適度な飲酒は1日20g、という数字の根拠は、どこまで遡れるのでしょうか

結論から言うと、「適度な飲酒は1日平均で純アルコール約20g」という数字は、厚生労働省の健康日本21(第一次)に由来します。そこでは、わが国の男性を対象にした研究で、平均して2日に日本酒1合(純アルコールで約20g)程度飲む人の死亡率が最も低かったことと、国際的な研究のまとめが、根拠として挙げられています。ただし、現在の厚生労働省のガイドラインは、20gを「安全な量」とも「許容量」ともしていません。この2つを同時に押さえることが、この記事の結論です。

自分は40代の男性で、10年以上ほぼ毎日ビール500mlを2缶飲み、健診でD判定が出たことをきっかけに断酒して、今は3年になります。当時の自分は、「適度な飲酒は20g」という話を、「20gまでなら大丈夫」という意味に受け取っていました。原典に当たってみると、その読み方は正確ではありませんでした。この記事では、健康日本21の資料と、厚生労働省のガイドラインを順に読んで、確認できたことと、確認できなかったことを分けて書きます。

健康日本21(第一次)節度ある適度な飲酒=1日平均約20g健康に配慮した飲酒ガイドラインリスクを高める量=男性40g・女性20g以上同じ「20g」でも、置かれた意味が違います前者は「普及させたい知識」、後者は「減らしたい人の目安」(許容量ではない)

図: 20gという数字の位置づけ(健康日本21とガイドラインの記述から筆者が整理)

要点: 20gは健康日本21で示された「適度な飲酒」の量で、現在のガイドラインでは「安全な量」ではありません。

関連記事: 純アルコール20g、ビール500ml1本の数字から始めた1年間のログ

20gの根拠として、健康日本21には何が書かれているのでしょうか

定義と、挙げられている2種類の根拠

厚生労働省の健康日本21(アルコール)の資料には、「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコールで約20g程度である旨の知識を普及すると書かれています。そして、その根拠として、2種類の研究が説明されています。

1つ目は、日本人男性を対象にした研究です。わが国の男性を対象とした研究では、平均して2日に日本酒に換算して1合(純アルコールで約20g)程度飲酒する人の死亡率が最も低いとする結果が報告されている、と書かれています。2つ目は国際的な証拠で、男性は1日あたり純アルコール10〜19g、女性は1日あたり9gまでで死亡率が最も低く、アルコール量が増えるにつれて死亡率が上がることが示されている、とされています。

確認できなかったこと:個々の論文の特定

正直に書きます。この資料の本文には、研究の概要は書かれていますが、個々の論文の題名や掲載誌までは、私が確認した範囲では追えませんでした。国税庁の審議会資料にも同じ定義が抜粋されていますが、そこにも研究の詳細は書かれていません。つまり、「20gという数字の根拠となった個別の論文」を、私は今回、一次情報で特定できていません。

この点は、原典に当たる姿勢として大事だと思っています。数字が有名になるほど、「誰が、どの研究で言ったのか」が、いつの間にか忘れられていくからです。

注意したいのは、「死亡率が最も低い」の読み方です

根拠の中身は、「飲酒量と死亡率の関係を調べたとき、死亡率が最も低かったのが約20g前後の群だった」という趣旨です。ここから「だから20gは体にいい」とは言えませんし、資料もそう書いているわけではありません。次の章で、この読み方がその後の研究でどう変わったかを見ます。

要点: 健康日本21は日本人男性の研究と国際データを根拠に挙げていますが、個々の論文までは確認できませんでした。

関連記事: お酒をやめて痩せました、という女性の声を数字で読む。カロリーで説明できる範囲とできない範囲

20gとは、どのくらいのお酒の量なのでしょうか

純アルコール量の計算式は、1つだけ覚えれば足ります

厚生労働省のガイドラインでは、純アルコール量(g)は摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8で計算するとされています。ビール500ml(5%)なら500×0.05×0.8で20gです。

この式で、よく飲まれる量を計算してみました。

ビール500ml1缶(5%)20gビール500ml2缶(5%)40g缶チューハイ350ml(7%)19.6g日本酒1合180ml(15%)21.6g※「摂取量×度数/100×0.8」で筆者が算出(棒の長さは量に比例)

図: 飲み物ごとの純アルコール量(厚労省ガイドラインの式で算出)

