ALDH2の遺伝子型、日本人の割合はどうなっているのですか
結論から書きます。ALDH2の遺伝子型は3種類あり、日本人の一般的な集団ではお酒に弱い側の型が半数近くを占めます。日本人1,341人の非アスリートを調べた研究では、GG型(酵素がしっかり働く型)が54%、GA型(働きが弱い型)が37%、AA型(ほとんど働かない型)が9%でした(Biol Sport. 2022;39(2):429-434. PMID: 35309545)。GA型とAA型を合わせると46%です。
よく言われる「日本人の約4割がお酒に弱い」という表現は、このGA型とAA型を合わせた割合を指しています。自分もこの数字は何度も目にしていましたが、どの研究から来ているのかを確かめずに使っていました。今回はそこを追いかけます。
GG 活性型54%GA 低活性型37%AA 不活性型9%日本人の非アスリート 1,341人。GA + AA = 46%出典: Biol Sport. 2022;39(2):429-434 (PMID: 35309545)
図: 日本人におけるALDH2 rs671遺伝子型の割合。低活性型と不活性型を合わせると半数近くになります。
厚生労働省は41%という数字を示しています
公的な資料では、割合の示し方が少し違います。厚生労働省の飲酒ガイドラインは、分解酵素が弱く飲酒で顔が赤くなるなどのフラッシング反応を起こす人が、日本では41%程度いると言われていると記載しています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。この記述の出典として挙げられているのが、1993年のHarada Sらの報告です(Alcohol Alcohol Suppl. 1993;1A:11-3. PMID: 8141918)。
41%と46%という2つの数字が出てきますが、前者は反応が出る人の割合、後者は遺伝子型の割合で、そもそも測っているものが違います。調査対象や年代でも差が出ますから、おおよそ4割から5割の間、という受け取り方が実態に近いと思います。
数字を確かめてから使うようにしています
自分は10年以上ほぼ毎日ビールを500ml缶で2本飲んでいて、健診の判定Dをきっかけに3年前からお酒を飲んでいません。その過程で体質の話をずいぶん読みましたが、出どころの書いていない数字がかなり流通していると気づきました。だからこの記事では、数字を書くたびに原典を添えます。
要点: 日本人の遺伝子型はGG54%・GA37%・AA9%という実測があり、弱い側は合わせて46%でした。
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そもそもALDH2とは何をしている酵素ですか
割合の前に、何の話をしているのかを揃えます。
アルコールは2段階で分解されます
厚生労働省のガイドラインは、肝臓でアルコールがアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸へと分解される、と説明しています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。酢酸は筋肉や心臓へ移動してさらに分解され、最終的に炭酸ガスと水になります。
このうち、アセトアルデヒドを酢酸に変える段階を担うのがALDH2です。ここの働きが弱いと、アセトアルデヒドが体内に溜まりやすくなります。顔が赤くなる、動悸がする、吐き気がするといった反応は、この物質が溜まっている状態と結びついています。
違いはたった1か所の塩基です
ALDH2の働きの強弱を決めているのは、rs671と呼ばれる1か所の違いです。ここがGかAかで酵素の働きが変わり、G/G、G/A、A/Aの3通りの組み合わせが生まれます。Aを1つでも持っていると酵素の働きが大きく落ちるため、GA型でも「弱い側」に分類されます。
1か所の違いが、飲めるか飲めないかという日常の体験にそのまま出てくる。遺伝子の話としては珍しく、結果が自分で観察できる例だと思います。
アルコール自体を分解する酵素は別にあります
混同されやすいので分けておきます。アルコールをアセトアルデヒドに変える段階を担うのはADH1Bという別の酵素で、こちらにも働きの強弱を決める遺伝子の違いがあります。つまり「分解の速さ」は2つの酵素の組み合わせで決まるわけで、ALDH2だけを見て飲酒後の体感が全部説明できるわけではありません。研究論文でこの2つが並べて解析されているのは、そういう理由です。自分がどちらの話をしているのかを意識しておくと、読み間違いが減ります。
弱いは病気ではありません
念のため書いておくと、GA型やAA型であること自体は病気ではありません。体質の一種です。ただし後半で触れるとおり、その体質のまま飲み続けた場合に、別のリスクが変わってくるという報告があります。
要点: ALDH2はアセトアルデヒドを酢酸に変える酵素で、rs671という1か所の違いで働きが決まります。
