結論を先に書きます。あれは性格ではなく、二日酔いの症状のひとつです

結論から書きます。飲んだ翌日にやってくる理由のない不安や落ち込みは、ハングザイエティと呼ばれています。昨日の自分の言動が悪かったから不安になっているのではなく、二日酔いという体の状態そのものに気分の落ち込みと不安の高まりが含まれている、というのが今わかっていることです。実際に二日酔いの朝を測定した研究では、同じ人でも飲んだ翌朝は不安が有意に高く、頭の疲労感も強く、前夜の睡眠を悪かったと評価していました。つまり原因は昨夜の会話ではなく、昨夜のお酒のほうにあります。

私は断酒担当のアオです。40代の女性で、飲み方を見直して5年になります。5年前まで、私は日曜の朝にやってくるあの感覚を、自分の性格の弱さだと思っていました。ノートを読み返すと、当時の私が書いていたのはほとんど自己批判です。この記事では、あの時期の私に渡したかった説明を、研究の裏づけとあわせて置いていきます。

要点: 翌日の不安と落ち込みは、二日酔いという状態に含まれる症状として研究で確認されています。

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5年前の日曜の朝、私の頭の中で起きていたこと

思い出していたのは、その場にいなかった人の顔でした

はっきり覚えている朝があります。土曜の夜に友人と飲んで、日曜の朝10時に目が覚めたときのことです。頭痛はありませんでした。喉の渇きも大したことはありませんでした。それなのに、布団の中で最初に浮かんだのが、昨夜その場にいなかった同僚の顔だったんです。

数年前に交わした会話を思い出して、あのとき自分の言い方はきつかったのではないか、と延々と考えていました。昨夜の飲み会とは何の関係もありません。にもかかわらず、その日は午後までずっと、過去のいろいろな場面が順番に出てきました。

このとき私が出した結論は「自分は根が暗いのだ」でした。今ならわかりますが、これは完全に的外れでした。振り返ってみると、同じことが起きるのはいつも飲んだ翌日で、飲まなかった週末には起きていなかったからです。

ノートに残っていた3行が教えてくれたこと

私は当時から、寝る前に3行だけノートをつけていました。飲んだかどうか、睡眠の体感、気分。この3行だけです。半年ぶんたまったところで読み返して、ようやく気づきました。気分の欄に「重い」「理由なく不安」と書いてある日の前日には、ほぼ必ず「飲んだ」と書いてあったのです。

記録の効用は、この一点に尽きると思っています。感覚は記憶と一緒に揺らぎますが、書いた文字は揺らぎません。私が自分の性格の話をやめられたのは、ノートが並んでいる状態を見たからでした。

ひとつ補足すると、このとき私は原因を証明したわけではありません。飲んだ日と不安な日が重なっていたという対応を見ただけです。それでも十分でした。自分を責める前に、まず疑うべき別の候補が出てきたからです。当時の私に足りていなかったのは科学的な厳密さではなく、自分以外の容疑者でした。

要点: 翌日の不安が起きる日と飲んだ日は、記録を並べると重なって見えてきます。

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ハングザイエティという呼び名について

hangover と anxiety を合わせた言い方です

ハングザイエティは英語の hangxiety で、hangover(二日酔い)と anxiety(不安)を組み合わせた造語です。学術用語として最初からあった言葉ではなく、当事者の語りのなかから広がってきた呼び名でした。実際、大学生のお酒の習慣を聞き取った質的研究(Kaylor SK ほか, 2024, PMID 36194419)では、学生の語りから抽出された5つのテーマのひとつとして Hangover Anxiety(Hangxiety)が挙がっています。

呼び名がついたことの意味は大きいと私は思っています。名前のない不調は、自分の内面の問題として処理されてしまうからです。名前がつくと、外の現象として扱えるようになります。

二日酔いの一部であって、別の病気ではありません

もうひとつ整理しておきたいのは、ハングザイエティが独立した病名ではないということです。二日酔いという状態のなかに、頭痛や吐き気と並んで気分の症状が含まれている、という理解のほうが実際に近いです。だから対処も、特別なメンタルケアではなく、二日酔いへの対処と重なります。

ただし、不安が飲酒とは無関係に続く場合や、日常生活に支障が出るほど強い場合は話が別です。その場合は医療機関に相談してください。この記事が扱っているのは、飲んだ翌日に来て、その日のうちか翌日には引いていくタイプのものです。

要点: ハングザイエティは二日酔いに含まれる気分の症状で、独立した病名ではありません。

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研究で確かめられている3つのこと

二日酔いの朝は、不安が実際に高くなっています

ここからは数字の話です。二日酔いの朝の気分と作業能力を調べた研究(Benson S ほか, 2020, PMID 32316689)は、25人を対象に、同じ人がお酒を飲まなかった翌朝と、いつもどおり飲んだ翌朝の両方で検査を受けるクロスオーバー設計をとっています。その結果、二日酔いの条件では覚醒度と満足感が有意に低く、頭の疲労感と不安が有意に高いと報告されました。

