結論:スリップしても、これまでの日数は「ゼロ」に戻りません
結論から言うと、禁酒中に飲んでしまったことは失敗の証明ではなく、立て直しの起点にできる出来事です。大切なのは、飲んだ事実を隠さず、次の24時間でやることを小さく決めることです。自分は断酒3年目で、元は毎日ビール500mlを2缶飲む生活でした。ありがたいことに3年間スリップはしていないので、「自分はこうして立て直した」とは書きません。かわりに、公的な情報を軸に整理します。
この記事で「スリップ」と呼ぶのは、禁酒中にお酒を口にしてしまうことです。飲酒量を決めて続ける節酒とは別のものとして扱います。
要点: 1杯の事実と、続けてきた日々は別々に数えます。
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ある夜のシーンから考えます
仮の話として、一つの夜を想像してください。禁酒を続けて1か月の人が、仕事の帰りにコンビニで缶を手に取り、帰り道で空けてしまいます。部屋に着いて、残りの缶を前に座り込みます。
この夜、頭の中で起きやすいのは「もう全部ダメだ」という声です。どうせ崩れたのだから、今夜は飲み切ってしまおう。そう考える流れは、よくあるものです。ここが一番の分かれ道になります。
その夜にできる、いちばん小さなこと
最初にやるのは、残りを飲み切らないことではなく、残りを目の前から離すことです。流しに捨てる、玄関の外に出す、誰かに預ける。どれでも構いません。意志で我慢し続けるより、手の届かない場所に移すほうが確実です。
次に、水を飲んで、今夜は寝ます。反省会は明日の昼にします。
要点: 最初の夜は、残りを遠ざけて寝る。反省は翌日の昼に回します。
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「回復」はゼロからの再スタートではありません
公的情報は、回復をどう説明していますか
埼玉県のアルコール依存症の案内ページでは、依存症は「治癒はしないが回復できる」と説明され、回復には自分一人の力では難しく、専門的な治療を受けることや仲間を得ていくことが重要だとされています(埼玉県「アルコール依存症」)。同ページは治療の柱として、通院治療、抗酒剤の服用、自助グループへの参加を挙げています。
スリップを「個人の根性の欠如」ではなく、回復の途中で起こりうる出来事として扱う姿勢が、ここから読み取れます。ただし、同ページはスリップそのものについては書いていません。ここから先の手順は、自分の整理であることを断っておきます。
依存の仕組みを知っておくと、責めすぎずに済みます
厚生労働省のe-ヘルスネットは、飲酒を続けると耐性ができ、精神依存として「飲みたい気持ち」が強まり、その後に身体依存が現れ、やめたときに離脱症状として不眠や手のふるえが出ることがあると説明しています(e-ヘルスネット「アルコールと依存」)。飲みたい気持ちは、気合ではなく仕組みの結果として強まる、ということです。
要点: 回復は途中でつまずくことがある過程として説明されています。
立て直しの順番:直後から1週間まで
ここからは、自分が整理した順番です。医療的な判断が必要な場面は、後の相談先に回します。
- 直後(その夜):残りを遠ざける、水を飲む、寝る。
- 翌日の昼:飲んだ時間、場所、直前の出来事、気分を紙に3行で書く。
- 翌日の夜:同じ場面が来たときの代わりの行動を一つだけ決める。
- 3日以内:禁酒を知っている人に、飲んだ事実を一言伝える。
- 1週間後:書いた3行を見返し、場面を避けられるかを確認する。
その夜翌日の昼翌日の夜3日以内1週間後遠ざける→書く→代わりを決める→人に伝える→見返す
図: スリップ後の立て直しの順番(筆者の整理)
「書く」のは反省のためではありません
3行の記録は、自分を責める材料ではありません。同じ場面が次に来たときの手がかりを集めるためです。「残業後」「コンビニ」「イライラ」といった単語で十分です。
人に伝えることの意味
伝える相手は、批判しない人を選びます。家族でも、友人でも、後述の自助グループでも構いません。隠したままにすると、次の1杯の理由が増えます。
要点: 順番を決めておくと、飲んだ夜でも次の一手に迷いません。
ひとりで抱えない:相談先を先に知っておきます
飲む量や頻度がコントロールできないと感じる、手のふるえや不眠などの身体の変化がある、といったときは、自己判断で済ませず専門機関に相談してください。前述の埼玉県のページでは、県立精神保健福祉センターの来所相談、保健所、精神科医療機関、AA(Alcoholics Anonymous)や断酒会などの自助グループが案内されています。お住まいの自治体にも、同じ種類の窓口があります。
よくある質問
1杯飲んだら、禁酒日数はゼロに戻りますか。
日数の数え方は、自分で決めてよいと考えています。ただ、数字をゼロにするかどうかより、次の24時間の過ごし方のほうが大切です。
飲んでしまった翌日、また飲みたくなります。
飲みたい気持ちが強まることはあります。残りを手元に置かず、相談先に早めに連絡してください。
家族に言うべきですか。
批判しにくい相手を選び、事実だけを短く伝えるところから始めてください。話すのが難しければ、保健所や精神保健福祉センターの相談も使えます。
病院に行く目安はありますか。
手のふるえや不眠などが出る、飲酒の量や回数を自分で決められない、と感じるときは、受診や相談を検討してください。
今夜はまず、水を一杯飲んで、書くための紙を枕元に置いてください。続きは明日の昼で十分です。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。

