結論から言うと、適量は「何杯か」だけでなく「体がどれくらいの時間で処理できる量か」で測ると、自分の飲み方の見え方が変わります。厚生労働省のe-ヘルスネットは、ガイドラインを軸に賢く飲むコツを整理しています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「賢く飲むためのコツ」)。また「少量ならむしろ体に良い」という適量論は、2023年に発表された大規模なメタ解析では裏づけられていません。ガジェットとログが好きな私は、Apple Watchと飲酒の記録アプリで、週4日の休肝日、週末2日だけ飲む運用を続けています。ここでは数字を並べ直して、適量という言葉をどう扱えばいいかを整理し、今日から使える5つの確認項目にまとめます。

107件の研究は、少量の飲酒をどう見たか

少量でも死亡リスクが下がる、とは言えなかった

2023年に JAMA Network Open に掲載された系統的レビューとメタ解析は、107の研究、延べ480万人以上のデータを統合しました。1日あたりのエタノール量が25g未満の少量飲酒は、生涯飲まない人と比べて、全死亡リスクの有意な低下は見られなかったと報告されています。出典: Zhaoら, JAMA Netw Open 2023;6(3):e236185 (DOI 10.1001/jamanetworkopen.2023.6185)。

また同じ解析で、女性は1日25g以上、男性は45g以上の飲酒で、全死亡リスクが有意に高まったとされています。出典: Zhaoら, JAMA Netw Open 2023。

数字の読み方で気をつけたいこと

ここで大事なのは、「少量なら安全」でも「少量でも危険」でもなく、「少量が守ってくれるという証拠は確認できなかった」という点です。観察研究が中心なので、因果の断定はできません。私はこれを、安心材料ではなく「期待しすぎない目安」として受け取っています。

要点: 少量飲酒が体を守る、という根拠は大規模解析で確認されませんでした。

関連記事: 適度な飲酒1日20gの根拠、その裏側。日本人男性のデータと、安全な量ではない理由

適量を、時間で測ってみる

体重×0.1gが、1時間に処理できる目安

e-ヘルスネットによると、1時間に分解できるアルコール量の一般的な目安は体重×0.1g程度とされています。ただし、この目安より低いケースも多く、酵素の遺伝子型や飲酒習慣で代謝速度は大きく異なるため、予測は難しいとも書かれています。出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールの吸収と分解」。

この式を使って、体重60kgの人で計算してみます。60×0.1で1時間あたり約6gです。500mlのビール(純アルコール20g)は、処理するのに3時間以上かかる計算になります。あくまで目安ですが、「1本が3時間の仕事」と考えると、飲む時間帯を考える材料になります。

女性や体質で、時間は変わる

同じページには、女性は平均体重が軽く体脂肪率が高いため総水分量が少なく、同じ量でも男性より血中濃度が高くなるとあります。時間の目安も、人によって大きくずれるということです。私はこの数字を、自分に合わせた「見積もり」として使っています。

要点: 体重×0.1gは時間の目安。実際は体質で変わるので、あくまで見積もりとして使います。

関連記事: お酒で顔が赤くなるのはなぜ?アセトアルデヒドと体質、日本人の41%という数字の読み方

日本の基準と並べて読む

厚生労働省のガイドラインは、純アルコール量を、摂取量(ml)×度数×0.8で計算するとしており、5%・500mlのビールは20gです。生活習慣病のリスクを高める量は、1日あたり男性40g以上、女性20g以上とされ、この量は個人の許容量を示すものではないとの注記があります。1回で60g以上の一時多量飲酒は避けるべきとも書かれています。出典: 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」。

2つの基準を並べると、次のようになります。

基準

数字

出典

生活習慣病リスクを高める量

男性40g/日、女性20g/日以上

厚生労働省ガイドライン

一時多量飲酒

1回60g以上

厚生労働省ガイドライン

全死亡リスクが有意に上昇

女性25g/日、男性45g/日以上

Zhaoら 2023

図: 飲酒量の基準を並べた比較(出典: 厚生労働省ガイドライン、Zhaoら JAMA Netw Open 2023)

基準ごとに測っているものが違うため、数字が近くても同じ意味ではありません。それでも、日本の目安のほうが慎重な線を引いていることは分かります。

要点: 日本の目安は男性40g・女性20g。論文の閾値とは測るものが違うので、並べて比べるときは前提を確認します。

自分のログで確かめる5つの確認項目

次の5つを、飲酒ログで確認しています。

  1. 1回ごとの純アルコール量を、量×度数×0.8で出しているか
  2. 1日の量が、自分の性別の目安を超えていないか
  3. 1回60g以上の飲酒がないか
  4. 週の中に、飲まない日が何日あるか
  5. 飲まない日の睡眠スコアと、飲んだ翌日のスコアの差を見ているか

1と2は、計算が自動でできる形にする

記録アプリに度数と量を入れると、純アルコール量が自動計算される形にしています。手計算は続きません。

5は、あくまで自分用の目安

睡眠スコアは機器の推定値で、医学的な診断ではありません。ただ、同じ条件で比べると、自分の傾向は見えてきます。

要点: 量、上限、一時多量、休肝日、睡眠。この5つをログで確認すれば、適量という言葉に頼らずに済みます。

家計簿との相性

ログを取ると、お酒代も一緒に見えます。以前は気づかなかった出費が、数字になって現れるのは意外な副産物でした。

よくある質問

結局、適量はいくつですか。

この記事では、適量を断定しません。厚生労働省の目安が男性40g、女性20gの「リスクを高める量」であり、少量が体を守るとは言えない、という整理にとどめています。

週に1日も休肝日を作れない場合はどうしますか。

まず1日あたりの量を減らすことから始めてください。健診で指摘を受けている方は、医師の指示に従ってください。

ログを取るのがおっくうです。

最初は日付と本数だけで構いません。続けるうちに、度数や量も加えていけば十分です。

まずは今週の合計から

今週飲んだ純アルコール量を、足し算してみてください。数字が見えるだけで、来週の選び方が変わります。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。