二日酔いの予防で、飲む前にできることは3つです

結論から申し上げます。飲む前にできて、公的な資料が明記している配慮は、量をあらかじめ決めること・食事と一緒に飲むこと・薄めて飲むことの3つです。これ以外のいわゆる予防策については、ランダム化比較試験を集めた系統的レビューが「二日酔いの予防や治療に有効だと言える説得力のある根拠はない」と結論づけています。同レビューは、二日酔いの症状を避ける最も効果的な方法は禁酒か節酒である、と述べています(BMJ. 2005;331(7531):1515-8. PMID: 16373736)。

身も蓋もない結論ですが、ここを出発点にすると迷いが減ります。私は50代で、1年前にγ-GTPが基準値の2倍を超えて医師から減酒を指示されました。それまでは飲む前に何かを口にして備えるやり方をしていましたが、いまは飲む前に決めるのは量だけです。そのほうが翌朝が軽いのです。

公的資料に明記量を先に決める食事と一緒/薄めて飲む体質で決まる部分分解酵素の型体格・総水分量根拠が弱い群各種サプリメント等(証拠の質は非常に低い)左の3つは自分で操作できます。真ん中は変えられないので、左の設定値に反映させます。出典: BMJ. 2005;331(7531):1515-8 (PMID: 16373736)、Addiction. 2022;117(8):2157-2167 (PMID: 34972259)、厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」

図: 飲む前の対策を、根拠の強さと自分で操作できるかどうかで分けた整理。

二日酔いという言葉の範囲を揃えておきます

二日酔いは、飲酒の翌日に頭痛・吐き気・倦怠感などが出る状態を指す日常語です。医学的に単一の原因が特定された病名ではありません。ですから「これを飲めば防げる」という言い方が成立しにくく、研究でも症状スコアという形で測られています。

原因の候補としてよく挙がるのは脱水ですが、ここも決着していません。後述するとおり、飲む前に水を用意することは意味がありますが、それは脱水対策というより飲む量を減らすための仕掛けとして効きます。

要点: 飲む前にできる根拠のある手は3つです。それ以外の予防策は、研究では効果がはっきりしていません。

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根拠のある手その1:飲む前に量を決めます

3つのうち、最も効き、最も地味なのがこれです。

ガイドラインが明記している配慮です

厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、健康に配慮した飲酒の仕方として「あらかじめ量を決めて飲酒をする」を挙げ、自ら飲む量を定めることで過度な飲酒を避けるなど飲酒行動の改善につながると言われている、と記載しています。行事やイベントの場でも、各自が何をどれくらい飲むかをそれぞれ自分で決めて飲むことが大切だとしています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。

系統的レビューの結論が「禁酒か節酒が最も効果的」であることを踏まえると、飲む前にできる対策のうち、効果の方向がはっきりしているのはここだけとも言えます。

決めるのは杯数ではなくグラムです

私は以前、「今日は3杯まで」という決め方をしていました。これがうまくいかなかったのは、1杯の中身がその日によって違ったからです。生ビール中ジョッキとハイボール濃いめでは、入っているアルコールの量がまるで違います。

ガイドラインは純アルコール量の計算式を示しています。純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8で、ビール500ml(5%)なら20gです(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。杯数ではなくこのグラム数で上限を決めると、店や場面が変わってもぶれません。

一度に飲む量の上限も決めておきます

同じガイドラインは、1回の飲酒機会で純アルコール摂取量60g以上の一時多量飲酒について、さまざまな身体疾患の発症や急性アルコール中毒を引き起こす可能性があり、外傷の危険性も高めるものであるとして、避けるべきだと明記しています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。

60gはビール500ml換算で3本分です。二日酔いを防ぐという目的からすると、この線はかなり上のほうにあります。実務的には、もっと手前に自分の線を引くことになります。

私は3段階の線を用意しています

具体的には、平日の食事で40g、会食で60g、どうしても外せない席で上限を超えそうなときは途中でノンアルに切り替える、という3段階にしています。以前は上限をひとつだけ決めていたのですが、その1本を超えた瞬間に「もう同じだ」と崩れてしまうことが何度もありました。段階を用意しておくと、超えたあとにも戻る先があります。

数え方も決めておきます。生ビール中ジョッキ(約500ml・5%)で20g、ハイボール1杯(ウイスキー30ml・40%)で約10g、日本酒1合(180ml・15%)で約22gという具合に、よく飲むものだけ暗算できる形にしておくと、席で計算が止まりません。いずれも前述の式(摂取量×度数/100×0.8)から出した数字です(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。

