結論から言うと、30日の禁酒チャレンジは始める前に半分決まります
結論から言うと、禁酒チャレンジを30日続けられるかどうかは、意志の強さではなく、30日ぶんの行動をどれだけ先に決めておけるかで決まります。飲まないと決めるだけでは足りず、その時間に何をするかまで決めておく。私が2年かけて学んだのは、その一点でした。
この記事は、準備日から30日目までの行動を1日ずつチェックリストにしたものです。子どもを寝かしつけたあとの夜が、いちばん手持ち無沙汰になる時間でした。最初に30日チャレンジを試したとき、私は4日目の夜に「今日は特別だから」と自分に言い訳をして終わりました。うまくいったのは2回目で、違いは意志ではなく、その夜に何をするかを先に紙に書いていたかどうかでした。
この記事の使い方
- 準備日のチェックを済ませてから1日目を始めてください。ここを飛ばすと3日目で判断を迫られます
- 30日ぶんを暗記する必要はありません。週の初めにその週の項目だけ読めば足ります
- つまずいた日があっても、翌日から続ければ30日は数え直しになりません。連続記録ではなく合計で見ます
30日という期間の意味
30日は、体の変化が測れるようになる長さであり、同時に生活のリズムが1周する長さでもあります。仕事の繁忙期、週末、誰かの誕生日、飲み会。1か月あればだいたいの場面が1回は来るので、飲まない自分の立ち回りを一通り試せます。短すぎず、先が見えないほど長くもないという意味で、扱いやすい単位だと思います。
要点: 30日チャレンジの成否は、始める前に夜の過ごし方を決めておけるかどうかで大きく変わります。
関連記事: 禁酒1ヶ月、体に何が起きるのか。7つの変化チェックリスト
禁酒チャレンジとは何を指すのか
前提を揃えます。同じ言葉でも、想定している中身が人によってかなり違います。
期間を区切って飲まないという企画
禁酒チャレンジは、期間を決めて飲まない生活を試す取り組みのことです。海外ではDry Januaryという名前で1月の1か月間を飲まずに過ごす企画が広く知られていて、日本でも30日や1か月という単位でよく行われています。永久にやめると決める断酒とは違い、期限があることが特徴です。
断酒・節酒・ソバキュリとの違い
期限を決めて休むのが禁酒チャレンジ、量を減らして続けるのが節酒、やめ続けるのが断酒、飲む選択肢を持ったまま選んで飲まないのがソバーキュリアスです。それぞれの違いは断酒・禁酒・節酒・ソバキュリ、4つの違いを整理するに詳しくまとまっています。30日チャレンジは、このうち期限付きの禁酒にあたります。
30日のあとをどうするかは、始める時点では決めなくていい
よく聞かれるのが、30日終わったら飲んでいいのかという質問です。決めなくて大丈夫です。むしろ先に決めてしまうと、30日が我慢の期間になります。私は30日目の朝に、そのとき感じたことを材料にして決めました。31日目の考え方は後半に書きます。
要点: 禁酒チャレンジは期限付きの実験です。終わったあとをどうするかは、始める時点で決めなくて構いません。
関連記事: 断酒・禁酒・節酒・ソバキュリ、4つの違いを整理する。どれを選ぶかで、続け方が変わる
30日飲まないと、データの上では何が起きるのか
ここは根拠の話です。自分の体感だけだと、変化があったのか思い込みなのか判断できません。公開されている研究を2つ紹介します。
1か月の禁酒を追った観察研究
ロンドンの研究チームが、健康な成人を対象に1か月の禁酒を追った観察研究があります(BMJ Open 2018;8:e020673)。禁酒群94人、飲酒を続けた対照群47人という規模で、禁酒群ではインスリン抵抗性の指標であるHOMAスコアが25.9%、収縮期血圧が6.6%、体重が1.5%低下したと報告されています。これらの変化は食事、運動、喫煙の変化では説明がつかなかったとされています。
