結論から言うと、飲酒とがんの関係は一括りにはできず、少量から上がり始める部位と、ある程度の量を超えてから上がる部位に分かれます。毎日晩酌をしていた頃の私は「少しなら大丈夫」と思い込んでいましたが、断酒して3年、数字をきちんと読み直してみると、その理解は部位によって当たりもはずれもありました。この記事では、公的な資料の数字を整理し、自分で確認するときのチェック項目を並べます。

まず、日本人のデータは何を示しているか

日本人のデータをまとめた国立がん研究センターの「飲酒とがん」資料には、国内の複数のコホート研究を統合した解析の結果が並んでいます。たとえば閉経前の女性では、1日23g以上の飲酒で乳がんのリスク比が1.74(95%信頼区間1.25〜2.43)と報告されています。一方、膀胱がんでは明確な関連は認められないとされ、部位によって結果が違うことがここでも分かります。

国立がん研究センターが進める多目的コホート研究(JPHC Study)に、喫煙状況別に見た日本人中年男性のがん死亡と飲酒の関連という報告があります。解析対象は男性19,227名、追跡は10年間で、飲酒量と喫煙の有無で分けて、がん死亡のリスクを比べたものです。

この報告では、飲酒関連がんとされる口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓のがんで、喫煙の有無にかかわらず、週1回以上飲む人は基準よりリスクが高いという結果が示されています。一方で、飲酒をしない人でもリスクが高く見える場面があり、報告自身が「もともと飲んでいてやめた人が含まれる」点に注意が必要だとしています。

「飲まない人が高い」の読み方

この点は誤解されやすいところです。飲酒をしない群には、病気などでやめた人が混じっている可能性があり、単純に「飲まない人のほうが危ない」とは読めません。数字を見るときは、誰が比較の対象になっているかを必ず確認します。

要点: コホート研究の数字は、比較の相手と、集団の中身を確認してから読みます。

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厚生労働省の表で見る、部位ごとの違い

もっとも見やすいのは、厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(表1、7ページ)です。疾病ごとに、リスクが上がる飲酒量が純アルコール量で示されています。

部位

男性

女性

胃がん

0g超で上昇

週150g(日20g)

大腸がん

週150g(日20g)

週150g(日20g)

食道がん

0g超で上昇

データなし

肝がん

週450g(日60g)

週150g(日20g)

乳がん

データなし

週100g(日14g)

図: 飲酒量とがんリスク上昇の関係(出典: 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」表1より抜粋)

表の見方を間違えないでください。「0g超で上昇」は、少量でも飲めばリスクが上がる傾向が示されているという意味です。それ以外の数字は、その量からリスクの上昇が確認された目安で、それ以下なら安全だという保証ではありません。

純アルコール量に直すと

純アルコール量は、摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8で計算できます(式は厚生労働省のガイドライン4ページ)。ビール500ml(5%)なら20gなので、女性の大腸がんや肝がんの目安である日20gは、ビール中ビン1本ほどにあたります。

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体質という、もう一つの要素

同じ厚生労働省のガイドラインには、飲酒でフラッシング反応(顔が赤くなる反応)を起こす人が日本では約41%いると言われている、という記述があります(3ページ)。お酒に弱い体質の人は、少量でも負担が大きくなる可能性があります。

数字に自分をあてはめるときの注意

表の数字は集団の傾向であり、個人の運命ではありません。体質、喫煙、家族歴など、数字に表れない要素も重なります。心配なときは、数字だけで判断せず、健診や医師の診察を受けてください。

自分で確認できるチェック項目

ここからは、実際に私が自分の飲酒を見直したときのチェック項目です。

  • 週に飲む純アルコール量を、毎日の記録から合計して出す
  • 1日の量が、表にある目安(女性なら14g、20g)を超える日が何日あるか数える
  • 一度に60g以上飲む日がないか確認する
  • 顔が赤くなる体質かどうかを振り返る
  • 喫煙の有無を、飲酒とあわせて見直す

60gという数字

ガイドラインは、1回の飲酒機会で純アルコール摂取量60g以上を一時多量飲酒とし、外傷のリスクを高めるため避けるべきとしています(6ページ)。これはがんとは別の観点ですが、記録の中で最初に確認してほしい項目です。

要点: 週の合計、1日の量、体質、喫煙。この4つを同じ表の上で確認します。

断酒3年の私が、数字から受け取ったこと

私が表を読んで感じたのは、「少量なら安全」という言い方が、部位によっては当てはまらないということです。ただ、それは怖がらせるためではなく、選ぶための情報です。

減らすという選択、やめるという選択

毎日晩酌をしていた頃は、週の合計を出したことがありませんでした。記録をつけて初めて、思っていた以上に積み上がっていたと気づきました。数字にすることで、感覚とのずれが見えたのです。

量を減らせば、表の中のリスクの感じ方も変わります。どこまで減らすか、やめるか。私は元々毎日飲んでいたので、完全にやめるほうが続けやすいと判断しました。人によっては、週の合計を決めて減らすほうが合うはずです。

よくある質問

少量なら飲んでもがんリスクは上がりませんか

ガイドラインの表では、胃がんや食道がんの男性で「0g超で上昇」とされています。ただし、部位や性別によって違い、個人差もあります。

週の合計が目安以下なら安心ですか

目安以下であっても、リスクがゼロになるわけではありません。表の数字は、リスクの上昇が確認された目安です。

検診は受けたほうがよいですか

飲酒の有無にかかわらず、定期的な健診やがん検診は大切です。自治体の案内を確認してください。私も断酒後に、健診の結果を毎年ノートに貼って、飲んでいた頃との違いを見比べています。数字の変化は体調の目安のひとつになりますが、結果の解釈は医師に確認するようにしています。

今夜、記録の1行目から

まず今週の飲んだ量を、純アルコール量に直して書き出してみてください。数字が見えると、次に何を選ぶかが具体的になります。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。