「30日チャレンジ」という言葉に、最初は身構えた

振り返ってみると、私が最初に「30日チャレンジ」という言葉を意識したのは、断酒を始めて数週間が経ったころでした。当時の私は、日々の飲み方を少しずつ見直し始めていた段階で、「30日間、お酒を飲まない」という目標そのものがすごく遠く感じていたんです。

「30日」という数字を聞くと、どうしても"全部うまくやり遂げなければいけない"という感覚が生まれてしまう。今思えば、それが一番の落とし穴でした。チャレンジを完璧にこなすことにフォーカスしすぎて、そもそも何のために始めるのかを、後回しにしていたんです。

5年やってみて気づいたのは、チャレンジを「始める」段階で、ルールより先に決めておくべきことがある、ということ。その話を今日は丁寧に書いてみようと思います。

最初にノートへ書いたのは、ルールではなく「問い」だった

「自分に何を見せたいか」を先に言葉にする

私が断酒を始めるにあたって、一番最初にノートへ書いたのは「飲まない30日間のルール」ではありませんでした。書いたのは、たった一行の問いかけです。

「この30日間で、自分の何を知りたいんだろう。」

これだけ。たったこれだけなんですが、この一行を書いておいたことが、後になって何度も私を助けてくれました。飲みたい気持ちが出てきたとき、この問いを見返すと、「あ、私は今自分の身体の変化を確かめたかったんだ」と思い出せる。ゴールへの距離ではなく、自分の好奇心へ戻ってこれるんです。

「なんとなく始める」と3日目に崩れる理由

チャレンジが続かなかった経験のある方に多いのが、「なんとなくの勢いで始めた」ケースだなって思うんです。勢いは大切ですが、それだけだと3日目あたりに急に「なんで私こんなことしてるんだろう」という感覚に襲われます。これは意志が弱いのではなく、「問い」を持たずに走り出してしまったサインです。

問いを持っていると、1日目も10日目も、立ち戻る場所がある。私のノートには今も当時の「問い」が残っていますが、読み返すたびに、あの頃の自分がどれだけ自分の身体に好奇心を持っていたかがわかって、すごく愛おしいんですよね。

30日間を支えた「記録の仕方」

点数も評価もつけない。ただ「事実」を書く

30日チャレンジを続けるうえで、ノートの使い方は本当に大切でした。私が意識したのは、「できた/できなかった」の評価を書かないこと。その代わりに書いていたのは、「今日の身体の状態」と「今日の気分を一言」だけです。

たとえば、「朝、いつもより早く目が覚めた。気分は少し落ち着いている」というように。これを毎日続けると、10日目、20日目と積み重なったとき、自分でも気づかなかった変化が浮かび上がってくるんです。

評価をつけないのは、「7日目に飲み会があって少し揺れた」という日も、同じトーンで書けるようにするためです。揺れた日を「失敗」として記録すると、そこで止まってしまいやすい。揺れた事実を書くだけなら、翌日も続けられる。この違いは、思った以上に大きかったです。

週に一度だけ、「問い」に戻る時間を作る

毎日の記録に加えて、週に一度だけ最初に書いた「問い」を読み返す時間を作っていました。土曜の朝、コーヒーを淹れながら、ノートをめくって最初のページへ。これだけで、30日間のペース感が全然変わります。

「あ、まだ自分の知りたいことは見えていないな」と思えば、そこからまた丁寧に過ごせる。「10日間で、これだけ変化を感じられた」と気づけば、次の10日間が楽しみになる。チャレンジを30という数字ではなく、自分の観察期間として扱えるようになると、終わりが怖くなくなります。

「飲まない」ではなく「感じる」に視点を置く

5年やってみて気づいたのは、長く続くチャレンジには共通点があるということ。それは、「飲まないことを目的にしていない」という点です。

飲まないことを目的にすると、飲みたい気持ちが出るたびに「負けそうになっている自分」と戦う構図になってしまいます。でも「自分の変化を観察する」ことを目的にすると、飲みたい気持ちそのものも「今日の状態」として記録できる。戦わなくていいんです。

私が30日チャレンジを始めた当初、最も驚いたのは「飲みたいと感じる時間帯がかなり決まっている」と気づいたことでした。夕方の18時前後と、仕事が一段落した夜の21時ごろ。この発見は、チャレンジを「乗り越える」のではなく「知る」ものに変えてくれました。

飲みたいと感じる時間帯がわかれば、その時間に別の小さなルーティンを置くことができます。私の場合は、18時台に少し温かいものを飲む習慣を作りました。それだけで、夕方の揺れ方がずいぶん変わっていきました。

30日後に待っていたのは「次の問い」だった

30日間が終わったとき、私は「やり遂げた達成感」よりも、「もっと知りたい」という感覚のほうが強かったのを覚えています。身体のこと、自分の気分のこと、時間の使い方のこと——30日は、答えが出る期間ではなく、次の問いが生まれる期間だったんだなって思うんです。

だから今、これから30日チャレンジを始めようとしている方に伝えたいのは、「完璧に終わらせなくていい」ということです。最初の一行に「自分の何を知りたいか」を書いて、毎日の身体と気分をフラットに記録して、週に一度だけ最初のページへ戻る。それだけで十分な始め方だと思っています。

振り返ってみると、私の断酒5年は、あの最初の30日間の「問い」から続いているんです。大げさな決意も、完璧なルールも、なくてよかった。ノート一冊と、一行の問いかけ。それが、私の30日チャレンジの本当の始まりでした。

※本記事は一般情報であり、医療的助言・診断・治療の推奨を目的としたものではありません。身体に気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。