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なぜ東アジアに弱い型が多いのですか
日本人の割合という検索意図に答えるうえで、地域差の話は外せません。
分布は世界的に見ると大きく偏っています
酵素の働きの強弱は遺伝子によるもので、東アジアにはこの分解酵素が弱くフラッシング反応を起こす人が一定数いる、と厚生労働省のガイドラインは記述しています。ヨーロッパやアフリカの集団ではこの型がほとんど見られないことが知られており、東アジアに集中しているのが特徴です。
つまり「お酒が弱い人が周りに普通にいる」という感覚は、世界的には普通ではありません。日本で育つと当たり前に見えるこの光景自体が、かなり特殊な分布の上に成り立っています。
日本国内でも地域差があると報告されています
日本国内でも、地域によって型の割合に差があるという報告があります。ただし調査の年代や対象の集め方によって数字に幅があり、現在の人口移動を考えると、出身地から型を推定するような使い方はできません。地域差があるらしい、という以上のことをここで断定するのは避けます。
なぜ偏ったのかは、まだ決着していません
弱い型が東アジアで増えた理由については、感染症との関係や農耕の広がりと結びつける仮説などが提示されていますが、現時点で決定的な説明は定まっていません。ここは要確認の領域として、そういう仮説がある段階だと書いておきます。分からないことを分からないまま書くのも、リサーチ記事の役割だと考えています。
要点: 弱い型は東アジアに集中していますが、なぜそうなったかは仮説の段階です。
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自分の型はどうすれば分かりますか
ここからは実用の話です。自分の型を知る方法は、精度の順に3つあります。
- 遺伝子検査を受ける。rs671を直接調べるので、3つの型を確定できます
- アルコールパッチテストを受ける。皮膚の反応から推定する方法で、簡便ですが推定です
- 飲酒後の反応から推測する。もっとも手軽ですが、もっとも当てになりません
顔が赤くなるかどうかだけでは判定できません
3番目が当てにならない理由を書きます。飲酒後に顔が赤くなるかどうかは、飲んだ量、体調、気温、空腹かどうかでも変わります。さらにやっかいなのは、飲み続けているうちに反応が出にくくなることがある点です。
厚生労働省のガイドラインも、そのような人が長年飲酒して不快にならずに飲めるようになった場合でも、アルコールを原因とする口の中のがんや食道がんなどのリスクが非常に高くなるというデータがある、と注意を促しています。つまり赤くならなくなったことは、型が変わったことを意味しません。
過去に赤くなっていたかどうかを思い出す
研究の現場では、現在の反応ではなく「飲み始めた頃に顔が赤くなっていたか」を尋ねる方法が使われます。今の自分ではなく、20代前半の自分がどうだったかを思い出すほうが、型の推定としては当たりやすいということです。
自分の場合、20代の頃は1缶目の途中で顔が赤くなっていました。それが30代には出なくなり、当時は「鍛えられた」と思っていました。いま振り返ると、これはかなり危うい解釈だったなと感じています。
要点: 型を確定したいなら遺伝子検査、推定ならパッチテスト。現在の顔の赤さは判定材料になりません。
型が分かると、何が変わるのですか
割合を知ることの実用的な意味は、ここにあります。
食道がんのリスクとの関係が報告されています
フラッシング反応と食道がんの関係を整理した論文では、この反応を示す人が飲酒を続けた場合、扁平上皮がんのリスクが高まることが指摘されています(Brooks PJ, et al. The alcohol flushing response: an unrecognized risk factor for esophageal cancer from alcohol consumption. PLoS Med. 2009;6(3):e50. PMID: 19320537)。厚生労働省のガイドラインも、この論文を体質に関する参考文献として挙げています。
背景にあるのは、アセトアルデヒドが体内に長く留まることです。分解が遅い体質のまま飲む量を保てば、曝露している時間が長くなります。飲酒とがんの関係全体はお酒の発がん性、部位はどこか——WHO認定7か所を自分のログと照らした夜にまとめられているので、部位ごとの話はそちらが詳しいです。
飲めるようになった、は注意すべき変化です
この分野で自分がいちばん重要だと思っているのがここです。弱い型の人が飲み続けて反応が出にくくなるのは、分解能力が上がったからではありません。それでもリスクは高いままだという注意喚起が、公的なガイドラインに明記されています。
つまり「昔は弱かったけど鍛えて飲めるようになった」という語りは、体質が改善した話ではないということになります。3年前の自分がまさにこの誤解の中にいたので、強調しておきたい点です。顔の変化そのものについては禁酒で顔が変わるのはなぜ?日本人に変化が出やすい体質の理由を整理するも合わせて読むと立体的になります。
