お酒が強くなる方法はあるのか?結論は「分解力は鍛えられない」です

結論から申し上げます。お酒に強くなる方法として、アルコールを分解する力そのものを鍛える手段は、確認されていません。顔が赤くなる体質の方に多い、分解酵素ALDH2の働きの違いは、生まれつきの遺伝子で決まるとされています(Brooksら、PLoS Medicine 2009)。練習を重ねて「強くなった」と感じる場合、その多くは分解力の向上ではなく、脳が酔いに慣れてきた状態、つまり耐性です。耐性は、気づかないうちに飲む量が増える入り口にもなります。

私は50代で、健診のγ-GTPが基準値の2倍を超え、医師から減酒の指導を受けました。以前は「お酒に強いほうだ」と思っていましたが、その感覚こそが量を増やしていたのだと、記録をつけて初めてわかりました。この記事では、読者の方が抱きやすい疑問に順番に答えていきます。

要点: 強さは体質、強くなったという感覚は慣れ。鍛える方法を探すより、量を見直すほうが安全です。

関連記事: 飲み会の席で量を増やさない5つの立ち回り、γ-GTPが基準値の2倍だった50代の実践記録

Q1. 「お酒に強い・弱い」は、何で決まっているのでしょうか?

アルコールは肝臓で2段階に分解されます

厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」によれば、アルコールは主に小腸から吸収され、肝臓で分解されます。まずアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸となり、最終的に炭酸ガスと水になります(出典)。この途中にできるアセトアルデヒドは、顔の赤み、動悸、吐き気などの原因になる物質です。

ALDH2は、アセトアルデヒドを分解する酵素です

アセトアルデヒドを酢酸に分解する中心的な酵素がALDH2です。国際的な論文では、ALDH2の働きが弱い型を持つ方は、飲酒後にアセトアルデヒドがたまりやすく、顔の赤みや吐き気、動悸が出やすいと整理されています(Brooksら、PLoS Medicine 2009)。この酵素の働きは遺伝子の型で決まるため、食事や練習で書き換えることはできません。

日本人には、フラッシング反応が出る方が一定数います

ガイドラインには、お酒を飲むと顔が赤くなるなどのフラッシング反応が出る方が、日本では41%程度いると言われていると記載されています(出典)。つまり、日本人の10人のうち4人ほどは、体質的にお酒が得意でない可能性があります。「根性が足りない」ことが理由ではありません。

要点: 強い・弱いは、主にアセトアルデヒドを分解する酵素の型という体質で決まります。

関連記事: 禁酒で顔が変わるのはなぜ?日本人に変化が出やすい体質の理由を整理する

Q2. 飲み続けると「強くなった」と感じるのは、なぜでしょうか?

正体は分解力ではなく、脳の慣れ(耐性)です

飲み続けるうちに、以前ほど酔わなくなることがあります。これは耐性と呼ばれ、脳の神経が、アルコールの作用を打ち消す方向に適応した結果と説明されています。神経科学の総説では、短時間で現れる急性耐性と、数日から数週間の飲酒で進む慢性耐性が区別されており、慢性的な使用では受容体レベルの適応が起こるとされています(Mostら、Handbook of Clinical Neurology 2014)。

ここで重要なのは、酔いを感じにくくなっても、体内でアルコールが分解される速さが上がったとは限らない点です。酔った感じがしないのに、血中のアルコールや、肝臓への負担は残り続けます。

比べる点

体質(ALDH2など)

慣れ(耐性)

何が変わるか

分解の仕組みそのもの

脳が酔いを感じる度合い

鍛えて変わるか

変わらない

飲み続けると変わりうる

体への負担

量に応じて増える

感じにくいまま、量に応じて増える

注意点

顔が赤くなる方は特に慎重に

量が増えやすい

図: 「お酒に強い」と感じる2つの正体の違い(出典: 厚生労働省ガイドラインおよび上記論文をもとに筆者が整理)

耐性は、アルコール依存の特徴のひとつにも挙げられています

先ほどの総説では、耐性はアルコール依存の特徴のひとつとして、離脱症状、再発、渇望などと並べて挙げられています(同論文)。もちろん、酔いにくくなったからといって、すぐに依存というわけではありません。ただ、「前より飲めるようになった」は、喜ぶ話ではなく、立ち止まるきっかけにしてほしいと思います。

要点: 「強くなった」と感じたら、それは分解力ではなく慣れの可能性が高く、量が増えるサインでもあります。

関連記事: 飲んだ翌朝の体は何を語るか。ログ好きが見る5つのサインと読み方

Q3. 体質的に弱い人が、飲んで慣らしてもいいのでしょうか?

