梅雨の夜ごはんは、むかしちょっと苦手だった
6月のこの時期、雨が続く夜って、なんとなく気分が沈みがちじゃないですか。振り返ってみると、断酒する前の私にとって梅雨の夜ごはんは「お酒を飲む理由」の宝庫でした。じめっとした空気、長い夕暮れ、なんとなくうっとうしい気分。「こういう夜は冷えた白ワインでも」って、半ば反射的に手が伸びていたんです。
でも、断酒5年やってみて気づいたのは、そのお酒が「気分を変えてくれていた」のではなく、「気分の変化を先送りにしていた」だけだったということ。翌朝のノートには「昨夜は飲みすぎた。体がだるい」と書いてあることが多かった。梅雨の夜ごはん自体は、悪くなかったはずなのに、お酒のせいで記憶も体感もぼんやりしていたんだなって思うんです。
今日は、シラフで迎える梅雨の食卓が、どんなふうに変わったかを書いてみます。「断酒したら食事が楽しくなくなりそう」と感じている方に、少し違う景色をお届けできたら嬉しいです。
「味がくっきりする」という感覚を、初めてちゃんと知った
アルコールが鈍らせていた、あの感覚
断酒して最初の梅雨を迎えたとき、一番驚いたのが「食べ物の味がはっきり感じられる」という体感でした。冷奴に生姜とかつおぶしをのせただけのシンプルな一品が、こんなに豊かな味わいだったっけ、と。お酒を飲みながらだと、アルコールの刺激が舌の感覚をある程度上書きしてしまうんですよね。食べているのに、何を食べたか曖昧になる感じ、ありませんでしたか。
5年やってみて気づいたのは、シラフの食卓では「一口一口を丁寧に楽しんでいる」ということ。梅雨の時期に旬を迎える食材——あじ、新しょうが、枝豆の走り——をシラフで食べると、それぞれの味の輪郭がはっきりしていて、ごはんを食べること自体が充実した時間になるんです。
ノートに「今日の晩ごはんメモ」を書くようになったきっかけ
断酒2年目くらいから、体調と気分を記録していたノートに「今日の夜ごはん」を書き添えるようになりました。最初は「食欲はあったか」という体調チェックの延長だったんですが、いつの間にか「あじの刺身がすごく甘かった」「新しょうがを炊いたら部屋がいい香りになった」という小さな喜びのメモになっていて。振り返ってみると、食事をちゃんと言語化できるようになったのは、シラフだからこそだなって思うんです。
飲み物の「選び方」が、食卓の楽しさを広げてくれた
お酒のかわりを探すのではなく、「今夜の気分に合う一杯」を選ぶ
断酒を始めたばかりの頃、正直なところ「ごはんにお酒がないと物足りない」という感覚はありました。でもそれは「お酒のかわりを探さないと」という方向で考えていたからだったと思います。5年やってみて気づいたのは、「かわり」を探すのではなく「今夜の気分に合う一杯を選ぶ」という視点に切り替えると、食卓の楽しさがぐっと広がるということ。
梅雨の蒸し暑い夜には、少し苦みのある炭酸水にレモンをぎゅっと絞ったもの。気温が低くてどんよりした夜には、しょうがを効かせたホットほうじ茶。食材に合わせて飲み物を選ぶ楽しさが生まれてからは、食卓が「実験の場」みたいになって、毎夜ちょっとした発見があるんです。
梅雨の夜におすすめしたい、私の定番ドリンク3つ
- 炭酸水+青じそシロップ……市販の青じそシロップを少量加えるだけで、和食との相性がとてもよくなります。さっぱりした後味が、梅雨の食欲を程よく整えてくれる感じ。
- ほうじ茶ソーダ……濃いめに淹れたほうじ茶を冷ましてから炭酸水で割るだけ。香ばしさと泡感が合わさって、なんとなく「特別な飲み物を飲んでいる」気持ちになれます。
- 甘酒の豆乳割り……梅雨で体が疲れやすい時期に、温かくして飲むとほっとします。米麹の甘みがやさしくて、気分がじんわりほぐれる感じがお気に入りです。
「食卓の時間を長くする」という小さな習慣が、夜を変えた
お酒がなくなったら、夜ごはんに「かける時間」が変わった
以前は、ごはんを食べながらお酒を飲んでいると、食事の時間がだらだらと長くなりがちでした。そのわりに、食べたものの記憶はぼんやりしている。振り返ってみると、あの時間の使い方はあまり豊かではなかったなって思うんです。
シラフになってからは、食事の時間がコンパクトに、でも密度濃くなりました。20〜30分で食べ終わって、そのあとゆっくりお茶を飲みながらノートを書いたり、本を読んだりする時間が生まれる。夜の使い方が変わったことで、翌朝の気分も変わりました。梅雨の時期は特に、朝の体の軽さが違うんです。
食後の「小さな儀式」が、再飲酒したい気分をやわらげる
5年やってみて気づいたのは、再飲酒したい気分が来やすいのは「食事のあと、手持ち無沙汰になる10〜15分」だということ。その時間をどう使うかが、意外と大事なんですよね。私の場合は、食後にお気に入りのカップで温かい飲み物を淹れて、ノートに3行だけ書くという小さな儀式を決めています。「今日の夜ごはん」「体の感じ」「明日楽しみなこと」の3項目だけ。これだけで、気分がちゃんと着地する感じがあります。
儀式というと大げさに聞こえるかもしれないけれど、要は「食事が終わったあとに、手と心が自然に向かう場所を作っておく」ということ。それが5年間、私を助けてくれた一番シンプルな知恵だなって思うんです。
梅雨の食卓が、「今日も丁寧に生きた」という感覚をくれる
断酒5年の今、梅雨の夜ごはんは私にとって一番好きな時間のひとつになっています。雨音を聞きながら、旬の食材の味をちゃんと感じて、選んだ飲み物を手に持って、ノートに一日のことを書く。なんでもない夜なのに、なんとなく「今日もちゃんと生きたな」という感覚があって。
以前の私には想像もできなかったことです。でも、振り返ってみると、その感覚を育ててくれたのは「飲まない選択」の積み重ねだったんだなって思うんです。梅雨の長い夜は、ちょっと試してみる余裕がある季節でもあります。食卓の飲み物を一杯だけ変えてみるところから、始めてみませんか。
※本記事は一般的な生活情報の提供を目的としており、医療的助言・診断・治療の推奨を含むものではありません。体調やお酒との関係について心配なことがある場合は、医療機関へご相談ください。




