前後の微アルコール商品も含まれるため、商品名ではなく缶のアルコール分表示で確認してください。
0.00%と0.5%は、法律上どう違うのですか
法律上の扱いは同じです。酒税法で酒類とされるのはアルコール分1度以上の飲料なので(国税庁 Q1 酒類の定義)、0.00%も0.5%もどちらも酒類には当たりません。法律の区分は、アルコールが入っているかどうかを示すものではないという点が重要です。
缶のどこを見ればアルコール分がわかりますか
缶の側面か裏面です。原材料名や栄養成分表示のそばに「アルコール分0.00%」のように記載されています。正面のデザイン面には書かれていないことが多いので、必ず裏返して確認してください。表示が見当たらない場合は、メーカーの公式サイトで商品名を検索すると成分情報が公開されています。
妊娠中の飲酒には安全な量があるのですか
e-ヘルスネットは、ここまでなら大丈夫という飲酒量のしきい値は分かっていない、と記載しています(e-ヘルスネット 胎児性アルコール・スペクトラム障害)。飲酒量に比例してリスクが増えること、妊娠初期がよりリスクが高いことも同ページに書かれています。
ノンアル以外だと何を飲めばいいですか
炭酸水にレモンやライムを搾ったもの、冷たく淹れたルイボスティーや麦茶、果汁を炭酸で割ったものなど、選択肢はたくさんあります。「ビールらしさ」を求めない日は、こちらのほうが気楽です。グラスを普段より少し良いものに替えるだけで、飲み物の格が上がったように感じるので、私はよくその手を使っています。
きょうの帰り道、もし売り場の前で迷ったら、まず缶を裏返してみてください。数字を1つ確認するだけで、あとは好きな味を選ぶ時間になります。表示の読み方に慣れておくと、飲食店でも旅先でも同じ判断ができるようになりますよ。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。妊娠中の飲食に関する個別の判断は、かかりつけの医師にご相談ください。