自分が毎日飲んでいた量は、40gでした

自分が毎日飲んでいたビール500ml×2缶は、この式で40gになります。つまり、「適度」とされる約20gの2倍でした。ガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める量が1日あたり純アルコール量で男性40g以上、女性20g以上とされています。自分の毎日の量は、ちょうどその男性の基準に当たっていました。当時はこの計算をしたことがなく、「ビール2缶くらい普通」と思い込んでいました。

計算するときに、よくある勘違い

ひとつは、度数が同じでも缶のサイズで量が変わることです。350ml缶と500ml缶は、同じ5%でも純アルコール量が違います。もうひとつは、「1本」の大きさがメーカーや店で違うことです。ラベルの容量と度数を、一度は自分で掛け算してみるのがおすすめです。

要点: 純アルコール量は「摂取量×度数/100×0.8」で計算でき、ビール500ml1缶が約20gです。

関連記事: 妊娠中、ノンアルは飲んでいい? 厚労省の情報とメーカー公式回答をそろえて答えます

「適度な飲酒は健康にいい」は、今も言えるのでしょうか

近年のメタ分析は、「低用量の保護効果」に慎重です

飲酒量と死亡率の関係は、少量飲む人のほうが、全く飲まない人より死亡率が低く見える「Jカーブ」で語られてきました。しかし、この見え方には、「飲まない人の中に、病気で飲めなくなった人が混じる」といった偏りが指摘されてきました。

この点を整理した研究として、2023年にJAMA Network Openに発表された、107のコホート研究を対象にしたシステマティックレビューとメタ分析があります。この論文では、1日の飲酒量が少ない〜中程度の範囲では、全死亡リスクとの有意な関連は認められず、飲酒量が多くなるとリスクの上昇がみられた、と報告されています。また、女性では男性より低い量からリスクが上がることも示されています。私は論文の本文の細部までは確認できていないので、ここでは、抄録で確認できた範囲にとどめます。

世界規模の分析でも、年齢や性別で最適量は違うとされています

世界の疾病負荷研究をもとにした分析として、Population-level risks of alcohol consumption by amount, geography, age, sex, and year(GBD 2020)があります。題名のとおり、飲酒のリスクを量・地域・年齢・性別・年ごとに分けて分析した研究です。私は本文の数値までは確認できていないので、結果の細部は書きません。ただ、リスクが「誰にとっても同じ量で決まるものではない」方向の研究であることは、題名から読み取れます。

結論:Jカーブは「飲むと健康になる」という意味ではありません

ここまでをまとめます。かつて「適度な飲酒」の根拠とされた死亡率の低さは、その後の分析で、解釈に慎重さが求められるようになっています。少なくとも、「健康のために飲み始める」という使い方は、根拠として弱いと自分は読みました。

要点: 近年のメタ分析は「少量なら健康に良い」という見方に慎重で、20gを健康目的で飲む量とは読めません。

ガイドラインは、20gをどう位置づけているのでしょうか

20gは「許容量」ではない、と書かれています

厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、生活習慣病のリスクを高める量(男性40g以上、女性20g以上)について、これらの量は個々人の許容量を示したものではない、と注釈で明記されています。つまり、「20gまでなら大丈夫」という読み方は、ガイドラインの趣旨に合っていません。この量は、この量を飲んでいる人を減らすことを目標にした目安として示されています。

疾病によっては、少量でもリスクが上がるとされています

ガイドラインの疾病別リスクの表(表1)では、疾病ごとに、リスクが上がる飲酒量が示されています。ガイドラインの記載を整理すると、次のとおりです。

  • 高血圧:男性・女性とも、0gを超える量(少量でもリスクが上がる)
  • 食道がん:男性は0gを超える量(少量でもリスクが上がる)
  • 脳出血:男性は週150g(1日あたり20g)、女性は0gを超える量
  • 胃がん:男性は0gを超える量、女性は週150g(1日あたり20g)
  • 大腸がん:男女とも週150g(1日あたり20g)
  • 乳がん(女性):週100g(1日あたり14g)

ガイドラインには、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などの場合は、たとえ少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げてしまう、という趣旨の記述もあります。つまり、「20g」という1つの数字で、すべての病気のリスクを語ることはできません。

