日本の飲酒統計で追えるのは「リスクを高める量を飲む人」の割合です
結論から書きます。厚生労働省の国民健康・栄養調査で、2010年から2024年まで継続して追える飲酒の指標は、「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者」の割合です。この割合は、2022年と2023年の調査結果の概要によると、過去10年間で男性は有意な増減がなく、女性は有意に増加しています(厚労省 令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要)。
「日本の飲酒率」という言葉でよく探されますが、「お酒を飲む人が全体の何%か」という単純な割合は、自分が確認した調査の概要には載っていませんでした。この記事では、確認できた数値だけを使います。ここで言う「リスクを高める量」とは、1日あたりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上のことです。
自分は10年以上、ほぼ毎日ビール500mlを2缶飲んでいました。この量は、後で計算するとちょうど40gです。健診でDの判定が出て断酒して3年になりますが、この統計を原典の資料で読み直したので、まとめます。
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12回分の調査結果を、男女で並べました
男性と女性の推移
国民健康・栄養調査は、年によって実施されなかった年があります。平成25年(2013年)は未実施、令和2年・3年(2020年・2021年)は調査が中止されています。確認できた各年の値は、次のとおりです。
15%9%男性 15.3%→13.9%女性 7.5%→9.3%2010201520192024横軸は調査実施年。未実施・中止の年は詰めて表示
図: 純アルコール量が男性40g以上・女性20g以上の者の割合(国民健康・栄養調査の公表値。2010〜2022は令和4年報告、2023は令和5年報告、2024は令和6年報告)
男性は2010年に15.3%、2011年に16.3%、2022年に13.5%、2023年に14.1%、2024年に13.9%です。女性は2010年に7.5%、2011年に8.2%、2022年に9.0%、2023年に9.5%、2024年に9.3%です。
各年の値の出典は次のとおりです。2010〜2019年と2022年は令和4年の概要(厚労省 令和4年 国民健康・栄養調査結果の概要)、2023年は令和5年の概要(先ほどのリンク)、2024年は令和6年の概要(厚労省 令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要)です。
2010年代の動きを数字で追うと
男性は、2010年の15.3%から2011年の16.3%、2012年の14.7%、2014年の15.8%、2015年の13.9%、2016年の14.6%、2017年の14.7%、2018年の15.0%、2019年の14.9%と、14〜16%台で上下しました。女性は、7.5%、8.2%、7.6%、8.8%、8.1%、9.1%、8.6%、8.7%、9.1%と、緩やかに上がっています。
目標値との距離
国の目標も確認できました。令和4年の概要には、健康日本21(第二次)の目標が男性13%、女性6.4%と書かれています。令和6年の概要には、健康日本21(第三次)の目標として、全体で10%、女性は6.4%が挙げられています。2024年の全体の割合は11.4%、男性13.9%、女性9.3%ですから、いずれも目標に届いていません。
要点: 男性は14〜16%台で横ばい、女性は7%台から9%台へ上がっています。
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年齢階級別に比べると、ピークの位置が調査ごとに違います
3回分の調査の比較
年齢階級別の割合は、調査年によってピークの年代が動いています。
- 2022年(令和4年)は、男性が50歳代で20.0%、女性が40歳代で16.5%でした。
- 2023年(令和5年)は、男性が40歳代で23.6%、女性が50歳代で14.6%でした。
- 2024年(令和6年)は、男性が60歳代で21.6%、女性が50歳代で18.4%でした。
読み方の注意