同じ人を両方の条件で比べているところがこの研究の強みです。もともと不安になりやすい人が飲んでいるだけではないか、という説明では片づかない形になっています。

前夜の睡眠が悪くなっていました

同じ研究(Benson S ほか, 2020)では、参加者は二日酔いの前夜の睡眠を、飲まなかった夜と比べて有意に悪かったと評価していました。眠りにつくまでは早かったとしても、夜のあいだの質は落ちているということです。

私の実感ともここは一致します。飲んだ夜は寝つきだけは良いのですが、明け方に目が覚めることが多く、そこから浅い眠りが続きます。その状態で迎える朝に、気分だけが平常でいるというのは考えにくい話です。

アセトアルデヒド犯人説は、思ったほど強く支持されていません

意外だったのがこれです。二日酔いの病態を代謝の側面から整理した総説(Mackus M ほか, 2020, PMID 33113870)は、血中エタノール濃度と二日酔いの重さのあいだには直接的な関係が示唆される一方で、アセトアルデヒドとの関連は有意ではなかったとしています。さらに、エタノールの分解が速い人ほど二日酔いが軽い傾向があり、その説明としてエタノールが血液脳関門を通過できるのに対しアセトアルデヒドは通過しにくいことを挙げています。

つまり「悪いのはアセトアルデヒドだ」という説明は、少なくともこの総説が扱った範囲では単純には成り立ちません。私はこれを読んで、翌日の不調を「体質のせい」で片づけるのをやめました。飲んだ量そのもののほうが効いている可能性が高いからです。

判断力も一緒に落ちています

もうひとつ知っておくと役に立つのが、翌日は思考の精度そのものが落ちているという点です。二日酔いの状態が日常的な記憶に与える影響を調べた研究(Heffernan T, 2018, PMID 30283310)では、58人の若年成人を二日酔い群25人と非二日酔い群33人に分けて比べたところ、これからやることを覚えておく能力の得点が平均5.16対7.51で、二日酔い群のほうが有意に低いという結果でした。

不安なうえに判断が鈍っている状態です。だから、その朝に出した自己評価は当てにしないほうがいい。これが私のいちばんの学びでした。

要点: 翌朝は不安が高く、前夜の睡眠が悪く、判断力も落ちています。その状態の自己評価は信用しないでください。

強く出やすい条件を、自分の記録から整理しました

飲んだ量が多い日寝る直前まで飲んだ日食事をとらずに飲んだ日睡眠が6時間未満だった日図はノートの記録から並べた個人の傾向であり、研究由来の数値ではありません

図: 私の場合、翌日の不安の強さは量と時間帯に引きずられていました

この並びは、私が半年ぶんのノートを読み返して整理した個人的な傾向です。研究で検証されたものではないので、そのまま一般化しないでください。それでも共有する価値があると思ったのは、どの項目も自分で確かめられるからです。

厚生労働省健康に配慮した飲酒に関するガイドラインも、飲酒前や飲酒中に食事をとること、合間に水や炭酸水を飲むことを、健康に配慮した飲み方の工夫として挙げています。私の記録で効いていた条件と、方向としては重なっていました。

要点: 量と時間帯と空腹が重なった日ほど、翌日の不安は強く出ていました。

5年かけて残った、5つの対処

  1. その朝の自己評価を、いったん保留にする。 判断力が落ちている状態なので、結論を出すのを翌日まで待ちます。私はノートに「今日は判定しない」と書くだけにしていました。
  2. 水分と食事を先に入れる。 考えるより先に体を戻します。空腹のまま考えていると、不安がそのまま自己批判に変わっていきます。
  3. 不安の中身を書き出す。 頭の中で回している限り終わりません。3つ書き出すと、たいてい2つは昨夜と無関係な過去の話です。
  4. 散歩に出て光を浴びる。 20分で十分です。効果の機序を説明できるほどの根拠を私は持っていませんが、私の記録では外に出た日のほうが午後の落ち込みが浅く済んでいました。
  5. 次に同じ状態を避けるための1行を残す。 「次は食事を先に」「次は22時までに切り上げる」など、行動の形で書きます。反省ではなく設定の書き換えです。

このうち1番がいちばん効きました。あの朝に自分を採点することを禁止しただけで、日曜の午後の質が変わったからです。翌日の月曜に読み返すと、土曜の自分はたいてい何も悪いことをしていませんでした。

