結論を先に書きます。やめるのではなく、週の枠を決めるところから始めてください
結論から書きます。毎日の晩酌をやめたいと思ったとき、最初にやるべきなのは今日から飲まないと決めることではありません。1週間に自分が入れてよい純アルコールの量を先に決め、それを7日に配分し直すことです。ゼロを目標にすると、守れなかった日に全部が崩れます。枠から配分に変えると、1日失敗しても週の中で調整できるので、設計そのものは生き残ります。私はこの順番に変えてから、ようやく1年続きました。
私は節酒担当のカイです。50代の男性で、きっかけは自慢できるものではありませんでした。健康診断でγ-GTPが基準値の2倍を超え、医師から減酒の指導を受けたのが出発点です。以前は帰宅してすぐ缶を開ける生活を15年ほど続けていましたが、今は飲まない日を週3日置き、飲む日は2杯までで運用しています。完全にやめてはいません。やめずに減らすという着地を選びました。
要点: 目標を「毎日をやめる」から「週の総量を決める」に置き換えると、失敗しても設計が生き残ります。
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火曜の夜7時、冷蔵庫の前で3分止まっていた話
あの夜、私は開けませんでした。そして翌日は開けました
去年の春、健診結果を受け取った週の火曜日のことです。仕事から戻り、いつもの手順で冷蔵庫の扉に手をかけました。その日は開けませんでした。数値を見た直後でしたし、正直に言えば少し怖かったからです。麦茶を注いで、風呂に入って、寝ました。
ところが水曜日、私は開けました。理由らしい理由はありません。会議が長引いて疲れていた、というくらいです。そして木曜も開けました。火曜の一晩は何の役にも立たなかったわけです。
このとき自分の中で何が起きていたかを、あとから振り返って言語化しました。私は「毎日やめる」という目標を立てたつもりでいて、実際には何も設計していなかったのです。決めたのは意思だけでした。意思は疲れた日に真っ先に消えます。
「やめたい」という言葉は、3つの別々の願いに分かれます
同じ「毎日の晩酌をやめたい」でも、中身を分解すると人によって違います。私の場合は3つが混ざっていました。
- 健康数値を戻したい(γ-GTPを下げたい)
- 飲まないと寝られない状態から抜け出したい
- 惰性で開けている自分が少し嫌だった
この3つは求めるゴールが違います。数値を戻したいなら、必要なのは週の総量を落とすことです。惰性を断ちたいなら、必要なのは行動の順番を変えることです。混ざったまま「やめる」とだけ決めると、どれにも効きません。まずは自分の「やめたい」がどれなのかを分けるところから始めてみると、打ち手がはっきりします。
私の出発点は、数値という動かせない現実でした
γ-GTPの話をもう少しします。この数値は、飲酒量に対して比較的素直に反応することが知られている項目のひとつです。私にとっては好都合でした。がんばりの手応えが数か月で目に見えるからです。逆に言えば、数値が動かないうちは何をやっても不安になります。だからこそ、最初に必要だったのは根性ではなく、数値と行動をつなぐ物差しでした。それが次に書く純アルコール量です。
要点: 「やめたい」の中身を健康・睡眠・惰性のどれなのかに分解すると、必要な打ち手が変わります。
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毎日をやめる作戦が真っ先に折れる、データ上の理由
日数はそう簡単に動かない、という結果があります
ここで数字の話をします。コクランの系統的レビュー(Kaner EF ほか, 2018, PMID 29476653)は、飲酒量が多い人への短時間の介入の効果を69研究・33,642人ぶん集めて検証しています。主要な解析では34研究・15,197人を対象に、介入を受けた人は1年後に週あたりの飲酒量が平均20g少なかった(95%信頼区間 -28 から -12)という中等度の質のエビデンスが示されました。
興味深いのはその先です。同じレビューでは、週あたりの飲酒日数の変化は平均マイナス0.13日(95%信頼区間 -0.23 から -0.04、11研究・5,469人)にとどまり、1回あたりの飲む濃さもほとんど変わらなかったと報告されています(Kaner EF ほか, 2018)。つまり週の総量は動くのに、飲む日数はほとんど動いていません。
私はこの結果を読んだとき、自分の失敗の理由が腑に落ちました。日数というのは、意識しただけでは動かない種類の変数なのです。動かしたいなら、そこだけを狙った仕組みが別に要ります。
習慣が固まるまでの日数には、想像以上の幅があります
もうひとつ、私を助けた研究があります。日常行動の習慣化を追跡した研究(Lally P ほか, 2010, doi:10.1002/ejsp.674)では、新しい行動が自動化の頭打ちに近づくまでの日数は中央値で66日、幅は18日から254日まで開いたと報告されています。21日で習慣になるという通説より、はるかに長く、はるかにばらつきます。