ピークの年代が調査ごとに違うのは、自分の見立てでは、調査対象の人数や回答者の構成が毎年変わるためです。年齢階級別の数値は、1つの年代を数百人から千人台で見ているため、年ごとのぶれが出やすいと考えられます。たとえば2024年の女性20〜29歳は747人でした。1年の数値だけで「この年代が増えた」と決めつけず、複数年で見るほうが安全です。
男女で見える違い
2024年の数値を年代別に見ると、男性は60歳代の21.6%が最も高く、70歳以上では8.6%に下がります。女性は50歳代の18.4%が最も高く、70歳以上では3.5%です。20歳代は男性4.0%に対し、女性は7.7%と、女性のほうが高い値でした。
要点: 年齢階級別は年ごとのぶれが大きいので、1年の値より複数年の並びを見ます。
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グラフで見ると何が言えて、何が言えないか
14年間のトレンドを、差で見る
図の線を数字に直すと、2010年から2024年までの変化は、男性が15.3%から13.9%へ1.4ポイントの低下、女性が7.5%から9.3%へ1.8ポイントの上昇です。女性の値は、14年で約1.2倍になった計算になります(9.3÷7.5)。ただし、男性の下がり幅は、毎年の上下に埋もれる程度で、国の概要も「有意な増減はなし」と表現していました。
一方で、女性のトレンドは、年ごとに上下しながらも、全体として右上がりです。令和4年の概要では、年齢調整値でも女性は2010年の8.0%から2022年の10.1%へ上がっています。年齢構成の変化だけでは説明がつかない、というのが読み取れる範囲です。理由までは、概要には書かれていません。
このデータでは言えないこと
自分が気をつけているのは、因果を決めつけないことです。女性の割合が増えた理由として、働く女性の増加やお酒の商品の変化などを挙げる意見は見かけますが、今回確認した資料では裏づけを取れませんでした。ですので、この記事では理由には踏み込みません。
サンプルの大きさと、アンケートであること
2024年の調査では、20歳以上の回答者は男性が9,032人、女性が10,535人でした。年代別に分けると、各カテゴリは数百人から数千人になります。このサンプルの大きさだと、1年だけの小さな差は偶然の範囲に入りやすいと考えられます。
もう一つ、これは飲酒の頻度と量を尋ねるアンケートの回答から、量を計算した推計です。実際に飲んだ量そのものを測ったデータではありません。数字は、あくまで「回答にもとづく目安」として使うのが安全です。
要点: 差は小さく、理由は書かれていません。回答にもとづく推計であることを前提に読みます。
男女の水準を、2024年の値で並べ直します
同じ年の男女を並べると、見え方が変わります。2024年は、全体が11.4%、男性が13.9%、女性が9.3%でした。男性は女性の約1.5倍です(13.9÷9.3)。2010年は男性15.3%に対し女性7.5%で、約2倍でした。14年で、男女の差は縮まっています。
もう一つ、女性は国の目標との差も大きく見えます。目標の6.4%に対して9.3%なので、2.9ポイント上回っています。男性は、第二次の目標13%に対して13.9%で、0.9ポイントの上回りです。
2010年 男性 15.3%2010年 女性 7.5%2024年 男性 13.9%2024年 女性 9.3%
図: 2010年と2024年の男女差(出典: 国民健康・栄養調査 令和4年・令和6年の概要。男性の線は女性の約2倍→約1.5倍)
統計の読み方で、つまずきやすい3点
自分が最初に勘違いしたところを含めて、3点にまとめます。
- 「リスクを高める量」は、飲酒者のうちの割合ではなく、20歳以上の回答者全体に対する割合として公表されていると読み取れます(年代別の人数が回答者全体の数で示されているため)。飲まない人も分母に入っている点に注意してください。
- 量は、飲酒の頻度と1回の量の組み合わせから計算した推計です。たとえば男性は「毎日×2合以上」から「月1〜3日×5合以上」までの区分を合計します。
- 年齢調整値と実数値は別物です。令和4年の概要には、年齢調整値で男性が15.3%(2010年)から13.7%(2022年)へ、女性が8.0%から10.1%へと書かれています。年齢構成の変化をならした値でも、女性は上がっています。