職場や家庭での配慮にもつながります
割合の話がなぜ大事かというと、同席する5人のうち2人前後は弱い側の型である可能性が高い、という見積もりが立つからです。厚生労働省のガイドラインも、飲酒する習慣がない方に無理に飲酒を勧めることは避けるべきだと明記しています。体質の分布を知ることは、自分のためだけでなく、周りへの態度の話でもあります。
要点: 弱い型のまま飲み続けると食道がん等のリスクが高まると報告され、反応が消えてもリスクは残ります。
型は運命なのでしょうか
ここは誤読されやすいところなので、丁寧に書きます。
強い型でも、量が多ければ関係ありません
GG型なら安心、という話ではありません。分解が速い体質は、不快感が出にくいぶん量が増えやすいという別の問題を抱えます。実際、自分はおそらく強い側の体質で、だからこそ毎日500ml缶を2本、10年以上続けられてしまいました。不快感というブレーキが無いことは、利点であると同時に危うさでもあります。
厚生労働省のガイドラインが示す考慮すべき量は、体質ではなく純アルコール量で書かれています。型に関わらず、量の管理は必要だということです。
弱い型でも、選択肢は狭くありません
一方で、弱い側の型だからといって何もできないわけではありません。飲まないという選択はもちろん、度数の低い飲みものを選ぶ、飲む頻度を下げるなど、量を調整する方向は残っています。型は変えられませんが、曝露量は自分で決められます。
体質の話は、飲まない選択の説明にも使えます
割合を知っておくと、飲まない理由を説明する場面でも役に立ちます。体調やポリシーの話にすると議論になりがちですが、体質の分布として日本では4割前後がそちら側だと分かっていれば、珍しいことではないという前提を共有できます。自分は飲まない理由を聞かれたとき、健診の数値と体質の話を並べて短く答えるようにしていて、これで長引いたことはほとんどありません。量の目安そのものはアルコール20gは"どのくらい"か。飲料別の量と身体感覚を完全整理で換算の感覚をつかんでおくと、会話の場でも扱いやすくなります。
自分の3年で分かったこと
自分は遺伝子検査を受けたわけではなく、20代の反応から推測しているだけです。ただ、型が何であれ、10年間のログを振り返ったときに問題だったのは量と頻度でした。体質の話は面白いのですが、それだけを見ていると、自分がコントロールできる変数から目が逸れます。型は前提条件で、量は選択です。
要点: 型は変えられませんが、曝露量は選べます。強い型であることはリスクが無いことを意味しません。
よくある質問
日本人でお酒に弱い人の割合は何%ですか
測り方で数字が変わります。遺伝子型で見ると、日本人1,341人の調査でGA型37%・AA型9%、合わせて46%でした(PMID: 35309545)。フラッシング反応が出る人の割合で見ると、厚生労働省の飲酒ガイドラインは日本で41%程度と記載しています。おおよそ4割から5割の間と理解しておくのが実態に近いです。
ALDH2の遺伝子型は3種類ですか
はい、rs671の組み合わせでGG型・GA型・AA型の3種類になります。GG型は酵素が通常どおり働く型、GA型は働きが弱い型、AA型はほとんど働かない型です。Aを1つ持つだけで働きが大きく落ちるため、GA型も弱い側に分類されます。
お酒に弱い体質は鍛えられますか
反応が出にくくなることはありますが、遺伝子型は変わりません。厚生労働省のガイドラインは、不快にならずに飲めるようになった場合でも口の中のがんや食道がん等のリスクが非常に高くなるというデータがあると注意を促しています。反応が消えたことを、体質が変わった証拠として読まないほうが安全です。
型を調べるにはどうすればいいですか
rs671を対象にした遺伝子検査が確実です。簡便な方法としてアルコールパッチテストもありますが、こちらは推定になります。現在の飲酒時の顔色から判断するのは、量や体調の影響が大きく当てになりません。検査の要否や結果の解釈については、医療機関にご相談ください。
AA型の人はまったく飲めないのですか
AA型は酵素がほとんど働かないため、少量でも強い反応が出ることが多いとされています。個人差はありますが、飲酒に向いた体質ではありません。周囲の人がこの型である可能性も踏まえて、飲酒を勧めない配慮が求められます。厚生労働省のガイドラインも、飲酒する習慣がない方に無理に勧めることは避けるべきだと明記しています。
次に確かめてほしいこと
自分の型を推測するなら、いまの顔色ではなく、飲み始めた頃の自分がどうだったかを思い出してみてください。そこで赤くなっていた記憶があるなら、いま反応が出ていなくても、量と頻度を記録してみる価値があります。型は選べませんが、記録は今日から始められます。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。検査や健康上の判断については医療機関にご相談ください。

