結論、お酒は少量でもレム睡眠を減らすという結果が出ています

結論から言うと、お酒は寝つきを早める一方で、レム睡眠を確実に減らすことが、複数の研究を統合した分析で示されています。しかも、酔うほど量を飲まなくても、この影響は起きるとされています。自分はApple WatchとUntappdでここ数年、飲んだ量と睡眠データを記録してきたのですが、データを見返してみると、この研究結果と自分のログはかなり近い形で一致していました。この記事では、アルコールと睡眠に関する研究を整理しながら、自分の記録データもあわせて紹介します。

要点: お酒は少量でも寝つきを早める一方でレム睡眠を減らすという結果が、複数の研究を統合した分析で示されています。

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レム睡眠とノンレム睡眠、まず基本を整理します

睡眠は90〜120分の周期で繰り返されています

人間の睡眠は、脳波の状態によって「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という質的に異なる2つの段階に分けられます。厚生労働省が運営するe-ヘルスネットによると、このノンレム睡眠とレム睡眠の周期はおよそ90〜120分で一晩に繰り返され、眠りが深まるにつれてノンレム睡眠の深い段階の出現は少なくなっていくとされています(e-ヘルスネット「ノンレム睡眠」)。

ノンレム睡眠とレム睡眠、それぞれの役割

同じ資料では、入眠直後の深いノンレム睡眠中に成長ホルモンの分泌が見られ、副交感神経が優位になることから、エネルギーを保存する機能と関連した睡眠だと考えられています(e-ヘルスネット「ノンレム睡眠」)。一方のレム睡眠は、体は休んでいても脳は活動している状態で、記憶の整理や定着に関わっているとされる段階です。今回取り上げる研究は、このレム睡眠がアルコールによってどう変化するかに焦点を当てたものです。

要点: 睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠が90〜120分周期で繰り返される構造になっており、それぞれ異なる役割を担っています。

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27件の研究を統合した分析が示した、量による分かれ目

少量でもレム睡眠は減ります

2024年に発表された系統的レビュー・メタアナリシスでは、健康な成人を対象にした27件の研究を統合し、アルコールがその後の睡眠に与える影響を分析しています。この分析によると、体重1kgあたり0.50g以下という比較的少量のアルコール(標準的な飲酒量にしておよそ2杯程度に相当)でも、レム睡眠が阻害されることが示されました。具体的には、レム睡眠が始まるまでの時間がおよそ18分延長し、レム睡眠の持続時間そのものがおよそ11.3分短縮したと報告されています(PubMed「The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults」)。

深いノンレム睡眠への影響は「多量のとき」だけ

一方で、入眠のしやすさや深いノンレム睡眠(徐波睡眠)への影響については、体重1kgあたり0.85g以上という、より多い量(標準的な飲酒量にしておよそ5杯程度に相当)を飲んだときにだけ顕著に現れたとされています。具体的には、深い睡眠までの潜時がおよそ2.8分短縮する効果が、この高用量でのみ観察されたと報告されています(PubMed「The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults」)。つまり「寝つきが良くなる」という体感は多く飲んだときに出やすいのに対して、「レム睡眠が減る」という影響は、それほど多く飲んでいなくても起きるという、量による分かれ目があるということです。

少量(体重1kgあたり0.50g以下)→ レム睡眠が減少(開始+18分、持続-11.3分)多量(体重1kgあたり0.85g以上)→ 深い睡眠までの時間も短縮(-2.8分)

図: 飲酒量とレム睡眠・深い睡眠への影響の分かれ目(27件の研究を統合した分析より)

要点: レム睡眠は少量の飲酒でも減少する一方、深いノンレム睡眠への影響は多量に飲んだときだけ現れるという、量による分かれ目があります。

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「寝つきが良くなる」の正体を、睡眠指針から確認します

寝酒はなぜ危険とされているのか

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」では、アルコールは入眠を一時的には促進するものの、中途覚醒が増えて睡眠が浅くなり、熟睡感が得られにくくなると明記されています(厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」)。同指針では、睡眠薬代わりに寝酒を飲む習慣は男性に多く見られ、慣れが生じて量が増えていきやすいという依存性のリスクも指摘されています。