慣らして飲めるようになった方ほど、リスクが高い場合があります

ここは、特に強く申し上げたい点です。先ほどのBrooksらの論文では、ALDH2の働きが弱い型でも、顔の赤みが軽く、耐性ができて習慣的に多量に飲むようになる方がいることが指摘されています。そして、飲酒量に応じて食道がんなどのリスクが高まり、低活性型の方では、その上がり方がより急だと整理されています(Brooksら、PLoS Medicine 2009)。

ガイドラインにも、フラッシング反応が出ないまま長年飲み続けた方を含め、口の中や食道のがんのリスクが高くなる点に注意が必要だと書かれています(出典)。体質的にお酒が合わない方が、無理に鍛えて飲めるようにするという考え方は、おすすめできません。

「飲めるようになった」は、健康の指標ではありません

接待や職場の付き合いで、飲める体になりたいというご相談は少なくないでしょう。しかし、飲める量が増えたことは、体が強くなった証拠ではなく、酔いのブレーキが効きにくくなった状態かもしれません。飲み会の場では、量を競わない工夫のほうが、長い目で見て体を守ります。

要点: 体質的に弱い方が慣れるまで飲むのは、リスクを高める方向です。

Q4. では、お酒との付き合いで「強く」あるにはどうすればよいのでしょうか?

「お酒に強くなる」のをやめて、「お酒に振り回されない」を目標にする、というのが私の答えです。そのために、私が実際に続けている方法を挙げます。

方法1:量を純アルコール量で数えます

ガイドラインは、純アルコール量(g)を、摂取量(ml)×アルコール濃度(度数÷100)×0.8で計算する方法を示しています。たとえばビール500ml(5%)は20gです(出典)。杯数ではなく、グラムで数えると、強いお酒を薄めたつもりで量が増える失敗にも気づけます。計算の早見表は、純アルコール量の計算式の早見表をご覧ください。

方法2:お酒を飲まない日を決めます

ガイドラインでも、週に飲酒しない日を設けることが挙げられています(出典)。私の場合は、週に3日をお酒なしの日と決め、飲む日も1日2杯までと決めています。数日続けて飲まない日があると、耐性の感覚が変わるのを実感します。具体的な日の置き方は、γ-GTPと減酒の記録にも書いています。

方法3:飲み物を置き換える日を作ります

お酒を飲まない日の夜は、炭酸水、無糖のお茶、ノンアルコール飲料などに置き換えています。代わりの一杯があると、手持ち無沙汰になりにくく、決めた日を守りやすくなります。

要点: 強くなるのではなく、量を数え、飲まない日を決め、代わりの一杯を用意します。

Q5. 例外と注意:当てはまらない場合や、危ない考え方はありますか?

一度に大量に飲む「一時多量飲酒」は特に避けてください

ガイドラインは、1回の飲酒機会で純アルコール60g以上を、一時多量飲酒として避けるべきだとしています。外傷の危険も高まるためです(出典)。「強いから大丈夫」と考えて一度に多く飲むのは、最も避けたい飲み方です。

「お酒に強くなる食べ物・サプリ」には期待しすぎないでください

特定の食品やサプリメントで、アルコールの分解力を高めて強くなるという話は、広く見かけます。しかし、酵素の型が変わるわけではありません。「飲む前にこれを摂れば大丈夫」と考えて量が増えることのほうが、リスクです。

体調や飲酒量に不安がある場合は、医療機関に相談してください

毎日の飲酒量が増えてきた、飲まないと落ち着かない、健診の数値が気になるなどの場合は、医療機関や専門の窓口に相談してください。この記事は、個別の診断や治療の助言を行うものではありません。

要点: 強さを過信せず、一度に飲む量と、不安なときの相談先を覚えておきましょう。

Q6. 「強くなったかも」と感じたとき、自分でできるセルフチェックはありますか?

