「目の奥がじーんと重い」は、お酒のせいだったのかもしれない

振り返ってみると、30代後半のころの私は毎晩「目の奥がじーんと重たい感覚」を当たり前のものとして受け入れていました。デスクワークのせいだろう、年齢のせいだろう、と。ノートには「眼精疲労ひどい」「目薬を2本使い切った」という書き込みが何度も出てきます。

断酒をはじめて数か月が経ったとき、ふと気づいたんです。「あれ、目の奥の重さが薄れてきた気がする」と。スクリーンタイムも変わっていない。仕事量も同じ。変えたのは夜にお酒を選ばなくなったこと、それだけでした。

5年やってみて気づいたのは、目の疲れって「目そのものの問題」だけじゃないんだなってこと。睡眠の質と、脳の休まり方が、目の奥のだるさに深くつながっていると私は感じています。

お酒と睡眠の「深さ」の関係をノートで追いかけた

飲んでいたころの夜明け前の目覚め

当時のノートをめくると、「3時ごろ目が覚めた」「眠れたのに疲れてる」という記録が繰り返し登場します。飲んだ夜は確かにすんなり眠れる感覚があったのですが、夜中に目が覚めてしまったり、朝起きたときに「寝た気がしない」と感じたりすることが多かった。

アルコールは入眠を促す一方で、眠りの後半にかけてノンレム睡眠(深い眠り)の質を下げることがあると一般に知られています。身体がアルコールを代謝しようとする夜中に、睡眠が浅い状態になりやすいのです。私のノートの記録も、そのパターンと重なっていました。

断酒後、「夢を覚えている朝」が増えた

断酒して半年ほど経ったころから、夢をよく覚えている朝が増えてきました。レム睡眠がしっかり来ている感覚です。「今日は夢をちゃんと見た」とノートに書いた日が続くようになって、それが私には睡眠が整ってきたサインに感じられました。

そして朝起きたときの目の感じが違う。飲んでいたころの「まだ目が覚めていない」というぼんやり感ではなく、目の奥がすっきりしている朝が増えてきたんです。これは正直、予想していなかった変化でした。

脳が夜に「洗われる」感覚——グリンパティック系という考え方

睡眠中に脳内を洗浄する仕組みがある

5年やってみて気づいたのは、睡眠の深さと「頭のすっきり感」がここまでつながっているのかということです。これを調べていたとき、「グリンパティック系」という概念を知りました。睡眠中に脳脊髄液が脳内を循環し、日中に蓄積した老廃物を洗い流す仕組みのことで、深い睡眠中にとくに活発に働くとされています。

この仕組みについては、Nedergaard らのグループがマウスを用いた研究でその概要を示し、科学誌 Science に掲載されています(Xie et al., Science, 2013, doi:10.1126/science.1241224)。ヒトへの直接的な応用にはまだ研究の蓄積が必要ですが、「深く眠ることが脳にとって大切」という方向性は多くの専門家が支持しています。

「目の奥の重さ」は脳疲労のサインかもしれない

目の奥の疲れって、目だけの問題じゃないと今は思っています。脳が十分に休まっていないと、視覚情報の処理もスムーズにいかなくて、目の周りに疲れが滲み出てくるような感覚がある。断酒して睡眠が深くなってから、「目の奥がしっかり休めた朝」という感覚を初めて知れた気がします。

もちろん、眼精疲労には画面の見すぎや姿勢、ドライアイなどさまざまな要因があります。でも、睡眠の深さという視点を持つだけで、夜の過ごし方への意識がぐっと変わってくる。そう感じています。

5年続けて定着した「目と脳を休ませる夜の小さな習慣」

断酒という大きな選択と並行して、夜の過ごし方も少しずつ整えてきました。ノートに記録しながら「これが続く」「これは合わない」を積み重ねた結果、今の私に定着している習慣があります。

  • 就寝1時間前にスクリーンを遠ざける:お酒の代わりに夜の楽しみを探していたとき、つい動画を長く見てしまう時期がありました。でも画面の光が目の奥に残ると、眠りの入り口が遅くなる感じがして。今は本や手書きのノート時間に切り替えています。
  • 白湯かハーブティーで「夜の区切り」をつくる:以前はお酒が「今日おわり」の合図でした。それに代わる儀式として白湯や温かいハーブティーを選ぶようになりました。手のひらに温かいカップを包む感覚が、目の周りの力みをほぐしてくれる気がします。
  • ノートに今日の体調と気分を3行書く:断酒5年間ずっと続けている習慣です。書くことで頭の中が整理されて、眠るときに「考え事を持ち込まない」状態に近づけます。目の疲れの記録もここに書くことで、「最近続いているな」「何が変わったかな」と振り返れるのが気に入っています。
  • 眠る前に蒸しタオルを目に当てる:これは断酒2年目ごろから取り入れた習慣です。血行を促して目の奥のこわばりがほぐれる感じがあります。短い時間でも、「今日の目をねぎらう」という意味合いで続けています。

「整える夜」を積み重ねると、朝の自分が変わる

5年やってみて気づいたのは、夜の質が翌朝の「目の覚め方」を本当に左右するということです。深く眠れた朝は、目を開けた瞬間から視界が違う。重さや霞みがなくて、気持ちよく起き上がれる。これが毎朝の当たり前になっていることが、今の私には何よりうれしいことのひとつです。

お酒を選ばない夜は、何かを「がまんしている夜」ではなくて、脳と目が思い切り休める夜だなって思うんです。そのことに気づいてから、夜の時間の使い方が楽しくなりました。

目の奥がじーんと重たかったあのころの私に、「夜の選択を変えると、朝の目が変わるよ」と教えてあげたい。そんな気持ちで、今日もノートを開いています。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。目の疲れや睡眠の問題が続く場合は、医療機関にご相談ください。