要点: 飲む前に決めるのは杯数ではなく純アルコールのグラム数です。場面が変わってもぶれない単位で決めます。

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根拠のある手その2:飲む前または飲みながら食べます

2つめは、飲み始める直前に効く手です。

血中アルコール濃度が上がりにくくなります

厚生労働省のガイドラインは、健康に配慮した飲酒の仕方として「飲酒前又は飲酒中に食事をとる」を挙げ、血中のアルコール濃度を上がりにくくし、お酒に酔いにくくする効果があると記載しています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。

仕組みについては、e-ヘルスネットがより詳しく説明しています。アルコールは胃にあるうちはゆっくり吸収され、小腸に入ると速やかに吸収されるため、胃から小腸への排出時間が速いとどんどん血液に入って血中アルコール濃度が高くなります。同じ量の純アルコールでも、食事しながらビールを飲むより、空腹時に高濃度少容量のウイスキーや焼酎をストレートで飲むほうが血中アルコール濃度はかなり高くなると述べられています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。

何を食べるかより、胃に何かある状態を作ることです

ここでよく「何を食べればいいのか」という話になりますが、上の記述で効いているのは胃から小腸への排出時間です。特定の食品でなければならない、という書き方はされていません。

私は会食の前に、家でおにぎりを半分だけ食べるようにしています。満腹にすると食事が楽しめなくなるので、胃に何か入っている状態を作る程度です。これを始めてから、最初の一杯の回り方が明らかに変わりました。

要点: 空腹で飲み始めると血中アルコール濃度が上がりやすくなります。飲む前に胃に何か入れておきます。

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根拠のある手その3:薄めて、ゆっくり飲みます

3つめも同じガイドラインに書かれています。

水や炭酸水を合間に置きます

ガイドラインは「飲酒の合間に水(又は炭酸水)を飲むなど、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする」ことを挙げ、具体策として水などを混ぜてアルコール度数を低くして飲酒をすること、少しずつ飲酒すること、アルコールの入っていない飲み物を選ぶことを示しています。効果としては、飲む量に占める純アルコールの量を減らすと記載されています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。

ここは読み方に注意が必要です。書かれている効果は「純アルコールの量を減らす」ことであって、水を飲むこと自体が二日酔いを直接防ぐとは書かれていません。あくまで総量を下げる仕掛けとして位置づけられています。

飲む前にチェイサーを頼んでおきます

実務的には、席についた時点で水を1つ頼んでしまうのがいちばん確実です。飲み始めてから頼もうとすると、たいてい忘れます。私は注文のときにビールと水を同時に頼む習慣をつけました。これだけで、同じ時間の中で飲む杯数が1杯前後減りました。

度数を下げる選択も飲む前の判断です

ハイボールを濃いめにするか薄めにするか、日本酒にするかビールにするか。この選択は飲み始めてからでは変えにくいので、飲む前の判断に含めておきます。度数の低い飲み物を選ぶことは、そのまま純アルコール量の削減になります。

要点: 水と薄めることの効果は、脱水対策ではなく総量の削減です。席についた時点で水を頼んでおきます。

体質の部分は変えられません。設定値に反映させます

ここまでの3手は自分で操作できる部分でした。操作できない部分についても押さえておきます。

分解酵素の型で出やすさが変わります

e-ヘルスネットは、ALDH2と呼ばれる酵素に東アジア人に多い遺伝子多型があり、酵素活性がゼロか弱い人が大勢いること、このALDH2欠損型の人はコップ1杯のビールで顔が赤くなるフラッシング反応が起こり、比較的少ない飲酒量で二日酔いを起こすと記載しています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。

つまり同じ量を飲んでも、二日酔いになる人とならない人がいるのは体質差が大きいということです。周りと同じペースで飲んで大丈夫かどうかは、人によって答えが違います。

翌朝まで残りやすい体質もあります

同じページによれば、5〜7%の日本人はアルコールの分解が遅いADH1Bを持っており、この型があると多量に飲酒した翌日もアルコールが長時間残って酒臭いことが多いとされています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。

体質は変えられませんが、上限のグラム数を自分用に下げることはできます。体質の情報は、対策を増やすためではなく、設定値を調整するために使うのが実際的です。

女性はより低めの設定が要ります

ガイドラインは、女性は一般的に男性と比較して体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も男性に比べて少ないことなどから、アルコールの影響を受けやすいことが知られていると記載しています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。同じ席で同じ量を飲む前提自体が、そもそも合っていないということです。

