結論から言うと、「少量ならむしろ体にいい」という説は、最近の研究ではかなり慎重に見られるようになっています(Zhao et al. 2023 JAMA Network Open)。一方で、「ゼロでなければダメ」と言い切れるわけでもなく、研究から見えてくるのは「量が増えるほどリスクが上がる」という素直な傾向です。この記事では、大規模な2つの研究の結論をできるだけ平たく訳し、そのうえで、週100gという線を自分の飲酒ログと突き合わせる5つの確認項目をまとめます。
自分は30代の男性で、Apple Watchとアプリで飲酒量を記録し、週4日は飲まない、飲むのは週末の2日だけという運用をしています。数値で測ると、体感と実際の量がかなりずれることが分かったので、データ好きの目線で書きます。
まず、「適量」という言葉の前提をそろえる
話を進める前に、単位を確認します。この記事での量は、すべて純アルコール量(g)です。
純アルコール量は、お酒の量×度数×0.8
厚生労働省のガイドラインでは、純アルコール量(g)は、摂取量(mL)×アルコール濃度(度数÷100)×0.8で求めるとされています。ビール500mL(5%)なら20gです(厚生労働省 ガイドライン)。つまり、週100gは、ビールの中びん換算で週に5本分になります。
国の目安は、1日あたりで示されている
同じガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める量が、1日あたり男性40g以上、女性20g以上とされています。ただし、これは個人の許容量ではなく、疾病によってはもっと少ない量でもリスクが上がるという注記がついています(厚生労働省 ガイドライン)。
要点: 量は純アルコール量で考えます。ビール中びん1本が約20gです。
関連記事: 日本の飲酒率の推移と統計の読み方。リスク量を飲む人は男性が横ばい、女性は増加
約60万人の分析が示した「週100g」の線
2018年に医学誌ランセットに載った研究は、19の高所得国の83の研究から、約60万人の飲酒者のデータをまとめて分析したものです。
死亡リスクが最も低かったのは、週100g前後以下
この分析では、全死亡のリスクが最も低かったのは、週およそ100g以下でした。40歳時点の平均余命は、週100gを超えて200g以下の人で約6か月、200gを超えて350g以下で1〜2年、350gを超える人で4〜5年短くなると推定されています(PubMed 29676281)。
読むときに気をつけること
この研究の対象は、すでに飲んでいる人です。「飲まない人と比べてどうか」を直接示した研究ではない点には注意が必要です。そのため、「週100gまでなら安心」ではなく、「ここを超えると差がはっきり出てくる」という目安として受け取るのがよさそうです。
要点: 週100g前後を超えると、余命の差が出てくる。ただしこれは「安全ライン」ではありません。
関連記事: 毎日飲む人と週に数回の人でリスクはどう違うのか、英国30万人超のデータを読む
107の研究をまとめた分析は、何を言ったか
もう一つ、2023年に出た大規模なまとめ分析です。107のコホート研究、483万人以上、死亡42万人以上を統合しています。
低量の飲酒に「守る効果」は見つからなかった
1日1.3〜24.0gの低量の飲酒は、生涯飲まない人と比べて、全死亡の相対リスクが0.93で、統計的に有意ではありませんでした。つまり、守る効果があるとは言えなかったということです(Zhao et al. 2023 JAMA Network Open)。
「以前飲んでいた人」が混ざると、飲む人が健康に見える
著者らは、基準の「飲まない人」に、病気などで以前にやめた人が混ざると、飲む人のほうが健康に見えるゆがみが生じることを指摘しています。また、女性では飲酒者のリスクが生涯飲まない人より有意に高く(相対リスク1.22)、男性より低い量からリスクが上がる傾向も示されました(Zhao et al. 2023 JAMA Network Open)。
資料 | 対象 | 読み取れること |
|---|---|---|
Wood et al. 2018 | 約60万人の飲酒者 | 週100g前後以下で死亡リスクが最小 |
Zhao et al. 2023 | 107研究・483万人超 | 低量飲酒の明確な保護効果は見られない |
厚生労働省ガイドライン | 国内の指針 | 1日あたり男性40g・女性20g以上でリスク上昇 |
図: 3つの資料の比較(各出典の記載をもとに筆者整理)
要点: 低量飲酒に守る効果があるとは言えません。比較対象の作り方で結果が変わる点にも注意します。
自分のログで確かめる5つの確認項目
研究の数字は集団の話です。自分の話にするには、記録が要ります。次の5つを順に確認してみてください。
- 1週間の純アルコール量の合計は、何gか(量×度数×0.8で計算する)。
- その合計は、週100gを超えているか。
- 1日の最大量は、男性40g・女性20gの目安を超えた日があるか。
- 1回で60g以上の「一時多量飲酒」にあたる日がなかったか。
- 飲まない日は、週に何日あったか。
自分の場合
ログを取ると、感覚では「週に2日、控えめ」のつもりが、週末の2日で合計100g近くに達していた週がありました。数値で測ると、2日で飲む量が集中していたのです。そこで、土曜と日曜の上限を先に決め、飲む量を分散させました。
要点: 5つの確認で、週の合計と偏りが見えます。感覚より数字で見るほうが正確です。
研究の読み方で気をつけたいこと
- 観察研究は、因果関係を直接証明するものではない。
- 集団の平均は、個人にそのまま当てはまらない。
- 持病や服薬のある人、妊娠中の人は、別の基準で考える必要がある。
自分は医療者ではないので、体調に不安があるときは、数字より先に医師への相談を優先してください。
よくある質問
週100g以下なら、飲んでも安全ですか?
安全とは言い切れません。研究が示したのは、死亡リスクが最も低かった範囲であり、安全を保証する線ではありません。疾病によっては、少ない量でもリスクが上がるとガイドラインにも書かれています。
赤ワインは体にいいと聞きましたが?
低量飲酒に守る効果が見つからなかったという分析もあります。お酒の種類より、純アルコール量で考えるほうが、判断は確実です。
女性は、男性より少なくするべきですか?
ガイドラインでは、女性の目安が1日20g以上と、男性より低く示されています。体質や状況には個人差があるので、迷ったら医師に相談してください。
ログは何で取ればいいですか?
アプリでも手帳でも構いません。大切なのは、飲んだ量と度数を書いて、純アルコール量に直すことです。
今週のログを、5つの確認項目に当てはめてみませんか。数字にした瞬間に、感覚のずれが見えてきます。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。

