休肝日を1日取ると、何時間後に何が起きるのか

結論から申し上げます。休肝日1日の効果は、ひとつの出来事ではなく、時間差で起きる3つの別々の変化です。最初の数時間でその日のアルコールが分解され、24時間で週の合計摂取量が減り、数日から1週間かけて飲酒で増えていた代謝酵素が元の量に戻ります。この3つを一緒くたにして「1日では意味がない」と論じると、話が噛み合わなくなります。時間軸を分けて見れば、1日で起きることと起きないことがはっきりします。3つめの酵素の話は聞き慣れないかもしれませんが、e-ヘルスネットは、飲酒習慣で増える代謝酵素CYP2E1について、数日の休肝日で酵素量が減り、1週間も飲まないと元に戻ってしまうと記載しています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。1日で終わる話と、数日かけて進む話が混在しているわけです。

0h最後の一杯3-7hアルコール分解が完了体重×0.1g/時が目安24h週の合計量が20-40g減る3-7日代謝酵素が元の量へ1日の休肝日で完結するのは左の2つだけです。右端の変化は、連続または高頻度で飲まない日を置いて初めて到達します。出典: e-ヘルスネット「アルコールの吸収と分解」、厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」

図: 休肝日1日をめぐる3つの変化と、それぞれにかかる時間。

休肝日はそもそも医学用語ではありません

前提をひとつ揃えておきます。休肝日という言葉は、e-ヘルスネットの用語解説によれば、肝臓を休めるために週に1日以上飲酒しない日を設けることを推奨する目的で作られた造語です(e-ヘルスネット 休肝日)。病名でも検査項目でもなく、行動を促すために作られた言い方だということです。

ですから「休肝日1日に医学的効果はあるのか」という問いは、言葉の出自からするとやや無理のある聞き方になります。正しくは、1日飲まないことで何がどれだけ変わるのかを、測れるものごとに分けて見るのが筋です。

以前の私は、この分け方をしていませんでした

私は50代の男です。1年ほど前の健康診断でγ-GTPが基準値の2倍を超え、医師から減酒を指示されました。それまでは毎晩ビールと焼酎を飲んでいて、週に1日くらいは抜いていたつもりでした。「休肝日を取っているのに数値が下がらない」というのが、当時のいちばんの不満でした。

いま振り返ると、私が期待していたのは「1日で肝臓が元通りになること」でした。ところが実際に1日で終わるのは、その日のアルコールを分解し終えるところまでだったのです。

要点: 休肝日1日の効果は3つに分かれます。数時間で終わるもの、24時間で確定するもの、数日かかるものです。

関連記事: 休肝日を1日だけ取るのは意味がないのか。肝臓の回復と飲酒習慣、目的で分けると答えが出ます

時間割その1:最後の一杯から数時間でアルコールは分解されます

いちばん短い時間軸から見ていきます。飲んだアルコールが体から消えるまでの話です。

目安は1時間あたり体重×0.1gです

e-ヘルスネットは、一般的に1時間で分解できるアルコールの量は体重×0.1g程度とされていると記載しています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。体重60kgなら1時間あたり約6g、70kgなら約7gという計算になります。

飲んだ量のほうは、厚生労働省のガイドラインが計算式を示しています。純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8で求められ、ビール500ml(5%)なら500×0.05×0.8で20gです(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。

この2つを組み合わせると、体重60kgの人がビール500mlを1本飲んだ場合、分解し終えるまでおよそ3時間半という見当が立ちます。2本なら7時間前後です。夜9時に飲み終えれば、翌朝には残っていない計算になります。

ただしこの数字はかなり幅があります

同じページは、この目安について注意書きも添えています。酵素の遺伝子型に加えて飲酒習慣によっても代謝速度は大きく異なるため、酒好きの人の代謝速度は予測困難であること、血中アルコール濃度が高い時は速やかに、低くなるとゆっくり分解されることから、これより低いケースも多くあることが明記されています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。

さらに同ページによれば、5〜7%の日本人はアルコールの分解が遅いADH1Bを持っており、多量に飲酒した翌日もアルコールが長時間残ることがあるとされています。ですからこの計算は「自分の体で何時間かかるかの正解」ではなく、「おおよその桁を知るための道具」として使うのが適切です。

汗や水では速くなりません

同ページは、汗をたくさんかいたり水をたくさん飲んだりするとアルコールが速く抜けると勘違いしている人がいると指摘しています。呼気から0.7%、汗から0.1%、尿から0.3〜4%はわずかに排泄されるものの、代謝のほとんどは肝臓で行われると記載されています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。サウナで汗を流せば早く抜けるという話は、ここで否定されています。

要点: その日のアルコールは数時間で分解されます。目安は体重×0.1g/時ですが、個人差が大きく予測は困難です。

関連記事: 禁酒で増える時間、何時間になるか全部計算してみた

時間割その2:24時間で確定するのは週の合計量です

次の時間軸です。ここが休肝日の話でいちばん誤解されている部分だと、私は思っています。

ガイドラインが飲まない日をすすめる理由は2つです

厚生労働省のガイドラインは、健康に配慮した飲酒の仕方として「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避ける)」を挙げています。その理由として書かれているのは、毎日飲酒を続けた場合にアルコール依存症の発症につながる可能性があること、そして一週間の純アルコール摂取量を減らすために定期的に飲酒をしないようにする配慮が必要であることの2点です(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。