3番の書き出し方には、ひとつだけコツがあります

不安の中身を書き出すとき、私は最初、文章で書こうとして失敗しました。文章にすると理由づけが始まってしまい、書けば書くほど自分を責める材料が増えていったからです。そこで途中から、単語だけを3つ並べる形に変えました。たとえば「同僚の顔」「去年の会議」「返せていないメッセージ」のように、名詞で止めます。

名詞で止めると、そのあとに続くはずだった解釈が入り込みません。並べ終えてから眺めると、3つのうち2つは昨夜とまったく関係のない過去の話だと、自分の目で確認できます。この確認が要るんです。頭の中で「関係ないよね」と思うのと、書いた3語を見て確認するのとでは、納得の度合いがまるで違いました。

逆に、やめてよかったことも書いておきます

5年のあいだにやめたことが2つあります。ひとつは、翌日の朝に予定を詰めること。埋めれば気が紛れると思っていたのですが、判断力が落ちている状態で人と会うと、そこでまた新しい後悔を作ってしまいました。もうひとつは、その朝に昨夜の相手へ「昨日は大丈夫でしたか」と確認の連絡を送ること。確認したところで不安は消えず、相手を戸惑わせるだけだったなって思うんです。

要点: 朝の自己評価を保留にすることが、5つのうちで最も効きました。

当てはまらない場合と、気をつけてほしいこと

不安が飲酒と無関係に続くなら、別の相談先が要ります

ここまでの話は、飲んだ翌日に来て、その日か翌日には引いていくタイプの不安を扱っています。飲んでいない日も不安が続く場合、日常生活に支障が出ている場合、気分の落ち込みが2週間以上続く場合は、この記事の範囲を超えています。医療機関や相談窓口に相談してください。

不安をやわらげるために飲むのは、逆に強くします

もうひとつ書いておきたいのが、迎え酒の話です。翌日の不安を消すために飲むと、その場では楽になっても、同じ状態が翌日にまた来ます。厚生労働省のガイドラインも、毎日飲み続けることが依存の発症につながる可能性に触れています。不安と飲酒が循環し始めると、そこから抜けるのは自力では難しくなります。

体質によって、同じ量でも起きることが違います

同じガイドラインによれば、アルコールの分解酵素のはたらきが弱く、飲酒で顔が赤くなるフラッシング反応を起こす人は日本では41%程度いるとされています。この場合、翌日に出る症状の出方も量の閾値も変わってきます。他人の適量を自分の基準にしないでください。

要点: 飲まない日も不安が続く場合や2週間以上落ち込みが続く場合は、自己対処ではなく相談してください。

よくある質問

飲んだ翌日に不安になるのは、私だけでしょうか

いいえ、広く報告されている現象です。大学生の語りを分析した研究でも、Hangover Anxiety(Hangxiety)が主要なテーマのひとつとして抽出されています(Kaylor SK ほか, 2024, PMID 36194419)。二日酔いの朝を測定した研究でも、不安が有意に高くなることが確認されています。

どのくらいで消えますか

多くの場合、二日酔いのほかの症状と同じように、その日のうちか翌日には引いていきます。私の記録では、飲んだ量が多い日ほど午後まで残る傾向がありました。ただし2日以上続く場合や、飲んでいない日にも同じ状態が来る場合は、別の要因を考える必要があります。

記憶が飛んでいなくても不安になるのはなぜですか

昨夜の言動を思い出せないことが原因なら、記憶がある日には起きないはずです。ところが実際には、記憶がはっきりしている日にも起こります。二日酔いの状態そのものに気分の症状が含まれているという理解のほうが、この現象をうまく説明できます。私の場合も、不安の中身が昨夜とは無関係な何年も前の出来事だったことが何度もありました。

対策として何をいちばん先にやるべきですか

その朝の自己評価をいったん保留にすることです。判断力が落ちていることが研究でも示されているので(Heffernan T, 2018, PMID 30283310)、その状態で出した結論は信用しないと決めておくのが現実的です。水分と食事はそのあとで構いません。

飲む量を減らせば軽くなりますか

総説では、血中エタノール濃度と二日酔いの重さのあいだに直接的な関係が示唆されています(Mackus M ほか, 2020, PMID 33113870)。量を減らすことが効く方向に働く可能性はありますが、どのくらい減らせばどれだけ軽くなるかを示した数字を私は持っていません。ここは自分の記録で確かめるのがいちばん確実です。

要点: 広く起こる現象で、多くは1日で引きます。まずはその朝の自己評価をやめてください。

次に飲んだ日の翌朝、いつもの自己批判が始まったら、スマホのメモに一行だけ書いてみてください。「今日は判定しない」。それだけで午後の色が変わることがあります。そして余裕があれば、飲んだ日と気分の欄を、1か月だけ並べて記録してみてください。私が自分の性格の話をやめられたのは、そこからでした。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。