結論:飲酒量が多い人ほど、減らしたときの血圧の下がり幅が大きい関係です
血圧とアルコールの関係を一言で言うと、飲む量が多いほど血圧は高くなり、多い人が減らすと下がる、という用量反応の関係です。2001年のメタ分析(無作為化比較試験15件、2,234人)では、飲酒量の減少で収縮期血圧が平均3.31mmHg、拡張期血圧が平均2.04mmHg下がったと報告されています(出典:PubMed 11711507)。
こんにちは、リョウです。自分は40代の男性で、10年以上、ほぼ毎日ビールを500ml缶で2本飲んでいました。健診でD判定が出たのをきっかけに断酒して、今は3年になります。研究データを引用するときは、まとめ記事ではなく原典に当たる、というのが自分の決めごとです。この記事も、血圧とアルコールについて、原典の要旨まで確認できたものだけを使って書きました。
先に、大事な注意を書きます。この記事は、降圧薬を飲んでいる人が服薬を変えるかどうかを判断するためのものではありません。血圧や薬のことは、必ず主治医に相談してください。
要点: 飲酒量が多い人ほど、減らしたときの血圧低下は大きく、少ない人では差が出にくいというのが、研究の大まかな結論です。
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ある朝の血圧計:数字を見て、自分の飲み方を数えた
健診の朝、腕に巻かれたカフ
健診の朝のことを、今でも覚えています。待合室の椅子に座って、腕にカフを巻かれ、ゆっくり圧が上がる。表示された数字を見た看護師さんが、少しだけ間を置いてから、「もう一度測りましょうか」と言ったんです。その「間」で、自分の飲み方の数字が頭に浮かびました。
あの頃の自分は、毎晩ビール500mlを2本。厚生労働省の式(量ml×度数÷100×0.8)で計算すると、500×0.05×0.8=20gが2本で、純アルコール量は40gです(出典:厚生労働省ガイドライン)。同じ資料は、生活習慣病のリスクを高める量を、1日あたりの純アルコール摂取量で男性40g以上と定義しています。自分は、毎日、ちょうどその線の上にいたと気づきました。
「血圧が高い=お酒のせい」とは限りません
ただ、血圧が高い理由は、飲酒だけではありません。塩分、体重、運動、遺伝など、いくつもの要因が重なります。この記事で扱うのは、「飲酒量を変えたとき、血圧がどう動くか」という、研究で調べられた一部分だけです。自分の血圧の原因を、この記事で決めつけることはできません。
要点: 血圧は飲酒以外の要因も大きいので、この記事は「飲酒量と血圧の関係」という一部分だけを扱います。
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根拠その1:2001年のメタ分析(飲酒量の減少で血圧は下がるのか)
15件の無作為化比較試験、2,234人
2001年にHypertension誌に載ったメタ分析は、1999年6月以前に発表された無作為化比較試験のうち、介入群と対照群の違いが飲酒量の減少だけであるものに絞って、15件、計2,234人の結果を統合しています(出典:PubMed 11711507)。
収縮期は3.31mmHg、拡張期は2.04mmHg
この分析で、飲酒量の減少による血圧の変化は、収縮期血圧が平均3.31mmHg低下(95%信頼区間2.52〜4.10mmHg)、拡張期血圧が平均2.04mmHg低下(同1.49〜2.58mmHg)と報告されています。さらに、飲酒の減少率が大きいほど血圧の低下幅も大きい用量反応の傾向があり、もともと血圧が高い人ほど効果が大きかったとされています。著者らは、多量飲酒者の高血圧の予防と治療で、飲酒量の削減を推奨すべきだと結論づけています(出典:PubMed 11711507)。
数字の読み方:平均の話であって、あなたの話ではありません
3.31mmHgという数字は、試験全体の平均です。個々の人では、もっと下がる人も、ほとんど変わらない人もいます。また、1999年までの研究を集めた分析なので、その後の研究は含まれていません。数字は「傾向を知る手がかり」として使ってください。
要点: 2001年のメタ分析は、飲酒量を減らすと収縮期で約3.3、拡張期で約2.0mmHg下がる平均的な傾向を示しました。
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根拠その2:2017年のメタ分析(どれくらい飲む人が、どれくらい減らすと下がるか)
36件の試験、2,865人を統合した結果