これを知ってから、私は3週間で自分を評価するのをやめました。2か月たっても楽にならないのは、失敗ではなく想定内だったのです。
ガイドラインもゼロを求めているわけではありません
厚生労働省の健康に配慮した飲酒に関するガイドラインは、健康に配慮した飲み方の工夫として、飲酒前や飲酒中に食事をとること、合間に水や炭酸水を飲むこと、そして一週間のうちに飲酒をしない日を設けることを挙げています。毎日飲み続けることを避け、一週間の純アルコール摂取量を減らすという考え方です。ここで示されているのは全面禁止ではなく、週単位の総量管理です。
同ガイドラインは、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として、1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上という国内の指標にも触れています。自分がどこに立っているかを知るための、数少ない共通のものさしです。
要点: 飲む日数は意識だけでは動きにくく、週の総量のほうが先に動きます。
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週の総量から逆算する。式はひとつだけ覚えれば足ります
純アルコール量の計算式
ガイドラインが示している式はこれだけです。純アルコール量(g)= 摂取量(ml)× アルコール度数(度数÷100)× 0.8。ビール500mlで度数5度なら、500 × 0.05 × 0.8 で20gになります。
ビール500ml(5度) = 20g日本酒1合180ml(15度) = 約22gワイン200ml(12度) = 約19gハイボール350ml(7度) = 約20g算出式の出典: 厚生労働省 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン
図: 同じ20g前後でも、飲料によって量の見え方がまったく違います
この図を作ってみて、私がいちばん驚いたのは、どれも似たような数字になることでした。缶を1本開けるか、日本酒を1合つけるかは、体にとってほぼ同じ意味だったのです。以前は「日本酒は少量だから軽い」と本気で思っていました。
週の枠を先に置き、あとから曜日に配る
やることは単純です。まず1週間に入れてよい純アルコール量を決めます。次にそれを7日に配ります。私の場合、最初の枠は週140gからスタートしました。これを飲む日4日に分けると1日35g、つまりビール500ml缶なら1本と少しです。
枠から配分に変えると、火曜に多めに飲んでしまった日でも、木曜を抜けば週としては帳尻が合います。「今日失敗したから今週はもう終わり」が消えるのが、この方式のいちばんの利点でした。
要点: 式をひとつ覚え、週の枠を決めて曜日に配ると、1日の失敗が全体を壊さなくなります。
私が実際に踏んだ7つの手順
- 2週間、何も変えずに記録だけ取る。銘柄・量・時刻の3項目だけで十分です。変えるのは記録が取れてからです。
- 週の合計を純アルコール量に換算する。ここで多くの人が現実を知ります。私は初回が週380gでした。
- 次の週の枠を、今の合計の8割に置く。いきなり半分にしないことが続けるコツです。
- 飲まない日を曜日で固定する。私は火曜と木曜と日曜にしました。気分で決めると必ず先送りされます。
- 帰宅後の最初の3分を別の行動で埋める。私は着替えたらすぐ炭酸水を注ぐ、と決めました。冷蔵庫の扉を開ける前に手を動かすのがポイントです。
- 買い方を変える。6缶パックをやめ、飲む日に1本ずつ買います。家に在庫がある限り、枠は必ず破られます。
- 4週ごとに枠を見直す。守れていれば1割下げ、守れていなければ枠のほうを現実に合わせます。
このうち、私にとって効き目が大きかったのは5番と6番でした。意思の力を使う場面を、夜7時の疲れた自分から、昼間の買い物中の自分へ移す作戦です。疲れていない時間帯の判断のほうが、はるかに当てになります。
つまずきやすいのは3番と4番です
3番でいきなり半分にしてしまう人が多いと感じています。私も最初は週380gを190gにすると宣言しました。その週は3日で破りました。8割という数字に根拠があるわけではありませんが、守れる幅から始めて4週ごとに下げるほうが、結果として3か月後の到達点は低くなります。守れなかった枠は設計ではなく願望です。
4番の曜日固定も、慣れるまでは抵抗があります。私の場合、最初に選んだのは月曜と水曜でした。ところが水曜は会食が入りやすく、2週続けて破りました。そこで実際の予定表を見返し、過去3か月で予定が入りにくかった曜日に変えたのが火曜と木曜と日曜です。理想の曜日ではなく、実績として空いている曜日を選んでください。ここを間違えると、意志の問題ではなく暦の問題で崩れます。
家族と同居している場合の調整
私は家族と暮らしているので、買い方を変えるときに一度だけ説明をしました。宣言ではなく共有です。やめると言うと、相手は監視する側に立たされてしまいます。私が伝えたのは「週の合計を減らしたいので、6缶パックを買うのをやめる」という運用の話だけでした。相手に役割を渡さないほうが、長い目で見て摩擦が少ないというのが1年やってみての実感です。