これらは、令和4年と令和5年の概要の記述にもとづいています。調査の設計が変われば数値の意味も変わるので、必ず原典の注記を確認してください。
自分の量を、同じ物差しで計算してみます
国の統計と自分を比べるには、純アルコール量を計算します。厚労省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、純アルコール量(g)は「摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8」で求めるとされ、500ml・5%のビールが20gの例として示されています(厚労省 飲酒ガイドライン(PDF))。
この式で、自分が毎日飲んでいた500ml×2缶を計算すると、1000×0.05×0.8で40gです。男性のリスク量の下限ちょうどでした。当時の自分は「ビールだから軽い」と思っていましたが、数字にすると、毎日この線の上にいたことになります。女性の目安は20gなので、ビール500ml1缶が目安の上限にあたります。
500ml×1缶(5%) = 20g(女性の目安)500ml×2缶(5%) = 40g(男性の目安)計算式: 量(ml)×度数/100×0.8(厚労省ガイドライン)
図: ビールの本数と純アルコール量(厚労省の式で算出)
要点: 自分の量を式で数字にすると、統計の目安と同じ物差しで比べられます。
統計を、自分の行動につなげる3つの方法
統計は他人の話に見えますが、自分に引きつけて使えます。
1. 毎日の量を1週間だけ書く
量をざっくり把握するために、1週間だけ記録します。厚労省の女性向け解説書でも、飲酒日記に毎日の飲酒量を書き、1〜2週間ごとに振り返ることが勧められています(厚労省 お酒のたしなみ方 女性編)。
2. 飲まない日を作る
ガイドラインには、毎日飲み続けるような継続した飲酒を避ける、と書かれています。自分は断酒に進みましたが、まずは飲まない日を作ることが入口になります。
3. 不安があれば、医療機関に相談する
長く毎日飲んできた人が、急にやめると体に症状が出ることがあります。お酒を止めたり減らしたりすると不眠、発汗、手のふるえ、血圧上昇、不安、いらいら感などが現れ、重い場合は幻覚やけいれん発作が起こることもあると、e-ヘルスネットは説明しています(e-ヘルスネット「アルコールと依存」)。心当たりのある方は、ひとりで始めず相談してください。
断酒して3年、この数字をどう受け止めているか
統計を調べながら、自分が「男性14%のうちのひとり」だったことに気づきました。毎日40gという量は、珍しい飲み方ではなかったんです。だからこそ、健診でDが出るまで、自分のこととして考えられませんでした。
数字は、他人との比較に使うより、過去の自分と今の自分を比べるために使うのがいいと、いまは思っています。断酒を始めてからは、飲まなかった日数を数えるようにしました。統計の中の自分ではなく、毎日の自分の記録のほうが、続ける力になりました。
よくある質問
日本の飲酒率は、増えていますか。減っていますか。
確認できた指標は「リスクを高める量を飲酒している者」の割合です。男性は過去10年で有意な増減がなく、女性は有意に増加していると、令和4年・5年の調査結果の概要に書かれています。お酒を飲む人全体の割合の推移は、今回確認した資料からは言い切れませんでした。
男性と女性で、リスク量の基準が違うのはなぜですか。
男性は1日40g以上、女性は1日20g以上です。厚労省の女性向け解説書には、女性は男性より分解酵素の働きが弱く、体内の水分量も少ないため、アルコールの影響を受けやすいとされています。
最新の数値はどこで見られますか。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」の結果の概要です。この記事の数値は、令和4年・5年・6年の概要を確認した2026年10月時点のものです。新しい調査が公表されたら、更新を確認してください。
自分の量が基準を超えているか、どう調べますか。
飲んだ量(ml)×度数/100×0.8で、純アルコール量(g)を出せます。1日の平均で、男性40g、女性20gが一つの線です。
自分の量を、まず計算してみてください。数字にするだけで、統計の中の自分の立ち位置が見えてきます。
※本記事は一般情報であり、医療的助言ではありません。