要点: 体質で二日酔いの出やすさは変わります。対策を増やすのではなく、上限のグラム数を下げる方向で反映させます。

期待しすぎないほうがよい対策の見分け方

ここまで挙げなかった対策についてです。効かないと断じるのではなく、どの程度の根拠なのかを知っておくという話です。

系統的レビューが見ているのはここです

2005年のBMJの系統的レビューは、8件のランダム化比較試験で8種類の介入を検討し、二日酔いの予防や治療に有効だと言える説得力のある根拠は存在しないと結論づけました(BMJ. 2005;331(7531):1515-8. PMID: 16373736)。

その後、2022年のAddiction誌の系統的レビューは、386人を対象とした21件の研究を集めましたが、2つとして同じ介入を扱った研究がなくメタ解析ができなかったこと、方法論上の懸念と精度の問題から有効性の評価がすべて「非常に質が低い」と格付けされたことを報告しています。結論は、二日酔いの治療または予防のために薬理学的に活性のある介入を推奨できる根拠は、非常に質の低いものしかない、というものでした(Addiction. 2022;117(8):2157-2167. PMID: 34972259)。

自分で見分けるときの3つの問い

商品や方法を目にしたときに、私が確認するようにしているのは次の3点です。

  1. 比較対象があるか。何も飲まなかった場合と比べているか、それとも飲んだ人の感想だけか。
  2. 人数はどのくらいか。上の2022年のレビューでも、21件合わせて386人でした。1件あたりの人数はかなり少ないということです。
  3. 測っているものは何か。症状スコアなのか、血中の何かの数値なのか。数値が動くことと、翌朝が楽になることは同じではありません。

効能を断定する表現には距離を置きます

飲む前に何かを口にする商品は数多くあります。それ自体を否定するつもりはありません。ただ、「これを飲めば大丈夫」という前提で飲む量が増えるなら、結果として翌朝はつらくなります。私が以前やっていたのがまさにそれでした。

要点: 系統的レビューの評価は「非常に質が低い」でした。対策を足すより、量の設定を守るほうが確実です。

よくある質問

二日酔いを飲む前に完全に防ぐ方法はありますか

飲酒量を抑える以外に、確実な方法は示されていません。2005年の系統的レビューは、二日酔いの症状を避ける最も効果的な方法は禁酒か節酒であると結論づけています(BMJ. 2005;331(7531):1515-8. PMID: 16373736)。飲む前の準備は、量を減らしやすくするための仕掛けとして位置づけるのが現実的です。

飲む前に水を飲んでおくと効きますか

厚生労働省のガイドラインは、飲酒の合間に水や炭酸水を飲むことを挙げていますが、その効果として書かれているのは飲む量に占める純アルコールの量を減らすことです(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。脱水を防ぐから二日酔いが防げる、という形では説明されていません。総量を下げる道具として使うのが正しい理解です。

飲む前に食べておくのは効果がありますか

血中アルコール濃度の上がり方には効きます。ガイドラインは飲酒前または飲酒中に食事をとることについて、血中のアルコール濃度を上がりにくくし、酔いにくくする効果があると記載しています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。何を食べるかより、空腹のまま飲み始めないことが要点です。

同じ量でも二日酔いになる日とならない日があるのはなぜですか

飲酒後の血中アルコール濃度は、食事の有無やアルコール飲料の種類と飲み方、体格や肝臓の大きさなどによって異なるとe-ヘルスネットは説明しています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。同じグラム数でも、空腹かどうかや飲むペースで血中濃度の上がり方が変わるということです。

市販の予防用の商品は使わないほうがよいですか

使ってはいけないという話ではありません。ただし2022年の系統的レビューは、二日酔いの治療または予防に薬理学的に活性のある介入を推奨できる根拠は非常に質の低いものしかないと結論づけています(Addiction. 2022;117(8):2157-2167. PMID: 34972259)。商品を使うことで飲む量が増えてしまうのであれば、目的から遠ざかります。

次に飲む予定がある日は、店に入る前にひとつだけ決めてみてください。今日は純アルコールで何グラムまでにするか、という一行です。私はこれを手帳の端に書いてから席につくようにしています。飲む前の3分が、翌朝の数時間を変えてくれますよ。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。体調や持病に関わる判断は、かかりつけの医師にご相談ください。