注目していただきたいのは、ここに「肝臓を休ませて回復させるため」とは書かれていないことです。公的な文書が挙げている根拠は、週の総量を減らすことと、毎日飲む習慣そのものを断ち切ることの2つなのです。

疾病リスクの基準も週単位で書かれています

同じガイドラインの表1は、日本人を対象とした研究に基づく疾病別の発症リスクと飲酒量を示していますが、その数値は週単位が主体です。大腸がんは男女とも150g/週、男性の肝がんは450g/週、女性の肝がんは150g/週という形で並んでいます(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。日あたりの数値は、週の数値を7で割った参考値として括弧つきで添えられているにすぎません。

つまり公的な基準そのものが、日ではなく週を単位にしているということです。であれば、休肝日1日の効果を測る物差しも週合計にするのが自然です。

数字にすると分かりやすくなります

毎晩ビール500mlを1本(20g)飲む人の週合計は140gです。ここに休肝日を1日入れると120g、2日入れると100gになります。毎晩2本(40g)飲む人なら、週280gが1日休んで240g、2日休んで200gです。

1日あたりで見れば20gや40gの違いですが、週で見れば14%前後が動きます。これは飲む日の量を1杯減らすのと、ほぼ同じ効き方をします。私はこの計算をしてから、休肝日を「特別な日」ではなく「週の割り算の一部」として扱うようになりました。

なお、ガイドラインは表1の数値について、これらよりも少ない量の飲酒を心がければ発症しないとまでは言えないが、当該疾患にかかる可能性を減らすことができると考えられる、と慎重に書いています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。基準を下回ればゼロになる、という読み方はできません。

要点: 公的資料が飲まない日をすすめる根拠は、週合計量の削減と毎日飲む習慣の回避です。肝臓の回復とは書かれていません。

関連記事: 日本人9万人の追跡が示す飲酒と大腸がんリスク。1日1合で1.4倍という数字の読み方

時間割その3:数日から1週間かけて代謝酵素が戻ります

3つめの時間軸です。ここが1日では届かない領域であり、同時に「休肝日を続ける意味」がいちばんはっきり出る部分でもあります。

飲み続けると分解酵素が増えます

e-ヘルスネットによれば、アルコール分解酵素群のMEOSでは、習慣的な飲酒を続けているとチトクロームP4502E1(CYP2E1)と呼ばれる酵素が増えてきます。習慣的に飲んでいるとお酒に強くなる主な理由は脳での耐性ですが、もうひとつの理由がこのCYP2E1が増えて代謝が速くなるためとされています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。

「昔より酔わなくなった」という実感は、体が丈夫になったのではなく、処理ラインが増設された状態だというわけです。

数日空けると酵素量が減り始めます

そして同じページに、こう書かれています。CYP2E1は数日の休肝日で酵素量が減り、1週間も飲まないともとに戻ってしまう、と(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。

これは休肝日の効果を時間軸で語るうえで、いちばん具体的な記述だと思います。1日では足りず、数日で動き始め、1週間で元に戻る。裏を返せば、週1日だけ飛び飛びに休む設計では、この変化までは届きにくいということでもあります。

私が週3日に増やした理由がここにあります

減酒を始めた当初、私は週1日の休肝日から始めました。半年ほど続けても、体感としての「酔いやすさ」はあまり戻りませんでした。連続で2日、3日と空けるようにしてから、同じ量で以前より酔うようになった感覚が出てきました。現在は週3日休んで、飲む日は2杯までという運用にしています。

体感は科学的な証拠にはなりませんが、上の記述とは矛盾しない変化でした。少なくとも、週1日を飛び飛びに置くのと、まとめて数日空けるのとでは、起きていることが違う可能性があると考えるようになりました。

要点: 飲酒習慣で増えた代謝酵素は、数日の休肝日で減り始め、1週間で元に戻るとされています。ここは1日では届きません。

1日では起きないこと、いつまで経っても起きないこと

期待してしまいがちだが、実際には1日では起きないことを整理しておきます。ここを知っておくと、無駄にがっかりせずに済みます。

脂肪肝の改善は短期間で起きますが、1日ではありません

e-ヘルスネットは、飲酒が原因の脂肪肝について、飲酒をやめれば短期間で改善するのが特徴だと記載しています(e-ヘルスネット アルコールと肝臓病)。ここでいう短期間とは、週や月の単位であって、24時間のことではありません。1日休んだ翌朝に脂肪肝が消えていると考えるのは、この記述の読み間違いです。