一時多量飲酒は、別の注意が必要です

1回の飲酒機会で純アルコール量60g以上の一時多量飲酒は、ガイドラインで外傷の危険性も高めるため避けるべきとされています。1日平均が20gでも、週末にまとめて飲めば、この基準を超える場合があります。「平均」の数字だけを見ていると、見落としやすい点です。

要点: ガイドラインは20gを許容量とせず、疾病によっては少量でもリスクが上がると示しています。

「適度」の量は、人によって違います。例外を整理します

女性・高齢者・体質の方は、より少ない量が適当とされています

健康日本21の資料には、特別な配慮が必要な方への記述があります。女性は男性より少ない量が適当で、65歳以上の高齢者はより少量の飲酒が適当、少量の飲酒で顔面紅潮を来すなどアルコール代謝能力の低い人は、通常の代謝能を有する人よりも少ない量が適当とされています。

つまり、「20g」は、特別な配慮が必要ない人を想定した、1つの目安にすぎません。体質や性別、年齢によって、適当な量は変わります。

飲まない人が、飲み始める理由にはなりません

最後に、大切なことを書いておきます。この数字は、お酒を飲まない人が「健康のために飲み始める」理由にはなりません。飲酒の習慣がない人に、無理に飲酒を勧めることも、ガイドラインは避けるべきとしています。

断酒した自分にとっての、この数字の意味

自分は健診をきっかけに断酒しました。毎日40gを10年以上飲んでいた自分にとって、20gという数字は「ここまでなら大丈夫」という線ではなく、「自分の量がどれだけ多かったか」を知るための物差しでした。数字は、使い方で意味が変わります。

毎日多量に飲んでいた方が、自己判断で急にやめると、離脱症状が出る場合があります。e-ヘルスネットには、不眠・発汗・手のふるえ・血圧の上昇・不安・いらいら感などが挙げられています。心配な方は、必ず医師に相談してください。

要点: 適当な量は女性・高齢者・体質で変わり、20gは特別な配慮が不要な人向けの目安にすぎません。

根拠を読むときの、5つのチェック手順

数字を見たとき、自分は次の5つを確認する習慣をつけました。

  1. その数字は、「推奨」か「リスクの目安」か、どちらの意味で書かれているか
  2. 誰を対象にした数字か(男性・女性・年齢・体質)
  3. 「平均」か、「1回あたり」か
  4. 疾病ごとに数字が分かれていないか
  5. 原典(論文・公的資料)まで、リンクをたどれるか

この5つを確かめるだけで、「20gまでなら大丈夫」という読み方の危うさが見えてきます。

要点: 数字を見たら、意味・対象・単位・疾病・原典の5つを確かめます。

よくある質問

Q. 適度な飲酒は、1日どのくらいですか?

健康日本21では、1日平均純アルコールで約20g程度とされていました。ただし、現在のガイドラインは、この量を許容量とはしていません。

Q. 純アルコール20gは、ビールだとどのくらいですか?

ビール500ml(5%)で、500×0.05×0.8=20gです。ほかの飲み物も、同じ式で計算できます。

Q. 20gまでなら、毎日飲んでも大丈夫ですか?

大丈夫とは言い切れません。ガイドラインでは、高血圧などでは少量でもリスクが上がるとされています。20gは、許容量を示したものではありません。

Q. 少量の飲酒は、健康にいいと聞きましたが本当ですか?

2023年のメタ分析(JAMA Network Open)は、低〜中程度の飲酒に、全死亡リスクとの有意な関連を認めなかったと報告しています。健康のために飲むという使い方は、根拠として弱いと考えられます。

Q. 女性の場合は、どう考えればいいですか?

ガイドラインでは、リスクが高まる量が女性は男性の半分の20g以上とされています。個人差があるので、体調と量を記録して、無理のない範囲を考えてください。

関連して、飲酒量の自己チェックには、AUDITの点数の読み方が役に立ちます。量をコントロールできないと感じた夜に測る数字は、こちらの記事で整理されています。また、毎日飲む人と週に数回の人の違いを英国のデータで読んだ記事も、今回の「平均の数字だけでは足りない」という話とつながります。

次にお酒を飲む前に、1回だけ計算してみてください

今夜飲む予定があるなら、ラベルの容量と度数を掛け算して、純アルコール量を出してみてください。その数字が、「適度」という言葉を自分の言葉で読み直す、最初の一歩になります。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。飲酒量のコントロールが難しいと感じる方や、健診結果が気になる方は、医師や専門の相談窓口にご相談ください。