Q. 断酒したとき、周りに正直に言うべきでしょうか?

断酒を決めた直後、自分が最初に迷ったのはここだったんです。「健診でDが出たから酒をやめました」なんて、わざわざ宣言する必要があるのか。それとも、黙っていたほうがいいのか。

結論から言うと、自分は「理由より事実だけ伝える」方法を選びました。「最近、お酒は飲んでいないので」それだけです。健診の結果とか、数値がどうとか、そこまで話す必要はないと気づきました。相手も「あ、そうなんですね」で終わる場合がほとんどで、思っていたより拍子抜けするくらい。

ただし、親しい友人には少しだけ踏み込んで話しました。「体の数値が出て、ちゃんとやってみようと思って」くらいの温度感で。そうすると相手も余計な気遣いをしなくて済むし、次に会ったとき自然にノンアルを気にかけてくれるようになる。情報の出し方は、相手との距離感に合わせるのが一番だと思っています。

Q. 職場の飲み会、どうやり過ごせばいいですか?

「飲まない人」のポジションを先に取る

職場の飲み会で一番困るのは、最初の乾杯の瞬間だったんです。あの「グラス合わせて一気に」という空気。断酒してからは、幹事に事前に一言だけ伝えておくようにしました。「自分、飲まないのでウーロン茶でもいいですか」と。

これを最初にしておくだけで、席に着いたときに自分のグラスだけソフトドリンクが来る。そうなると、誰も何も言わないんですよ。むしろ「あ、リョウさんはそういう人」と認識されて、以降はまったく気にされなくなりました。

飲み会の「役割」を別のところで担う

飲まなくなってから気づいたのですが、酒の席での自分の存在感は「飲む量」ではなく「場への関わり方」で決まるということ。話を引き出すのが上手い人、笑いを取れる人、場をまとめる人。そういう役割を意識するようになったら、むしろ終盤でもクリアな頭で動けるぶん、幹事や上司から頼りにされる場面が増えたんです。飲まないことで失うものより、得るものの方が多いと実感しています。

Q. 旧友との再会で「飲まない自分」を出すのが怖いのですが

これは正直、自分も最初は構えていました。学生時代からの飲み仲間で、集まればいつもビールで乾杯、という関係性。「なんで飲まないの?」と問い詰められそうで。

実際に再会してみたら、拍子抜けするほど普通でした。最初に一度だけ「最近お酒やめてて」と言うと、2〜3の質問が来て、そのあとは話題が別の方向に流れていく。友人たちが本当に聞きたいのは「久しぶりの近況」であって、グラスの中身ではなかったんです。

もちろん、中には「つまらない」「つき合い悪い」と感じる人もゼロではないかもしれない。でも、そういう反応をする相手とは、お酒がなくなったことで関係が薄くなっていくだけで、それ自体が「関係の本質を教えてくれるフィルター」だったと今は思っています。人間関係が整理されるのは、悪いことではなかったんです。

Q. 家族の視線が一番プレッシャーに感じるのですが、なぜですか?

「見守られている」感覚の正体

自分の場合、断酒してから妻や子どもたちの視線が気になる時期がありました。食卓でお茶を飲んでいると、なんとなく確認するような目線を感じる。あれは「ちゃんと続いているか」という心配から来ているんだと、後になって気づきました。

家族は、飲んでいた頃の自分をいちばん長く見ています。変化を信じたい気持ちと、また戻るかもしれないという不安が混在している。その視線は、責めているわけじゃない。ただ、まだ信頼を積み上げる途中だということだったんです。

言葉より「継続」が関係を動かす

「俺はもう飲まない」と宣言することより、黙って続けることの方が家族への説得力になる、と気づきました。3か月、半年、1年と時間が積み重なるにつれて、妻の表情が少しずつ変わっていった。確認するような目線が、自然な安堵感のある表情に変わっていくのが分かったんです。

家族との関係性は、言葉のやり取りより「日々の積み重ね」で変わっていく。それを体感できたことは、断酒を続けてきた中でいちばん大切な経験のひとつになっています。

Q. 断酒後、人間関係が「広がる」ことはあるのでしょうか?

これは、自分が断酒前にはまったく想像していなかった変化だったんです。飲み会の二次会に行かなくなったことで、夕方以降の時間の使い方が変わりました。その時間を使って始めた趣味のコミュニティで、まったく新しい知り合いができたんです。

お酒の場でつながる人間関係と、素面の場でつながる人間関係は、手触りが少し違います。素面で話すから、相手のことをちゃんと記憶している。次に会ったとき、前回の話をきちんと引き継げる。それが積み重なると、関係の深さが変わってくるんです。

断酒は「付き合いを狭める」と思われがちですが、自分の経験では逆でした。飲む場所には行かなくなるぶん、それ以外の場所での関わりが増えていった。人間関係の「量」より「質」に目が向くようになった、という表現が一番近いかもしれません。

周りからどう見られるかを気にしていた時期は確かにありました。でも3年経った今、「飲まない自分」は特別なことでも何でもなく、ただ「自分」というだけになっています。それが一番、居心地がよかったんです。

※本記事は一般情報であり、医療的助言ではありません。飲酒・断酒に関して体調面での不安がある方は、医療機関にご相談ください。