「あのお腹の不快感」は、何だったんだろう

振り返ってみると、30代後半に飲み方を見直す前の私は、慢性的なお腹の違和感を「体質だから仕方ない」と思い込んでいました。朝起きると下腹部がぱんぱんに張っていて、午前中ずっとガスが抜けない。便通も、出そうで出ない日が週に何日もある。「これが普通の私のお腹」だと、なんとなく受け入れていたんです。

5年やってみて気づいたのは、あの不快感のかなりの部分が、アルコールによって腸が慢性的に刺激を受け続けていたことと無関係ではなかったかもしれない、ということ。もちろん体質や食事など他の要因もありますが、飲まない日々を積み重ねてから「お腹ってこんなに静かにできるんだ」と知ったときの感覚は、今でも鮮明に覚えています。

今回は、飲んでいた頃と今の腸の状態を、私自身のノートの記録を振り返りながら対比してみようと思います。「どちらが正しい」という話ではなく、腸がどう変わり得るのかを知るヒントとして読んでもらえたら嬉しいです。

飲んでいた頃の腸:いつも「ざわざわ」していた

便通のリズムが読めなかった

飲んでいた頃の便通は、一言で言うと「予測不能」でした。飲んだ翌日は緩くなりがち、少し間が空くと今度はぎゅっと詰まる感じ。週単位でみるとどちらの方向にも乱れていて、自分の腸のリズムというものが、まったく掴めていませんでした。

アルコールは腸の蠕動運動を乱す可能性があると一般的に言われています。飲んだ直後は腸が急かされるように動く一方で、翌日以降は逆に鈍くなる、という波を繰り返していたのかもしれません。当時の私のノートには「お腹ぐるぐる」「また張ってる」という記録が、週に3〜4回のペースで登場しています。

食欲のタイミングがずれていた

飲んだ翌朝は、胃がもたれていて朝食が入らない。でも昼前になると急に空腹感が強くなって、つい食べ過ぎてしまう。このパターンが繰り返されていました。腸の調子が乱れると食欲のリズムも崩れやすくなるとされていますが、私の場合まさにその通りで、「お腹が空いているのか空いていないのかわからない」という曖昧な状態が続いていました。

断酒5年後の腸:「静かさ」と「リズム」が戻ってきた

朝のお腹が、予測できるようになった

断酒して1年を過ぎた頃から、ノートの「お腹ぐるぐる」という記録が目に見えて減っていきました。今は、朝起きたときのお腹の感覚がほぼ一定で、「今日はこのくらいの空腹感だな」と自分で把握できます。これが当たり前のことのようで、飲んでいた頃には全然できなかったことなんです。

5年やってみて気づいたのは、腸の「静かさ」って安心感につながるということ。お腹がざわざわしていない朝は、気持ちも少し落ち着いていて、一日のスタートが変わります。腸と気分がこんなにつながっているとは、飲んでいた頃は考えたこともありませんでした。

発酵食品が「しっくりくる」感覚が増した

飲んでいた頃も味噌汁やヨーグルトは食べていましたが、腸の反応というか、「あ、これ体に届いてる感じがする」という感覚がほとんどありませんでした。断酒後しばらくして、納豆・キムチ・ぬか漬けといった発酵食品を食べると、翌朝のお腹の動きがよいな、と気づき始めたんです。腸内の状態が落ち着いてきたことで、食べたものへの「応答」を感じやすくなったのかもしれません。

これはあくまで私個人の体感で、効果を保証するものではありませんが、発酵食品との相性が変わったことはノートにも何度か書き留めています。

「断酒」と「飲みながら腸ケア」を比べるとどうなる?

ここで少し視点を変えて考えてみたいのが、「飲みながら腸活をがんばる」方向と「飲む量を減らして腸を落ち着かせる」方向の違いです。どちらが正解、ということはなくて、自分の生活スタイルや目標によって向き不向きがあると思っています。

飲みながら腸ケアをする場合

プロバイオティクスのサプリを飲んだり、食物繊維を意識したりと、腸に良い食生活を組み合わせながら飲酒習慣を続けるアプローチです。食事の質を底上げすることで腸内環境を支えようとする考え方で、「お酒は続けたいけれど腸も気になる」という方には入りやすい方法だと思います。ただ私の経験では、飲んだ翌日のお腹の乱れは、どれだけ食事に気をつけても一定程度リセットされてしまう感覚がありました。腸への土台的な刺激が残っている限り、ケアの効果が積み上がりにくいなと感じていたんです。

飲む量を減らす・飲まない日を増やす場合

こちらは腸が「落ち着く時間」を増やすイメージです。毎日ではなくても、飲まない日が続くことで腸の粘膜が回復したり、腸内フローラのバランスが少しずつ変わったりする可能性があるとされています。私の場合は断酒という選択でしたが、週に数日飲まない日をつくるだけでも、腸への刺激がリセットされるタイミングが生まれます。「完全にやめる」ことが目標でなくても、腸のためにお酒との距離を調整するという考え方は、取り入れやすいのではないかと思います。

5年間のノートから見えてきた、腸と暮らしのつながり

5年分のノートをめくると、お腹の調子が乱れている日は、睡眠の質が悪かった日や、ストレスが高かった日と重なっていることが多いのがわかります。腸は「第二の脳」とも呼ばれるくらい、精神状態や自律神経と深く結びついています。断酒は腸への直接的な刺激を減らすだけでなく、睡眠が改善されたり、朝の気分が安定してきたりと、腸を取り巻く環境ごとゆっくりと変えてくれた気がしています。

振り返ってみると、腸の変化は「劇的に何かが変わった」というより、じわじわと「普通の状態のハードルが下がっていった」感覚でした。不快のベースラインが静かになっていく、という表現が一番近いかもしれません。

もし今、朝のお腹の張りや便通の乱れが気になっているなら、食事や運動と並んで「お酒との関係」も一度見直してみる価値はあると思います。急に何かを変えなくても、飲まない日を少し増やしてみるだけで、腸が「あ、落ち着いた」と感じる瞬間が来るかもしれない。私はそれを、5年かけてゆっくり体で知りました。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。お腹や消化器系の症状が続く場合は、医療機関にご相談ください。