2017年にThe Lancet Public Healthに載ったシステマティックレビューとメタ分析は、36件の試験、成人2,865人(男性2,464人、女性401人)を対象にしています(出典:Lancet Public Health 2017, DOI)。
1日2杯以下では、有意な低下は見られませんでした
この分析では、1日2杯以下の飲酒を減らしても、血圧の有意な低下は見られませんでした。一方、1日2杯を超えるところから、減らした量が大きいほど血圧の低下も大きくなっています。最も効果が大きかったのは、1日6杯以上飲む人が飲酒量をおよそ半分に減らした場合で、収縮期血圧が5.50mmHg(95%信頼区間−6.70〜−4.30)、拡張期血圧が3.97mmHg(同−4.70〜−3.25)低下したと報告されています。著者らは、この関係を「しきい値のある用量反応」と表現しています(出典:Lancet Public Health 2017, DOI)。
なお、ここでいう「1杯」の大きさは研究ごとの定義によるため、日本の純アルコール量にそのまま換算できません(要確認)。
2つの分析を並べて見ます
項目 | 2001年の分析 | 2017年の分析 |
|---|---|---|
統合した試験 | 15件・2,234人 | 36件・2,865人 |
収縮期血圧の変化 | 平均−3.31mmHg | 多量飲酒者が半減で−5.50mmHg |
拡張期血圧の変化 | 平均−2.04mmHg | 多量飲酒者が半減で−3.97mmHg |
1日2杯以下の人 | 記載なし | 有意な低下なし |
図: 飲酒量の減少と血圧変化を調べた2つのメタ分析の比較(PubMed 11711507、Lancet Public Health 2017 の要旨にもとづく)
要点: 2017年の分析では、多量に飲む人が半分に減らしたとき最も下がり、1日2杯以下では有意な差が出ませんでした。
生活者の目線に落とす:自分の飲酒量を数えてみる
まず、純アルコール量に直します
研究の結果を自分に当てはめるには、まず自分の飲酒量を純アルコール量に直します。厚生労働省の式は「量ml×度数÷100×0.8」です。ビール500ml(5%)は20g、350ml(5%)は14gです(出典:厚生労働省ガイドライン)。
1週間の飲酒を、飲んだ日と量で書き出してみてください。自分の場合、書き出して初めて、「週に何gか」を意識しました。数えていない間は、「そんなに飲んでいない」と思っていたんです。
少量でも、血圧のリスクは0gから始まるとされています
厚生労働省のガイドラインは、疾病別の発症リスクの表で、高血圧について男女とも「0g<」、つまり少しでも飲酒をするとリスクが上がると考えられるとしています(出典:厚生労働省ガイドライン)。2017年の分析で「1日2杯以下では減らしても有意な低下が見られなかった」ことと、一見すると矛盾するように見えます。
この違いは、見ている問いが違うためだと自分は理解しています。ガイドラインは「飲酒をすること自体のリスク」を、メタ分析は「飲酒量を減らしたときの血圧の変化」を見ています。ただし、これは自分の解釈で、両者の関係を直接検証した結果ではありません。
飲酒中・飲酒後の血圧の変動にも注意が必要です
同じガイドラインには、飲酒により血圧の変動が強まることがあり、飲酒中・飲酒後の運動や入浴に注意するよう書かれています。平常時の血圧だけでなく、飲んだ直後の体の状態にも、気を配る必要があります。
要点: 自分の飲酒量を純アルコール量で数えることが、研究の数字を自分に引き寄せる最初の一歩です。
断酒3年の記録:自分の血圧は、どうだったか
数字は個人の記録であり、効果の証明ではありません
断酒を始めてからの自分の血圧の変化は、個人の経験としてお話しします。体重の変化、食事の変化、運動の変化など、ほかの要因も同時に動いているので、「断酒だけが原因」とは言えません。研究の数字と、自分の記録を、同じ重さで扱うことはしません。
変わったこと、変わらなかったこと
変わったのは、朝の測定が怖くなくなったことです。家庭用の血圧計で毎朝測る習慣がつき、数字を見て一喜一憂する日が減りました。一方、変わらなかったのは、塩分や体重など、別の要因を気にし続ける必要がある点です。お酒をやめても、血圧の管理が終わるわけではないと気づきました。
家で測る習慣は、すぐ始められます
家庭用の血圧計を使うと、飲んだ日と飲まなかった日の数字を比べられます。結果をメモして、健診や受診のときに主治医に見せると、話が早くなります。これは、薬の判断ではなく、相談の材料にするための記録です。