数字で見ると、寝つきの良さは「錯覚」に近い部分もあります

先ほどのメタアナリシスの結果と組み合わせると、「お酒を飲むとよく眠れる」という感覚の正体が見えてきます。寝つきが良くなったように感じるのは事実である可能性が高い一方で、その裏でレム睡眠は少量でも削られており、深い睡眠に関しても多量でなければ本質的な改善にはつながらないということです。むしろ、睡眠指針が指摘する通り、中途覚醒が増えて熟睡感が得られにくくなる影響のほうが大きいと考えられます。

要点: 寝つきの良さという体感の裏で、レム睡眠は少量の飲酒でも削られており、熟睡感にはつながりにくいというのが実態です。

Apple WatchとUntappdで見た、自分の睡眠ログ

記録を始めたきっかけ

自分は数年前から、Apple Watchで睡眠データを取りながら、Untappdで飲んだ量と種類を記録するようにしています。もともとはただの記録趣味だったのですが、休肝日を作るようになってから、飲んだ日と飲まなかった日の睡眠データを見比べるようになりました。記録を始めて3年ほどになりますが、最初の1年は睡眠スコアと飲酒量をただ並べているだけで、そこから何かを読み取ろうとはしていませんでした。今回のメタアナリシスを読んで、あらためて自分のデータを見返してみようと思ったのが、この記事を書くきっかけです。

飲んだ日のログに見えたパターン

自分のログを見返すと、厚生労働省のガイドラインの計算式(厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」)で純アルコール量にしておよそ20〜28g程度、缶ビール1〜2本程度の少量の飲酒でも、Apple Watchが計測する「レム睡眠」の時間が、飲まなかった日に比べて短く記録される日が多いことに気づきました。逆に「深い睡眠」の時間については、少量の飲酒ではそこまで大きな差が出ておらず、量が多かった日にだけ、深い睡眠の記録に変化が見られる傾向がありました。これは、先ほど紹介したメタアナリシスの「体重1kgあたり0.50g以下でもレム睡眠は減るが、深い睡眠への影響は0.85g以上のときだけ」という結果と、驚くほど近い傾向でした(PubMed「The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults」)。

数値化して初めて気づいたこと

体感だけで振り返っていた頃は、「飲んだ日はぐっすり眠れた気がする」と感じることも多かったのですが、実際のログを数値で見返すと、翌朝の目覚めのスコアが低い日ほど、前夜に飲酒の記録があるというパターンが見えてきました。体感と実際のデータにズレがあることに気づけたのは、記録を続けてきたからこそだと思います。睡眠以外の体の変化についても、記録を通じて気づくことが増えました。体重や肌など他の変化については整える(wellness)カテゴリでも紹介されています。

  • 記録項目1: 前夜の飲酒量(Untappd)
  • 記録項目2: 睡眠段階ごとの時間(Apple Watch)
  • 記録項目3: 翌朝の目覚めのスコア・体感
  • 気づき: 少量の飲酒でもレム睡眠の時間が短くなる日が多かった
  • 気づき: 深い睡眠への影響は、量が多かった日に限られていた

要点: 自分のApple Watchとunappdの記録は、少量の飲酒でもレム睡眠が減り、深い睡眠は多量のときだけ影響を受けるという研究結果と近い傾向を示していました。

この結果を、どう生活に落とし込むか

休肝日を「睡眠の記録日」にする

自分がやっているのは、週4日の休肝日を、単に飲まない日にするだけでなく、睡眠データを比較するための基準日として使うことです。休肝日の翌朝のスコアと、飲んだ日の翌朝のスコアを並べて見ることで、自分にとって本当に負担が少ない飲み方が見えてきます。具体的には、月4回ほど、休肝日と飲酒日それぞれの平均睡眠スコアをスプレッドシートに書き出して比較しています。数字にすると、体感よりもはっきりと差が見えるので、飲み方を見直すきっかけになりやすいと感じています。

平日と週末で分けて記録している理由

自分は週4日の休肝日を平日に集中させ、飲むのは週末の2日だけに決めています。厚生労働省のガイドラインが示す生活習慣病リスクの基準(1日あたり男性40g以上)に照らすと、週末2日にまとめて飲む場合でも、1回あたりの量を基準内に収めるよう意識しています(厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」)。平日を記録の基準日にすることで、比較のノイズが減り、週末の飲酒がどれだけ睡眠に影響しているかが見えやすくなりました。