ただし読み方には注意が必要です。この研究は参加者が自分で禁酒するかどうかを選んだ観察研究で、くじ引きで割り付けた試験ではありません。もともと健康意識の高い人が禁酒側に集まっていた可能性は残ります。肝臓の病気やアルコール依存が分かっている人は対象から除かれている点も、自分に当てはめるときには覚えておきたいところです。
チャレンジのあと、飲酒量はどうなるのか
もうひとつ気になるのが、30日終わった反動で増えるのではないかという心配です。イギリスのDry January参加者857人(男性249人、女性608人)を、開始前、1か月後、6か月後の3回にわたって調査した研究があります(Health Psychology 2016;35(3):281-289)。この研究では、チャレンジへの参加が6か月後の飲酒量の減少と、お酒を断る自己効力感の向上に関連していたと報告されています。しかも、完走できたかどうかにかかわらずその傾向が見られ、完走した人ではより強く見られたとされています。
つまり、途中でつまずいても参加したこと自体が無駄にはなりにくい、というのがデータの示す姿でした。これは私にとって、いちばん励みになった一文です。
変化の出方には順番があります
体感として先に来るのは睡眠と翌朝の目覚めで、体重や検査値はそのあとです。日数ごとの変化の目安は禁酒の効果は本当にすごいのか。日数別に「変わるもの」と「変わらないもの」を分けるにまとめてあります。30日は、変わるものと変わらないものが両方見える長さです。
要点: 1か月の禁酒で代謝や血圧の指標が動いたという報告があり、チャレンジ後に反動で増えるという傾向は確認されていません。
関連記事: 禁酒の効果は本当にすごいのか。日数別に「変わるもの」と「変わらないもの」を分ける
準備日から30日目までのチェックリスト
ここからが本題です。私が2回目に使った設計を、そのまま書き出します。
30日を4つの週に分けて設計する1〜7日 切替8〜14日 定着15〜21日 退屈22〜30日 着地つまずきやすい日: 3日目 / 最初の週末 / 15日前後 / 28日目週ごとに主題を変えると、同じ我慢を30回繰り返さずに済む
図: 30日を4つの週に分けた設計図。濃い印はつまずきやすい日
準備日にやること
- カレンダーに開始日と30日目を書き込みます。終わりの日が見えているだけで続けやすくなります
- 家にあるお酒を、目に入らない場所へ移します。捨てなくて構いません
- 代わりに飲むものを3種類買っておきます。炭酸水、ノンアルコール飲料、温かいお茶など、気分で選べる形に
- 夜の空き時間にやることを3つ書き出します。本、動画、散歩、風呂、なんでも構いません
- 誰に言うか決めます。家族ひとりに伝えるだけでも、途中でやめにくくなります
- 記録の場所を決めます。手帳のすみでもアプリでも、1日1行書ければ十分です
1日目から7日目、切り替えの週
- 1日目:飲まない代わりに何を飲んだかを記録します。味の好みが早く分かります
- 2日目:いつもお酒を開けていた時刻に、別の行動を入れてみます
- 3日目:いちばん飲みたくなる日です。この日は早めにお風呂に入って、早めに布団へ
- 4日目:睡眠の変化をメモします。寝つき、夜中に起きた回数、朝の目覚め
- 5日目:週末の予定を確認し、飲む場に行くかどうかを決めます
- 6日目:外で頼むものを決めておきます。メニューを見てから考えると流されます
- 7日目:1週間ぶんの記録を読み返します。ここまでで気づいた変化を1行書きます
8日目から14日目、定着の週
- 8日目:買い物の動線を変えます。お酒の棚の前を通らない順路にします
- 9日目:夜の過ごし方のうち、いちばん良かったものを1つ選んで固定します
- 10日目:体重や体調の変化を記録します。まだ動いていなくても書きます
- 11日目:飲みたい気持ちが来た時間帯をメモします。時間には癖があります
- 12日目:誰かと飲む予定がある週かどうかを確認し、断り方か立ち回りを決めます
- 13日目:ノンアルコール飲料を1種類、新しいものに変えてみます
- 14日目:折り返しです。ここまでで節約できた金額をざっと計算します
15日目から21日目、退屈と向き合う週