血液検査の数値も1日では動きません

同ページは、肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれ、よほどのことがない限り音を上げないこと、症状が出てからでは重篤化している可能性もあるため、常習的に飲んでいる人は症状がなくても定期的に血液検査を受けるべきことを述べています。検査項目としてAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPが挙げられています(e-ヘルスネット アルコールと肝臓病)。

私の経験でも、γ-GTPが目に見えて下がったのは、減酒を始めて数か月経ってからでした。1回の休肝日で採血しても、そこに差は出ません。

前の日の飲みすぎは取り返せません

これがいちばん大事かもしれません。休肝日は貯金や相殺の仕組みではありません。ガイドラインは、1回の飲酒機会で純アルコール60g以上の一時多量飲酒について、身体疾患の発症や急性アルコール中毒、外傷の危険性を高めるものであり避けるべきだと明記しています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。

金曜に大量に飲んで土曜に休む、という設計は、週合計は下がっても一時多量飲酒のリスクは残ったままです。以前の私はまさにこれをやっていました。

要点: 脂肪肝の改善も検査値の変化も週から月の単位です。飲みすぎた日を休肝日で打ち消すことはできません。

目的から逆算して、1日をどこに置くか

ここまでの3つの時間軸を踏まえて、実際の置き方を目的別に整理します。順に見て、自分に当てはまるものを選んでください。

  • 週合計を減らしたい場合は、置く曜日はどこでも構いません。飲まない日が1日増えれば週合計はその分だけ確実に減ります。続けやすい曜日を選ぶのが優先です。
  • 毎日飲む習慣を切りたい場合は、いちばん飲みたくなる曜日に置きます。金曜や土曜に置くのは難易度が高いですが、習慣を断つという目的にはここが効きます。
  • 代謝酵素の話まで届かせたい場合は、飛び飛びではなく連続させます。週1日を3回に分けるより、2日続けて空けるほうが、前節の記述には沿っています。
  • 一時多量飲酒を避けたい場合は、休肝日の翌日に上限を決めておきます。休んだ分を取り返そうとすると、そこで60gを超えやすくなります。
  • 検査値を動かしたい場合は、単発ではなく最低でも数か月の設計にします。次の健診までの週数を数えて、週あたりの目標合計量から逆算するのが現実的です。

記録は週単位のマス目がいちばん合っています

私は手帳に7マスの表を書いて、飲んだ日に純アルコール量のグラムだけを書き込んでいます。日曜の夜に合計するだけで、その週がどうだったかが分かります。アプリでもノートでも構いませんが、日ではなく週で締めるという点だけは共通にしたほうがよいと思います。公的な基準が週単位である以上、記録も週単位に揃えたほうが比較できるからです。

要点: 何のために休むのかで、置く曜日も連続させるかどうかも変わります。記録は週で締めます。

よくある質問

休肝日を1日取るだけでも意味はありますか

意味はあります。ただし1日で完結するのは、その日のアルコールを分解し終えることと、週の合計摂取量がその日の分だけ減ることの2つです。厚生労働省のガイドラインは飲まない日を設ける理由として、週の純アルコール摂取量を減らすことと、毎日飲み続けることによる依存症リスクを避けることを挙げています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。この2点に関しては、1日でも効いています。

飲んだアルコールが抜けるまで何時間かかりますか

e-ヘルスネットは、1時間で分解できるアルコール量の目安を体重×0.1g程度としています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。体重60kgの人がビール500ml(純アルコール20g)を飲んだ場合、単純計算で3時間半前後です。ただし同ページは、酵素の遺伝子型や飲酒習慣によって代謝速度は大きく異なり、予測は困難であるとも明記しています。運転の可否をこの計算で判断することはできません。

休肝日は週に何日必要ですか

日数を一律に定めた公的な基準は見当たりません。e-ヘルスネットの用語解説は、週に1日以上飲まない日を設けることを推奨する目的で作られた造語だと休肝日を説明しています(e-ヘルスネット 休肝日)。一方でガイドラインは日数ではなく週の純アルコール総量に基準を置いています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。日数より、週合計をいくつに収めたいかから逆算するほうが計算が合います。

連続して休むのと、飛び飛びに休むのは違いますか

週合計量という観点では同じです。ただし代謝酵素については、e-ヘルスネットがCYP2E1は数日の休肝日で酵素量が減り、1週間も飲まないと元に戻ると記載しています(e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解)。この記述に沿うなら、連続して空けたほうが届きやすい領域があることになります。

休肝日の翌日に多めに飲んでも相殺されますか

週の合計量という計算上は相殺されますが、リスクの性質が変わります。ガイドラインは1回の飲酒機会で純アルコール60g以上の一時多量飲酒を避けるべきものとして挙げています(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)。合計を守りながら1日に寄せるやり方は、この点で望ましくありません。

今夜がもし飲まない日なら、手帳の今週のマス目を眺めてみてください。1日の勝ち負けではなく、日曜までの7マスの合計で見ると、自分がどこにいるかがはっきりします。次の健診まであと何週あるかを数えるところから始めると、置く曜日も自然に決まってきますよ。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。検査値や飲酒量についての個別の判断は、かかりつけの医師にご相談ください。