次の項目に3つ以上当てはまったら、量の見直しどきです

耐性が進んでいるかどうかを、医学的に自己判定することはできません。ただ、次のような変化は、飲む量が増えているサインになりやすいと私は感じています。当てはまる項目が多いときは、一度、飲んだ量を記録してみてください。

  • 以前と同じ量では、酔った感じがしなくなった。
  • 気づくと、飲む量や杯数が、以前より増えている。
  • お酒を飲まない日が、つらく感じるようになった。
  • 飲み会で「まだ飲める」と思って、最後まで量を調整しなかった。
  • 翌朝の疲れが残るのに、同じペースで飲んでいる。
  • 健診の数値が、少しずつ悪くなっている。

チェックの結果は、診断ではなく「記録を始める合図」です

この項目は、診断ではありません。あくまで、自分の飲み方を見直すためのきっかけです。当てはまる数が多くても、慌てる必要はありません。記録を1週間つけるだけで、状況はかなりはっきり見えてきます。気になる点が続く場合は、かかりつけ医や、地域の相談窓口に相談してください。

記録は「日付・種類・量・純アルコール量」の4点で十分です

記録は、細かくしすぎると続きません。日付、飲んだ種類、量、そして計算した純アルコール量の4点だけを、手帳でもアプリでもよいので残してください。私は手帳に書いています。1週間分を並べてみると、「週末にまとめて飲んでいた」「寝る前の1杯が毎日あった」といった、自分では気づかなかった癖が見えてきます。

要点: 自己チェックは診断ではなく、記録を始める合図です。

Q7. 職場や付き合いで、断りにくいときはどうすればよいですか?

「強くない」と先に伝えておくほうが、楽になります

お酒の席で断りにくい場面は、50代の私にも多くあります。そこで、最初の乾杯の前に、「今日は体質的に量は控えめにします」と一言伝えるようにしました。理由を細かく説明する必要はありません。先に伝えておくと、あとから断るより、ずっと言いやすくなります。

乾杯の一杯はお酒、その後は切り替える、という方法もあります

完全にお酒を断らなくても、最初の一杯だけお酒にして、その後はノンアルコール飲料や炭酸水に切り替える方法があります。周りに合わせつつ、量を抑えられる工夫です。体質的に顔が赤くなる方は、最初の一杯からノンアルコールにしても構いません。

「付き合い」は量で測るものではありません

お酒の席の価値は、飲んだ量では決まりません。会話や雰囲気を楽しむ姿勢のほうが、相手にも伝わります。量を競わない人がいるだけで、場の空気が穏やかになることも、私は何度も経験しました。

要点: 先に伝える、途中で切り替える、量で付き合いを測らない、の3点で楽になります。

私の記録:「強い」と思っていた頃と、今の違い

以前は、仲間内でも「お酒には強いほうだ」と言われていました。けれど、健診でγ-GTPが基準値の2倍を超え、医師から減酒を勧められてから、飲んだ量を記録し始めました。記録してみると、強いと思っていたのは、酔いを感じにくくなっていただけで、量はむしろ増えていたことがわかりました。

今は、週に3日はお酒を飲まず、飲む日も1日2杯までと決めて運用しています。杯数を決めてからは、飲んでいる最中の「もう一杯」が減りました。お酒に強いことを誇るより、翌朝の体が軽いほうが、ずっと気持ちがよいと感じています。

要点: 記録をつけると、強さではなく量が見えてきます。

よくある質問

鍛えれば、お酒に強い体質に変えられますか?

分解酵素ALDH2の働きは遺伝子の型で決まるとされており、鍛えて変えることはできません。強くなったと感じる場合は、脳の慣れ(耐性)の可能性が高いです。

顔が赤くなる人は、飲んでいれば赤くならなくなりますか?

顔の赤みが軽くなる方はいますが、それは耐性が進んだだけで、リスクが下がったことを意味しません。むしろ、量が増えやすくなる点に注意が必要です。

酔いにくくなったのは、肝臓が強くなったからですか?

酔いにくさは、主に脳の慣れで説明されます。肝臓の負担が減ったという意味ではありません。健診の数値が気になる場合は、医師に相談してください。

飲み会でつぶれないための工夫はありますか?

最初に杯数を決める、水やノンアルコール飲料を挟む、飲む量をグラムで把握する、といった方法が現実的です。量を競わない雰囲気づくりも役立ちます。

節酒を始めるなら、最初に何をすればよいですか?

まず、1週間の飲酒量を記録して、純アルコール量に直してみることをおすすめします。そのうえで、お酒を飲まない日を、週に1日か2日から決めてみてください。

今夜は、飲んだ量を一度だけメモしてみてください。強さではなく量を見る習慣が、体を守る第一歩になります。

※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。