- 15日目:物足りなさが出やすい日です。目新しい飲み物より、夜の予定を変えるほうが効きます
- 16日目:朝の時間の使い方を変えてみます。早く起きられているなら、そのぶんを何かに割り当てます
- 17日目:家で誰かと乾杯する機会を作ります。中身がノンアルコールでも場は成立します
- 18日目:飲まない生活で不便だったことを書き出します。不満を言語化すると対処が決まります
- 19日目:体の変化を写真かメモで残します。肌、むくみ、目の下
- 20日目:ここまでの記録を家族に見せます。人に説明すると、自分の実感が整理されます
- 21日目:3週間です。この時点の気分を1行だけ書いておきます
22日目から30日目、着地の週
- 22日目:31日目以降にどうしたいか、考え始めます。まだ決めません
- 23日目:飲まない場での過ごし方で、うまくいった立ち回りをまとめます
- 24日目:睡眠と朝の調子を、1日目の記録と見比べます
- 25日目:節約できた金額の使い道を決めます。使い道があると続く理由が増えます
- 26日目:体調に気になる変化がないかを確認します。不調があれば無理をせず相談を
- 27日目:30日目のあとに予定がある場合、そこでどうするかを決めておきます
- 28日目:達成が見えて気がゆるむ日です。ここで飲むと記録が中途半端になります
- 29日目:30日ぶんの記録を通して読みます
- 30日目:終わりの日です。何が変わって何が変わらなかったかを書き出します
要点: 30日を4つの週に分け、その日にやることを先に決めておく。判断の回数を減らすことが続けるコツです。
育児中の私が、この設計で30日を過ごしてみて
体験の話です。2回目の30日チャレンジは、子どもが1歳半の頃でした。
最初の3日は、夜の手持ち無沙汰がとにかく大きかったのを覚えています。寝かしつけが終わって、家事も終わって、さあ何をしようという時間に、以前はグラスを持っていました。その枠が空いたままだと落ち着かないので、準備日に書いた3つの候補のうち、いちばん軽い「湯船に長く入る」を毎晩やりました。4日目に寝つきが早くなり、そこから少し楽になりました。
14日目の折り返しで金額を計算したときは、思っていたより大きくて驚きました。私の場合は1か月で1万円弱でした。その金額を子どもの写真アルバムの印刷代に充てると決めてから、飲まないことが我慢ではなく交換になった感覚があります。
うまくいかなかった日もあります。18日目に友人の誕生日があって、その場では乾杯だけしたい気持ちが強く出ました。結局ノンアルコールのスパークリングで乾杯しましたが、正直に言うと少し寂しかったです。その夜に書いたメモには「飲みたかったのはお酒じゃなくて、みんなと同じものを持つことだった」と残っています。30日のあいだで、いちばん自分について分かった一行でした。
要点: 空いた時間に何を入れるかを先に決めておくと、3日目と週末を越えやすくなります。
つまずきやすい日と、その日の対処
例外と注意です。ここを読んでおくと、つまずいた日に自分を責めずに済みます。
3日目、最初の週末、15日前後、28日目
- 3日目:習慣が抜けきらないまま、飲まない状態にも慣れていない日です。予定を入れず早く寝るのが確実です
- 最初の週末:時間の空き方が平日と違うので、平日の対策がそのまま効きません。昼のうちに夜の予定を決めておきます
- 15日前後:体は楽になっているのに、目新しさが消えて退屈が来ます。飲み物を変えるより、行動を変えるほうが効きます
- 28日目:終わりが見えて気がゆるみます。30日目まで書ききることを目標にすると持ち直せます
途中で飲んでしまった日の扱い方
1日飲んでしまっても、そこで終わりにしないでください。先ほどの研究では、完走できなかった人でも6か月後の飲酒量の減少が見られたと報告されています(Health Psychology 2016;35(3):281-289)。数え直すのではなく、飲まなかった日の合計を数える形に切り替えると、30日のうち27日という結果が残ります。ゼロか百かにしないことが、続けるうえではいちばん大事でした。