要点: 記録から始め、枠を8割ずつ下げ、判断の場面を疲れていない時間帯へ移すのが実務的です。
1年運用して、動いた数字と動かなかったもの
動いたのは週の合計と、朝の起き方でした
1年たった今の実測を書きます。週の合計は380gから130g前後に下がりました。飲む日は週4日から3日です。数字だけ見ると日数はあまり減っていません。先ほどのコクランの結果とほぼ同じ形で、私の場合も日数より総量のほうが素直に動きました。
体感で確実に変わったのは朝です。以前は目覚ましが鳴っても20分ほど起き上がれませんでしたが、今は鳴る前に目が開く日が週の半分を超えました。この変化は数値より先に来ました。
動かなかったのは、飲みたくなる時刻そのものです
正直に書くと、夕方6時から7時にかけて飲みたくなる感覚は1年たっても消えていません。消えることを期待していた時期もありましたが、今は消さなくてよいと考えています。来たら炭酸水を注ぐ、それだけの対応で通り過ぎるようになりました。感覚をなくすのではなく、感覚が来たときの行き先を用意しておくほうが現実的でした。
数値についても書いておきます。γ-GTPは下がりましたが、それが減酒だけの効果なのか、同時に始めた歩く習慣の効果なのかを私は切り分けられません。生活は実験室ではないので、そこは正直に「わからない」と書いておきます。
要点: 総量と朝の起き方は動き、飲みたくなる時刻そのものは消えませんでした。
当てはまらない場合と、気をつけてほしいこと
自己流の減酒が適さない場合があります
ここまで書いた方法は、あくまで健診で指摘を受けた程度の私が、医師の指導のもとで試したやり方です。飲酒をやめたり減らしたりしたときに強い体調の変化が出る場合や、飲む量を自分で決められない状態が続く場合は、自己流で進めるのではなく、医療機関や専門の相談窓口に相談してください。ガイドラインも、毎日飲み続けることが依存の発症につながる可能性に触れています。
体質によって、同じ量でも意味が変わります
同じガイドラインによれば、アルコールの分解酵素のはたらきが弱く、飲酒で顔が赤くなるフラッシング反応を起こす人は日本では41%程度いるとされています。この体質の人が飲み続けた場合、口の中のがんや食道がんなどのリスクが非常に高くなるというデータがあることにも触れられています。週の枠という考え方は便利ですが、枠の大きさは体質で変えるべきものです。
数値の改善を短期で判断しないでください
健診の数値には、変化が早い項目とそうでない項目があります。2週間で結果を求めると、たいてい失望して元に戻ります。前述のとおり習慣の自動化には数か月かかることもあるので、最初の評価は1か月後ではなく3か月後に置くくらいがちょうどよいと私は感じています。
要点: 体調の変化が強い場合や量を自分で決められない場合は、自己流にせず相談してください。
よくある質問
毎日の晩酌をやめたいのですが、いきなりゼロにしてもいいですか
体調に問題がなく、医師から特に止められていなければ、ゼロを試すこと自体は選択肢です。ただし戻ったときに全部が崩れやすいので、私は週の枠を決めて段階的に下げる方法をおすすめします。もし急にやめたときに動悸や強い不快感が出るようであれば、自己判断で続けず医療機関に相談してください。
飲まない日は週に何日つくればいいですか
決まった正解の日数は示されていません。厚生労働省のガイドラインが勧めているのは、一週間のうちに飲酒をしない日を設けて、毎日飲み続けることを避けるという考え方です。日数そのものより、週の純アルコール総量が下がっているかを見るほうが実務的だと私は考えています。
記録は何を書けばいいですか
銘柄、量、飲んだ時刻の3つだけで始めてください。項目を増やすと続きません。2週間ぶんたまったら純アルコール量に換算して合計を出します。この合計が、次の週の枠を決めるための唯一の材料になります。
ノンアルコール飲料に置き換えるのは有効ですか
置き換え自体は現実的な手段です。ガイドラインでも、アルコールの入っていない飲み物を選ぶことが、飲む量に占める純アルコールの量を減らす工夫として挙げられています。私は飲まない日の夜に炭酸水やノンアルを使っています。ただし置き換えたぶん飲む日の量が増えては意味がないので、週の合計で確認してください。
どのくらいで効果を実感できますか
体感として先に来やすいのは朝の起き方や寝つきで、健診の数値は遅れて動く傾向があります。習慣の自動化に数か月かかるという報告もあることを考えると、最初の評価は3か月後に置くのが現実的です。短期で判断しないことが、結果的にいちばんの近道でした。
要点: 日数より週の総量を見て、評価は3か月後に置くのが続けるうえで現実的です。
今夜からできることをひとつだけ挙げるなら、記録です。飲むのをやめる必要はありません。今日飲んだ銘柄と量と時刻を、スマホのメモに3行だけ残してみてください。2週間後にその合計を見たとき、次に何をすればいいかは自然に決まります。私もそこからでした。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。