「大事な予定の前日」を優先して休肝にする

自分の場合、翌日に集中力が必要な予定がある前夜は、優先して休肝日に充てるようにしています。研究が示す通り、レム睡眠は記憶の整理に関わるとされる段階なので、大事な予定の前は、量にかかわらずお酒を避けるという判断をするようになりました。

ウェアラブル端末のデータはあくまで目安として使う

ここで一つ注意点があります。Apple Watchなどのウェアラブル端末が計測する睡眠段階は、実際の脳波測定(ポリソムノグラフィー)と完全に一致するわけではなく、あくまで推定値です。自分のログも、研究の数値と「近い傾向」を示しているとは言えますが、それが医学的に正確な一致だと主張するつもりはありません。あくまで生活の中で自分の傾向をつかむための道具として使うのが実態に近いと思います。

要点: 休肝日を睡眠データの比較日として使い、大事な予定の前は優先して休肝にすることで、研究結果を生活に落とし込むことができます。

例外と、断定できないこと

個人差が大きい部分です

メタアナリシスの対象になった27件の研究は、それぞれ対象者の年齢や体質、飲酒習慣が異なります。自分のログが研究結果と近い傾向を示したからといって、すべての人に同じことが起きるとは限りません。体質によってアルコールの分解速度は大きく異なりますし、もともとの睡眠の質にも個人差があります。

断酒すればすぐに睡眠が完璧になるわけではありません

レム睡眠が減るという影響は、あくまで飲酒した夜に限った話です。長期間の多量飲酒がある人の場合、断酒後もしばらくは睡眠が不安定になる期間があるとされていて、すぐに理想的な睡眠パターンに戻るとは限りません。この点については、断酒後の体験を扱った記事もあわせて参考にしてもらえればと思います。禁酒後の体感の変化については禁酒カテゴリで詳しく紹介されています。

寝酒として使うのは推奨されていません

厚生労働省の睡眠指針が明記している通り、アルコールを睡眠薬代わりに使う習慣は、量が増えていきやすいという依存性のリスクがあります(厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」)。この記事で紹介したレム睡眠への影響を踏まえても、寝つきを良くする目的でお酒を使うことはおすすめできません。休肝日の作り方や飲み方の工夫については節酒・減酒カテゴリでも紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。

要点: 研究結果には個人差があり、長期の多量飲酒がある場合はすぐに理想的な睡眠に戻るとは限らず、寝酒として使うことも推奨されていません。

よくある質問

少量のお酒なら睡眠への影響はありませんか

いいえ。今回紹介したメタアナリシスでは、体重1kgあたり0.50g以下という比較的少ない量でも、レム睡眠の減少が確認されています(PubMed「The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults」)。「少量だから睡眠に影響しない」とは言い切れません。

レム睡眠が減ると具体的にどんな影響がありますか

レム睡眠は記憶の整理や定着に関わっているとされる睡眠段階です。研究では日中のパフォーマンスへの具体的な影響までは断定されていませんが、翌朝の目覚めの体感に関わっている可能性はあると考えられます。

Apple Watchの睡眠データはどこまで信頼できますか

ウェアラブル端末の睡眠段階の推定は、医療用の脳波測定ほど正確ではないとされています。自分は絶対的な数値としてではなく、日々の傾向をつかむための目安として活用しています。

休肝日は週何日が目安ですか

厚生労働省のガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める量として「1日あたりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上」という基準が示されています(厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」)。自分は週4日の休肝日を目安にしていますが、これはあくまで自分の生活に合わせた設定です。

睡眠のために寝る前のお酒はやめたほうがいいですか

厚生労働省の睡眠指針では、寝酒ではなく就寝前にリラックスする方法を選ぶことが推奨されています(厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」)。今回紹介した研究結果を踏まえても、睡眠の質を優先するなら、寝る前のお酒は避けたほうが良いと考えられます。

自分自身、このメタアナリシスを読むまでは「少量なら睡眠への影響はほとんどない」と何となく思い込んでいました。データを数字で見返して初めて、その思い込みが違っていたことに気づけたのは、記録を続けてきたからこそだと思います。

もし睡眠アプリやウェアラブル端末を使っているなら、まずは飲んだ日と飲まなかった日のデータを並べて見ることから始めてみてください。数字で見比べると、体感だけでは気づけなかったパターンが見つかるかもしれません。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。