体の反応が出る場合は、自己流で進めないでください
飲まない日に、手の震え、発汗、強い不眠、落ち着かなさといった症状が出る場合は、チャレンジの範囲を超えています。厚生労働省の資料は、飲酒をやめたり減らしたりしたときに離脱症状が現れることがあり、専門医療機関への相談や自助グループの利用が回復を助けると説明しています(e-ヘルスネット アルコール依存症への対応)。症状の目安と受診の判断は断酒の離脱症状はいつまで続く?時間の目安と、受診を考える7つのサインにまとめています。
妊娠中・授乳中・服薬中の方へ
これらの場合は、チャレンジという枠組みではなく、かかりつけの医療機関の指示が優先されます。厚生労働省の飲酒ガイドラインも、年齢や体質、健康状態によって影響の出方が大きく変わることを前提に置いています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。
要点: つまずく日はあらかじめ分かっています。飲んだ日があっても数え直さず、飲まなかった日の合計で見てください。
30日が終わったあと、31日目をどう決めるか
チャレンジの価値は、終わったあとの選択肢が増えることにあります。30日目の夜に、次の3つから選んでみてください。
- そのまま続ける:手応えがあるなら、期限を外してもう30日。私の場合はここから今の生活に移りました
- 飲む日を決めて戻す:週に何日、どんな場面で飲むかを先に決めてから戻します。なんとなく戻すと元の量に戻ります
- いったん終える:30日の記録を残しておけば、また始めたくなったときの出発点になります
どれを選んでも、30日ぶんの記録は残ります。自分がどの時間帯に飲みたくなるのか、何を飲むと満足するのか、どの場面が苦手なのか。この情報は、次に何を選ぶにしても使えます。
要点: 31日目の選択肢は3つ。どれを選んでも、30日の記録そのものが次の材料になります。
よくある質問
30日の禁酒チャレンジは、どのくらいの人が完走できますか
完走率は企画や集団によって差が大きく、一律の数字は示せません。ただしDry January参加者を追った研究では、完走できなかった人でも6か月後に飲酒量の減少が見られたと報告されています。完走を目標にしつつも、途中経過そのものに意味があると考えて始めるほうが続きます。
30日でどんな変化が期待できますか
研究レベルでは、1か月の禁酒でインスリン抵抗性や血圧、体重の指標が改善したという報告があります。体感として先に来るのは寝つきや朝の目覚めで、体重や健診の数値はそれより遅れて動きます。変化の出方には個人差が大きいので、自分の記録と比べるのがいちばん確実です。
途中で1日飲んでしまったら、最初からやり直すべきですか
やり直す必要はありません。連続日数ではなく、飲まなかった日の合計で数える形に切り替えてください。ゼロか百かで考えると、1日のつまずきで全部やめてしまうことになります。翌日から再開するほうが、結果的に飲まない日は多くなります。
ノンアルコール飲料を飲んでもチャレンジになりますか
なります。お酒を飲まないことが条件なので、ノンアルコール飲料は制限の対象ではありません。ただし飲む場面や時間帯の癖まで残したい場合は、あえて別の飲み物にする方法もあります。どちらが自分に合うかは、両方試してみるのが早いです。
30日が終わったら、また飲んでも大丈夫ですか
そこを決めるためのチャレンジです。30日の記録を見て、自分にとって心地よい飲み方を選び直してください。戻す場合は、飲む日と場面を先に決めてから戻すほうが、以前の量に戻りにくくなります。健康上の不安がある場合は、自己判断ではなく医療機関に相談してください。
まずは準備日のチェックリストだけ、今夜のうちに埋めてみてください。開始日と30日目をカレンダーに書き込んだ時点で、この30日はもう半分始まっています。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。