要点: 個人の血圧の変化は多くの要因が絡むので、記録は主治医への相談材料として使います。
今日からできる記録:主治医に見せるための4つの手順
研究の数字を、自分の記録に変えます
メタ分析の平均値を知るだけでは、自分の暮らしは変わりません。自分は、次の4つの手順で記録を取り、健診や受診のときに見せるようにしています。
- 飲んだ日と量を書き出します。種類、ml、度数をメモして、純アルコール量(g)に直します。
- 朝、同じ時刻に家庭用血圧計で測ります。座って少し休んでから、同じ腕で測ると、数字がぶれにくくなります。
- 飲んだ翌朝の数字に印を付けます。飲まなかった日の数字と並べて見られるようにします。
- 週に1回だけ見返します。毎日の数字に一喜一憂せず、1週間の傾向を見ます。
記録を取るときの注意点
血圧は、測る時刻、気温、睡眠、緊張などでも大きく変わります。1回の数字ではなく、続けた記録の傾向を見てください。また、数字が普段より大きく高い日や、頭痛や胸の痛みなどの症状がある日は、記録より先に医療機関への相談を優先します。
受診のときに伝えたいこと
主治医には、飲酒量を純アルコール量で伝えると話が早くなります。「毎日ビール500mlを2本」と伝えるより、「毎日約40g」と伝えるほうが、診察の場で比較しやすいと自分は感じました。記録は、薬や生活を判断するためではなく、相談を具体的にするための材料です。
家族に伝えるなら、数字から話します
家族に飲み方を指摘されると、反発したくなる人もいます。自分もそうでした。数字で見せると、感情のぶつかり合いが減ります。健診の結果と、書き出した週の純アルコール量を並べて話すところから始めてみてください。
要点: 飲酒量と血圧の記録を並べて持っていくと、主治医との相談が具体的になります。
例外と注意:この研究を読むときの限界
研究の対象は、多量飲酒者が中心です
2001年の分析は多量飲酒者の高血圧の予防と治療を想定した結論で、2017年の分析も、効果が最も大きかったのは1日6杯以上飲む人でした。飲酒量が少ない人に、同じ幅の低下を期待することはできません。
男性が中心の研究です
2017年の分析の対象は、男性2,464人、女性401人でした。女性の結果は、人数が少ないぶん、不確かさが大きくなります。同じガイドラインは、女性は一般的に男性より体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も少ないとしています(出典:厚生労働省ガイドライン)。
急にやめることのリスク
長期間、大量に飲んでいた人が、急に飲酒をやめると、体調に変化が出ることがあります。減らすときも、やめるときも、自己判断で急に変えるのではなく、かかりつけ医に相談してから進めてください。
要点: 研究は多量飲酒者と男性が中心なので、数字をそのまま自分に当てはめず、主治医に相談します。
よくある質問
お酒を減らすと、血圧は何mmHg下がりますか?
2001年のメタ分析では、平均で収縮期が3.31mmHg、拡張期が2.04mmHg下がると報告されています。2017年の分析では、1日6杯以上飲む人が半分に減らすと、収縮期で5.50mmHg、拡張期で3.97mmHg下がりました。これらは平均であり、個人差があります。
少ししか飲まない人でも、血圧に影響しますか?
厚生労働省のガイドラインは、高血圧のリスクが少量でも上がると考えられると説明しています。一方、2017年の分析では、1日2杯以下の人が減らしても、有意な血圧低下は見られませんでした。見ている問いが違うので、両方を知ったうえで判断してください。
降圧薬を飲んでいます。お酒を減らしたら、薬をやめてもいいですか?
この記事では判断できません。薬の調整は、必ず主治医に相談してください。自己判断で薬をやめたり、量を変えたりしないでください。
家庭の血圧計で、飲酒の影響は分かりますか?
飲んだ日と飲まなかった日の数字を比べる材料にはなります。ただし、測るタイミングや体調で数字は変わるので、診断のためではなく、主治医への相談の材料として使ってください。
禁酒しないと、血圧は下がりませんか?
そうとは限りません。2017年の分析では、飲酒量が多い人ほど、減らした量に応じて血圧の低下が大きくなっていました。やめるか減らすかは、体質や健康状態を踏まえて、主治医と相談して決めてください。
※本記事は一般情報であり医療的助言ではありません。血圧や服薬について不安のある方は、医師にご相談ください。
次の健診の前に、まず1週間の飲酒量を純アルコール量で書き出してみてください。数字にすると、見えてくるものがあります。

